夜明け前より瑠璃色な
〜Mother Earth、Daughterr Moon、Son 〜

〜]V〜夜明けの空へ〜


試合前日の夜。
明日のこの時間には、俺達の運命は決定している。
だからといって寂しさや悲しさは感じない。だって隣にフィーナがいるから。
「よくここまで傷を作ったわね」
「毎日あれだけしごかれてれば、このくらい当然さ」
「真琴のしごきは物凄かったみたいね」
あちこちの傷と痛みにひとつひとつ湿布を貼ってくれるフィーナ。
「・・・正直言って本当に死ぬかと思ったよ」
蹴られた回数の正確なところは忘れたが、少なくとも二百回は蹴られただろうか。
「ごめんなさい、私が教えることが出来なくて・・・」
「いいさ、フィーナが悪い訳じゃない」
どちらが言い出したのか、2人は夜の川原を散歩する。
今にして思えば、あっという間。最初のとまどいから今までを色々と思い出す。
こうなるのは運命だったんだろうな。とも。
「でも最後に真琴は一つだけ教えてくれた」
「何をですか?」
「真琴も、フィーナと同じ輝石を持つ人だってことを」
「ええっ!」
ありえないといった表情で驚愕するフィーナ。
「でもこのことは俺とフィーナだけの秘密にしたい、真琴もフィーナみたいに重いものを背負っているんだろうから」
フィーナの輝石は母から受け継がれた大切な形見。それならば真琴のそれも大切な何か。それだけは達哉にも分かる。
「その事を私に教えてくれたのは?」
「理由は二つさ、一つはフィーナが同じ輝石を持つ人だということ」
「もう一つは?」
「フィーナが一番、大切な人だから」

「これで良かったのだろうか」
大使館の庭。星空の下に一人ただずむカレン。
「明日、私は、人の幸せを壊してしまう。それも仕えるべき人の」
でもそれは月のためなのだ、大勢のためには一人を犠牲にする勇気が必要だとセフィリア様はおっしゃった。
「臣下としてはそれで正解だろう、だがお前、つまりカレン一個人としてはどうなんだ?」
星明りの下からゆっくり歩く人。その人の名は琉美那。
「お前も相変わらず融通が利かぬな」
「琉美那にしても地球のことを考えるのなら、なぜ2人の関係を承諾した?」
疑問。似たような立場にいる相手ならば考えることは同じと判断した上での質問だろう。
「お前は月を変えたくないという判断から反対した。
 私は地球を変えたいという判断から賛成した。それだけの違いだ」
回答。似たような立場にいたとしても、導く結論は違うものになる事実。
「月と地球の関係を広げることは・・・」
そこで琉美那がカレンの意見を遮る。
「セフィリア前女王は自分勝手で問題が多かったし、ライオネス国王は逆に生真面目で面白みがない。
 だが少なくとも2人の王は月のことを考えて行動している」
夜空を見上げて琉美那は言い、そして首を下向き気味にしてまた言う。
「だが、ワタシの上司を始めとして地球連邦の上どもは利権と私欲しか頭にない。仕える価値のある上司を持ったお前は幸せだ」
「だから変えるための賛成という訳か?」
「そういうことだ、それより、抜け。」
「何を?」
「刀を抜け。心が迷ってるぞ・・・最も、それはワタシもだが」
と、同時に琉美那も剣を取り出す。少し遅れてカレンも刀を抜く。
スレンダーなカレンが切れ味鋭い刀。対してグラマラスな琉美那は巨大な両手持ちの大剣。
「2人とも相変わらずね」
さやかだ。いつのまにか2人の中間点に立っている。
「さやかこそ、審判の位置にちゃんと立ってるではないか」
「月でのことを思い出すわ、2人って何かというとこうやって解決してたわね」
「バーでグダグダ飲むよりは健康的だからな」
「さやかと違って、私は無骨者だ。無骨な者には無骨な解決法しかない」
「やれやれ、しょうがない2人ねぇ・・・始め!
2人の勝負の行方はどうなるのか、それは星にしか判らない。

