4月30日(火) 走行初日(ナホトカ−ウスリスク,239.30km
 朝起きて、外の様子を確認すると、昨夜の雨はやんでおり、太陽が顔をのぞかせていた。路面はどうなっているかわからないが、とりあえず楽しく走れそうだ。
 
 AM9:00(ロシア沿海州時間,JST+2H)、船はナホトカ港へ入港する。見慣れた客船ターミナルが見えてくる。ちょっと様子が違うのは、客船ターミナルの裏山に、緑が目立つこと。ここロシアも今年は春が早いようだ。
 いつもの年なら、いったん船を降り、船内のチェックが終わった後、再び船に戻って走行できる体勢に着替えて再度下船と言う流れであるが、今回はチャーター船ではなく、船はこのままいったんウラジオストックへ向かうと言う事なので、最初から走行体勢を整えての入国審査&下船となる。
 
 いつものように客船ターミナル前でセレモニーが行われる。それが終わればしばし待ち時間であるが、この間に換金所へ向かう。しかし、ルーブルがほとんど用意されていなかったようで、換金ができなかった。結局換金については、走行3日目の夕刻、スタッフが希望者および金額をとりまとめ、翌日の夕刻にそれぞれ手渡すと言う形に今年はなった。
 ちなみに今年のレートは、2000円=400ルーブルだったので、「5円/ルーブル」であった。
 
 さて、場所を船員会館前に移して、再度歓迎セレモニーとなるが、今年はここでのセレモニーは非常に簡素化されており、短いものであった。
 なので、スタート時間もいつもより非常に早く、PM1:00から順次スタートとなる。スタート時間が早いには訳もあり、本日はウスリスクまでの240kmを走りきるコース設定になっている。初日にしては非常に長い距離である。
 
 スタートしてからしばらくは舗装路の走行。1年ぶりの右側走行の肩慣らしをする。
 20kmほどして、コースはダートに変わる。ダート走行は8ヶ月ぶりのことで、しばらく違和感はあったが、ロシアンラリーの‘勘’は取り戻しつつあった。
 しばらくダートが続いた後、コースは川渡りに変わっていく。そしてガレ場,沢登りへと難易度は急に高くなっていく。エントラント同士、助け,助けられしながら進む。初日からきついコースであり、個人的には「楽しい」と言う領域をこえて打ちのめされた。
 へとへとになりながら、やっとCP1到着。時刻は既にPM6:30。メディカル兼オフィシャルの吉田先生に「遅いッ!」と一喝される。だってしんどかったんだも〜ん。
 
 まだまだゴールまでは170kmほども残っているのに、時刻は既にPM6:30。遅れを取り戻すべく休憩もそこそこに走り出す。
 すると、村はずれの川で、#18向井さんが水没した現場に遭遇する。水を吸ったバイクの復旧作業をしているのは、ロシア人エントラントのコスチャ(通称アミーゴ)とダーニャ(14歳の少年)。そこに日本人エントラントも加わっての復旧作業となる。
 こういったところも、この「ロシアンラリー」の良いところなのである。
 
 もうすぐCP2という手前のお山地帯が、ナビゲーションを狂わせる迷路セクションになっていた。私はコマ図をトレースしながら進んでいたつもりだが、ふと見ると、別ルートに2輪/4輪エントラントのヘッドライトが多数見えていた。「またミスコースしたか?」と思ったが、追いついてきたロシア人エントラントが、この方向だと言って走り去って行ってしまった。
 ロシア人エントラントについて走っていくと、どこに連れて行かれるかわからないと言うのがロシアンラリーの通例であるが、たまには信じてみるかと追走する。結果、オンコースであった事がわかる。珍しく、ナビゲーションに冴えがあった。
 
 CP2到着は既にPM10:00。日も没してしまっていた。
 この先は、マディ地帯のコースが用意されていたが、この時間からではキャンセルかなと思ったが、意外にも行って良いとの指示。ナイト走行の準備を整えて、#19松本さん,#22松村さん,#34前田さんと連れだって、夜のマディ地帯へと向かう。ナイト走行には、Bajaのでかいライトが頼もしい。
 マディ地帯の入り口でいったん止まり、空を見上げると満点の星々であった。東京では見ることができない夜景にしばし感動する。でも遠くに獣の鳴き声も聞こえる。行って大丈夫かな???とも思う。
 マディ地帯を突き進んでいくと、4輪エントラントの#102高橋さんに追いつく。スタックしているのかなと思いきや、その前方で、先ほど水没したバイクの復旧作業をしていたロシア人エントラント,ダーニャが疲労困憊のため動けなくなっており、#1清水さん,#17栗原さんが介抱していた。このまま置いて行くわけにも行かず、さりとてこの先自走させるのも無理な様子なので、バイクはスイープに運んでもらい、ダーニャは4輪エントラントに乗せて行ってもらうこととする。
 夜間という事もあり、合計6台となったバイク集団は、ルートを慎重に探しつつ走行する。昼間の好天のためか、探せば楽に走れそうなルートはあり、そこをトレースしながら進む。でもたまにルートを外して、泥にスタックして身動きできなくなる。これもロシアンラリーのお楽しみである。
 集団走行の中、ハプニングも起こる。#1清水さんのスリップダウンに押されて、泥の中に押し倒されてしまう。両腕がずっぽり泥の中に埋まり、しばし動けなくなる。バイクでスタックしたことは何度もあるが、人間単体でスタックしたことは始めてである。
 山間のコースの場合、雪解けの影響などで、コマ図と実際の地形が変わっていることがよくある。この日も川が交差する部分でコマ図と地形が異なっていた。まっすぐだろうなという直感はあったが、それを狂わす記載がコマ図にあった。「CAP360」。即ち真北に進めの指示である。でもその方向は行き止まり。さてどの方向が正解かと議論していると、オフィシャルが追いついてくる。どれがオンコースなのかと聞いてみると、やはりまっすぐで良いとの事。ならばコマ図にある「CAP360」はどうなのかと聞いたところ、「ウ〜ん、CAP270ぐらいだったかな」という返事。直感を信じるのも大事だなと思う。
 
 マディ地帯を抜けて、CP3に到着したのはAM1:30過ぎ。まだゴールまでは80kmある。ここからはロシア警察の指示で、警察先導のリエゾンになる。時間が時間ということもあり、半分居眠り運転で追走する。
 ゴールであるウスリスクに到着したのはAM3:30。ホテルに入ってバタンキュー状態で寝入る。長くロシアンラリーに参加しているが、こんなに遅くなったのは始めてのことであった。