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楽譜(参考運指つき)1/2

楽譜(音の高さと長さの情報以外はほとんど削除した状態)

楽譜(参考運指つき)2/2


平均律クラヴィア曲集第2巻9番 ホ長調 BWV878〜フーガ

このフーガの主題は、バッハ以前の時代のいろんな巨匠に使いまわされてきた、と、これもどこかで読んだ話だったか聞いた話だったか。
そんなにいろんな人が使ってみたくなるほど魅力的な音型なのか、首かしげたくなるほど地味。
まあ地味だからいろんな方法で料理できるってことか。
バッハ以前の時代の巨匠ってのが誰で、どんな曲なのか、全然知りませんけど、バッハより後の時代だったら物凄いのがありますね。
モーツァルトの最後の交響曲、中でもみんなが大好きなフィナーレ部分、あれの最初の主題がこれでした。
なるほどたしかにいろんな料理の仕方があるなと。
そういえばモーツァルトはバッハの鍵盤フーガのいくつかを弦楽四重奏用に編曲してます。
編曲っていっても何か気のきいた細工をしたわけじゃなく、鍵盤用の2段譜を4段に書き直しただけ。ホントにただそれだけ。
何でそんなことをしたのか理由は不明ですが(たぶん研究材料ってことか)、その中にはこのホ長調フーガも入っていました。
モーツァルトにとって「何だか気になるフーガ」の一つであったことは間違いなさそうです。
あの豪華絢爛をきわめた交響曲のフィナーレとこのフーガの関連はというと、何ともいえない、何とでもいえる、要するに良く分かりません。

心地いい曲ですよ。
バッハのフーガつかまえて心地いい曲ですなんて誉めたことになるのかどうか。
もちろんバッハらしくあちこち仕掛け満載でひねくれまくりですけど、それらすべてが心地いい曲ですよの感想を引っ張り出す効果として働いている。
どんな効果かというと、逆効果というか無効果というか。
何しろ山場で出てくるのが、ただでさえ地味な主題の、縮小形。いきなり縮こまっちゃう。
盛り上げてたまるかボケという感じ。
控えめを装ったはぐらかしの連続。
何も事件なんて起こってませんという感じで穏やかーにひたすら穏やかーに進んでいきます。
この曲を聴いて眠くならないという人がいたらお目にかかりたいぐらい。
指の難所もあんまりないからヘタをすると弾いてたって眠くなる。
(ホントはいろんな事件が起こってます。ひまな人は、いや、実際よっぽどひまでなきゃそんなことやる気になれないでしょうけど、これを4段に書き直してみることをおすすめします。いろいろ面白ワザが使われてることが分かってきます)

この曲はついつい1巻8番変ホ短調のフーガと比べたくなっちゃうんですが。
こういうこと書くとやっぱり怒られるのかな。
あっちとは正反対だと思います。
言い方悪いけど、あれはやっぱりワザとらしい。
あれはあれで大好きだけど、こっちも同じぐらい好きです。