8月6日、夜。
星のまたたく夜空。フィーナと並んで大使館を目指す。
気負いはない。むしろすっきりしている。
「お運び頂き恐縮です」
そして、カレンさんが待っていた。
会場。
「時間無制限の一本勝負です」
そしてルール。要は竹刀を当てればいい、それだけだ。
フィーナとは反対側に別れ、準備をする。
試合前になっても気分はいい。やれることはやった充実感が達哉を支配している。
勝てないかも知れない。だけど俺は全力で運命に立ち向かう。
みんな、見ていてくれ。

「始めて下さい」

竹刀を構える。フィーナは上段に。
・・・彼女は本気で来る。それはとても嬉しいことだ。俺を「強敵」として認めてくれる。
今だけは月の皇女フィーナと同じ地位に立っている。それが達哉には嬉しい。
しかし彼が余韻に浸る時間は短かった。上段から踏み込んでフィーナが振り下ろす。
「避けられない!」
達哉の脳はそう思った、しかし達哉の体は脳より賢かった。
「あれ?」
かわしている。そしてフィーナの動きがなぜか遅く見える。
遠慮容赦なく蹴られたおかげで頭より体の方が相手の攻撃を見切っているのだ。
そして超高速の蹴りに慣れた目にはフィーナの竹刀でも遅く感じられる。
「体に叩き込むってこういう事なんだ・・・」
だからといって感心している場合ではない。相手に打ち込まなければ。
間合いを取り、次の攻撃に備える。
「『一発で決めなさい、あんた程度の腕前で連続攻撃なんて無理よ』」
そうだ、一発でいい、一発。それで未来は開ける。
『「まだまだ甘いわよ、非情になりなさい」』
非情。たとえ相手がフィーナでもそれは変わらない。弱点を突くんだ、勝つためにはそれしかない。
フィーナが再び間合いを取る。
「『私の動きは覚えてる?』」
覚えてるよ、真琴。勝つためだけと言えば卑怯だけど、俺自身の実力もよくわかっている。
だからたとえ卑怯と思うことでも勝つためには必要。
「え?」
達哉が竹刀を持ち変える。フィーナには勝ち方がいくらでもあるが、俺には一つしかない。
フィーナの方も多少困惑したが、さすがにすぐに真剣に戻る。
彼女の構えは昨日見た真琴の相手と全く同じ。とすれば、俺に一つしかない勝ち方ができる。
ゆっくりと踏み出す。しかし踏み込むな。相手の攻撃を見ろ。
「ええいっ!」
 来た! 動け! 俺の体! 
幸いにも脳が命ずるよりも僅かに早くかわした。未来が開けた。
フィーナの頭でも、腹でも、顔でもない。振り下ろした今、伸びきっている部分を叩け!
「うぉぉっ!」
「勝負ありました・・・!」
おそらく審判をしているカレンにも予想ができなかった結末。
フィーナが振り下ろした竹刀は達哉よりほんの僅か外れ、次の瞬間、フィーナの手から竹刀が落ちた。

「この試合、達哉さんの勝ちとします」
宣言しつつも、半分唖然としているカレン。
 勝った。
俺の勝ちだ!素人の俺が達人のフィーナに勝ったんだ!

