1 その日、朝から先生は変だった。 スピードがいつもの半分くらいしか出てなくて。前に進めてないし、まっすぐ歩けてない。 |
「先生、おはようございます」 背後からそっと、声をかけてみる。 何秒か遅れて義務的な、ああおはよう。が返ってきた。 いくらクラスの中で認知されていても。 先生と生徒として、きちんと線を引っぱって。 |
昇降口が近付くにつれて、生徒の数がじょじょに増え始める。 ここでも、眠いとか、だるいとか、そういう類の症状はあふれていて。 先生だけが特別変ってわけじゃないのかもしれない。ひいき目、あるかも。 あと、自分も季節の変わり目の流行に乗っかって。 そしたらいきなり、身体だけ移動して、鞄をその場に置いてけぼりにする、なんて器用なことをした。 「おはよ、町田、……ごめん」 何事だ?と、ぞくぞくと登校する生徒から好奇心の目が注がれる。 ナオはため息をついた。 「……大丈夫です」 ぶるぶる、とナオの、鞄を握り締めた右手に震えが来た。 (今日一日、半径10メートル以内立ち入り禁止!) ……びっくりマーク付きって、よっぽどのことだった。 |
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