「いたた・・・」
「フィーナ!」
慌てて敗者となったフィーナに駆け寄る。腕を痛そうに押さえている。
「ふふっ、私の負けですね。私に達哉の印がついてしまいました」
彼女の右ひじの上にはくっきりとアザ。もちろん達哉からのキツイ一撃の証拠。
「完全に実戦だけ、勝つことだけを考えた作戦。素人の達哉君がどうしてあんな戦い方を?」
カレンの方はというとしばらくは自問自答をしてはいたが、そこはさすがにカレン。
敬意を持って勝ち名乗りを挙げた者への挨拶へと動く。
「このカレン・クラヴィウス。達哉さんを軽く見すぎていました」
剣士であり、軍人である彼女らしく、深々と礼。
「フィーナ様、お怪我は?」
「大したことはないわ。敗者には常に勝者からの傷が付くものです」
潔く負けを認める。それが皇女としての責任の取り方。そして彼女が全く手を抜いていないことが人目で分かる表情。
その事に気づいたのだろう、少しの間を置いて、カレンはフィーナに向き直る。
「それでは、最後にフィーナ様に質問させて貰います。一国の姫というお立場と、達哉さん。
一方を選べるとしたら、どちらを選ばれますか?」
「敗者の私ではなく、勝者の達哉が答えてもよいですか?」
「構いません」
敗者には語る資格はない。おそらくそんな気持ちなのだろう。フィーナが下がり、代わりに達哉が前に出る。そして答える。
「それは、選べるものではありません」
これが、俺とフィーナの成果。悩んで、訊いて、動いて、戦って、得られた成果。
「どうしてですか?」
「どちらが欠けてもフィーナは成り立たない」
「それは、お2人が出した答えですか?」
「私たちの、答えよ」
それを聞いてカレンはしばらく考えた後
「よくぞ、やり遂げられましたね」
と、答えた。
「達哉さんをフィーナ様のお相手として、国王陛下に推挙させていただきます」
真剣さと決意。カレンはその二つを試し、そして達哉とフィーナはそれに打ち勝った。
「越えられないと誰もが思った「壁」を乗り越え、そして成果を得られた事。驚くべき成長です。達哉さん。そしてフィーナ様も」
カレン自身全く考えもしなかった結果なのだろう。しかし結果は出た。だからカレンの顔は清々しい。
「いや、俺は運が良かっただけですよ」
「ご謙遜なさらなくても良いですよ。達哉さんの戦い方は私に感銘をもたらすに充分でしたから
 これから私は月に戻り、報告と調整に入ります。結果か判明するまでの間、いましばらく朝霧家でお待ち頂きたく存じ上げます」
「何かと大変でしょうが、よろしく頼みました」
「かしこまりました、このカレン・クラヴィウス。一命に代えましても」
「そう簡単に一命に代えないで頂戴。貴女に死なれては困るわ」
「ありがたきお言葉」
そしてフィーナと達哉はカレンから離れ、手に手を取って大使館を後にする。

朝霧家への帰り道。
なんだか実感が湧かない。達人と言われたフィーナに勝った事。そしてカレンさんに認められた事。
「達哉、何ぼんやりしているの?」
「いや、俺って何か凄いことしちゃったなぁ、と思って」
「達哉は月の皇女に手傷を負わせたから、本来は死刑よ」
・・・エラいことをしてしまった。
「し、死刑?」
ギロチンにかけられる自分の姿が頭に浮かぶ。隣にはなぜか麻衣とさやかも。
「ふふっ、それが嫌なら、私との関係を認めなさい」
なんかカレンが混ざっているような口調。フィーナもずいぶん柔らかくなったものだ。
「まずは、みんなに報告しないとね」
「あ、ああ・・・」
といっても、どう報告すればいいのだろう?カッコよく勝利宣言?
何か違う。今回の勝利はフィーナを始めとしてみんなの後押しがあったからこそ。
俺ではなく、俺たちの勝利なんだ。

そう達哉が結論を出した頃、朝霧家と鷹見沢家が見えてきた。

「あれ?」
いつもの朝霧家。が、扉が開かない。玄関扉が閉まっている。
「達哉、これ」
鍵のかかった玄関の扉には「←」と書いた紙がデカデカと貼ってある。
「左は・・・鷹見沢家だよなぁ」
「だとしたら、トラットリアで待っているのでしょうか?」
菜月もいるし、みんなまとまって待っているのだろうか?
このまま夜中の玄関先に悩んでいても寒いだけで話は進まない。とにかくトラットリアへ。

からんからん
2人がトラットリアの入り口をくぐる。
「おめでとう〜!」
ええ?
「お帰りなさいませ!」
「お帰り、お兄ちゃん、フィーナさん」
「お姉ちゃんは心配だったのよ〜」
「全く、2人とも散々心配させてくれちゃって」
トラットリアにはいつもの面子。テーブルには各種料理。天井からはなにやらめでたそうなツリー。
そして壁には『達哉&フィーナ、ご婚約おめでとう!』という看板まで。
「こ、これは一体?」
「ど、どういうことですか?」
「見れば判るじゃない、お2人の門出を祝うパーティよ」
「そんなとこで呆けてないで、ささっ」
翠が2人を主賓側に押し出し、トラットリア制服の菜月が状況を理解できてない2人に料理を配る。
「決闘と聞いていても立ってもいられなくて!」
「それでみんな集まっていたという訳なのよ」
「さやちゃん繋がりでカレンさんに観にいっていいかと聞いたら『来てはなりません!』って凄い剣幕。
刀まで抜かれたらさすがの僕を持ってしても追い返されてしまったよ」
仁もまた厨房から顔わ出してきた。
「カレンさまはお厳しいですから」
「その後兄さんたら、カレンさんデートに誘おうとしたのよ?そのまま叩き斬られれば良かったのに」
「我が妹よ、それは紳士たるものの嗜みだ(きらーん)」
「そんな紳士は消えろぉ!」
仁は☆になった。月は出てないので残念ながらスフィアには行けない。
「でも、俺はフィーナに勝てるとは正直」
「私が直々に特訓してあげたんだから、負ける訳ないでしょ?」
もちろん真琴もいる。
「この性悪はともかく、勝てるようにみんな応援してたんだからね」
そうなんだ、みんなが応援してくれてたんだ。
「私達には達哉くんが負けるなんて考えられなかったのよ」
「私の自慢のお兄ちゃんだし」
「僕の自慢の弟子でもあるな」
仁。どうやって戻ってきたのかは聞かないで欲しい。
「ありがとう・・・」
達哉にはそれ以上の言葉が出ない。みんなの力が俺とフィーナを結びつけてくれたんだ。
「さて、料理も行き渡ったところで主賓殿の挨拶だな」
マスター左門も料理の手を休めて歓迎会を盛り上げる。
「よっ、お2人さん!」
真琴がフィーナを、麻衣が達哉を押して中央に立たせる。

「今日は私と達哉のためにこんな会を開いてもらって、みんなありがとうね」
前にやった時よりは幾分柔らかくなったフィーナの挨拶
そして主役たる達哉の挨拶。
「紹介するよ。
俺の婚約者。フィーナ・ファム・アーシュライトだ」
一瞬の静寂、そして拍手と歓声。

「真琴、ありがとう」
感謝しなければならないのは彼女。フィーナと同じ輝石を持ち、そして俺に戦いとは何たるかを身を持って示した人。
「私からも、お礼を言わせてもらいます」
「をほほ、2人とも跪いて私を崇める気になった?」
「あんたは引っ込んでなさいっ!」
「ここは2人きりにする時間ですっ!」
菜月と翠が真琴の左右を固めてずるずると引っ張っていく。
「はい、真琴ちゃんの出番はおしまい」
「お兄ちゃん達に変な知識を吹き込むのは禁止!」
「え、えっと・・・2人だけにさせておいて下さい」
さやかと麻衣とミアも加わって、5人がかりで真琴を退場させる
「ふふっ、5人がかりとは大層ですね」
「真琴本人も引っ込む気だったんじゃないかなぁ」
彼女の実力なら、5人程度軽くふっ飛ばせる事を忘れてはならない・・・
「僕も料理の片付けがあるから、頑張れよ」
仁もウインクしながら左門のいる厨房に戻っていく。そして残ったのは
「フィーナ」
「達哉」
この2人だけ。さてどうする。
「家に・・・戻りましょうか?」
戻ってもいい、しかしなんか他の面子がちょっかいを出しそうな気もしないではない。
「来てくれないか?」

「ここは」
「一度、本当の意味で案内したかったんだ」
今、2人が立つのは物見の丘公園。
「俺は、昔フィーナをここに案内しようとして」
連れて行くことができなかった。その時何もできなかった。
「でも今は、ですね。達哉」
そして今、こうやってフィーナをここまで連れて行くことが出来るようになった。
「この景色を彼女に見せてあげたい、俺はずっとそう思ってたんだ」
ゆっくりと水平線が明るくなる。
「綺麗ね」
水平線から出てくる光が、物見の塔を照らし、反射する。
「月ではこんな光景は見ることができないわ」
月には本物の海はない。こんな日の出もない。蒼い空もない。
「俺たちの夜明けさ」
「ええ、夜明けね」
夏のあの出会いから幾年月。フィーナと再び会ってから三ヶ月。
ようやくここまでこれたんだ。でもこれからなんだ。
ふたりの想いが一致し、夜明けの太陽を背景にいつしか2人はキスをする。長いキスを。


三日後。
達哉たちは月に向かうカレンの見送りにやってきていた。
もちろん目的は国王への進言と報告。
「カレン、よろしく頼むわね」
「お願いします」
同時に頭を下げるフィーナと達哉。2人の将来どころか月の未来までカレンに託されている。そう考えても過言ではない。
「かしこまりました」
「行くのか」
「琉美那こそ、地球の方をどうにかするのでは?」
「お前と違って列車で2時間だ。送られる程のものではない」
さやかの隣には琉美那もいる
「そう、これを持ってきたの」
フィーナがバックから何かのケースを取り出す。
スフィアの紋章を刻むその箱の中から現れたのは、瑠璃色の輝石をはめ込んだブローチ
いつもフィーナのドレスについている輝石、これはその本物だ。
カレンがその存在感に息を呑み
達哉が一瞬紫色の同じ形の輝石を頭の中で比較する。
「母様の形見よ、きっと母様もカレンを見守ってくれています」
「・・・・・!」
「これは?」
一瞬、輝石が輝き、どこかを目掛けて光の線が飛ぶ。
しかしそれは一瞬でしかなく、すぐもとの輝石へと戻ってしまった。
「一体これは?」
「多分、月にいる母様が呼びかけたのでしょう」
なるほど、とそこにいる全員が思う。考えてみると変なのだが。
「そういうことよ、カレン。朗報を期待するわ」
貴女にはセフィリアがついている、そういう意味。
「はい、必ずや縁談をまとめて参ります」
「気をつけてね、カレン」
「お前なら必ず出来ると信じているぞ」
さやか、そして琉美那。2人の言葉にさらに表情を引き締めるカレン。
「では最後に、私から陛下のご命令をフィーナ様にお伝えします」
「何でしょうか?」
「フィーナ様の留学を、今年度一杯まで延長せよとの陛下のご命令が届いております、どうなさいますか?」
「ふふっ、その命令、従わせてもらうわ」
フィーナとカレンが微笑む。こんな命令ならいくらでも従える。
「それでは、行って参ります」
気迫と活力に満ちた後ろ姿を見送る。
「ワタシも行かねばな」
続けて琉美那も空港を後にする。彼女もまたカレンと同様難しい任務が待っているのだろう。
「では、私たちも参りましょう」
「行こうか」
2人手に手をとって歩いていく。
「お姉ちゃんを置いてかないでぇ〜」
さやかを忘れていたが、そのあたりは気にしない。

物見の丘公園。
一人の少女が絵を描いていた
その少女にどこからか光の線が飛び、一瞬胸元を輝かせる。
「ふうん、やっぱりフィーナちゃんのいつものアレは偽物だったのね」
ふと、絵を描く手を止め、手を胸元に差し入れる。
「月の瑠璃と紅玉に対抗できるのは、地球では今はこの私のこれだけ。浪漫ってのは自分で背負うものじゃないわねぇ・・・」
胸元から紫の輝石をはめ込んだブローチを取り出し、しげしげと眺め、そしてまた胸元に戻す。
「なんか、今日は気分が乗らないわ、やめ」
そして画材をしまうと、彼女は公園を立ち去って行く。
・・・空はどこまでも蒼かった。




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