表紙に戻る
楽譜(参考運指つき)1/5
楽譜(参考運指つき)2/5
楽譜(参考運指つき)3/5
楽譜(参考運指つき)4/5
楽譜(参考運指つき)5/5


平均律クラヴィア曲集第2巻22番 変ロ短調 BWV891〜フーガ

ベートーヴェンのソナタ(ソナタ形式。ピアノやヴァイオリンのほか交響曲協奏曲ひっくるめてソナタ楽章全般)では、野暮ったいとかバカっぽいとか(プとかいう感じの主題(動機?)から、物凄い力作が生まれたりしてますよね。
そもそもソナタとフーガを比べるなんて、わたしはアホですと告白してるようなもんですが、バッハではどうなんだろうと考えてしまったのは、この変ロ短調のフーガがまさに(プな主題をもっているから。
フーガってのは主題が手を変え品を変えいろんな形で登場してくるのをおもしろがる音楽なんで、登場したことにも気づかれないようじゃ話にならない。
気づいてもらいたいなら、手っ取り早い方法は、主題を長くすること、音型にきわだった特徴をもたせること。
これでついつい(プな主題が出来上がる。
そのきわだった特徴の音型と長さのおかげで、いろんなフーガの面白ワザを繰り出しにくくなる。
結果、そのフーガは中身の薄いにものなることが多い。
と思うんですが、そうでもないんですかね。
このフーガは2巻中でも1、2をあらそう大傑作らしいです。
曲中で使われている面白ワザは、密接進行と反行形およびその組み合わせだけですが、この音型、この長さの主題でそんなワザが駆使できたというのは驚異かもしれません。

転調はちまちま細かいけど、各声部のやってることはそんなに複雑じゃないです。というか言葉で書くだけなら単純です。

アルト、ソプラノ、バス、テノールの順で型どおりの主題提示。

先行テノール、追走アルトで密接進行。次に先行ソプラノ、追走バスで密接進行(この密接進行部分は小カノンと呼んでもいいかも)。

主題の反行形提示。テノール、アルト、ソプラノ、バスの順。

もちろん反行形でも密接進行あり。まずは先行テノール、追走ソプラノ。次に先行アルト、追走バス。

基本形と反行形の密接進行。先行ソプラノで反行形、追走テノールで基本形。先行バスで基本形、追走アルトで反行形。

仕上げに4声全部で密接進行に参加。先行ソプラノとアルトで基本形、追走テノールとバスで反行形。

和声分析は、すごくヒマな人ならやっといてもいいのかな、ぐらいの感じ。
変ロ短調のままじゃやりにくいと思うので、イ短調あたりに書き直して。
手持ちの楽譜を見るとぐちゃぐちゃ書き込みがあって変ロ短調のままやった形跡あり(何年前の話なんだか)。
でも反行形密接進行あたりで投げ出してる形跡あり。

演奏上についてはどうかというと、手の小ささが問題になる個所はないです(最高8度)
でも苦しい動きのところはけっこうある。
とくに2つの反行形密接進行。
基本形と反行形の密接進行の最初のほうも苦しい(2つめは楽)
とどめは4声全部の密接進行。右手左手ともに連続3度。

曲集のため24調の曲をそろえるにあたって、これは新たにつくったものなんでしょうね。
1巻の変ロ短調もそうだけど、なんか気合入りすぎてる感じがします。
新しい調律法になって、「ついに使えるようになった調」ってことではりきっちゃったのか。
だとすると、1巻の変ホ短調を新作じゃなく旧作の移調ですませたのはどうしたわけかと、疑問が湧いてきたり。
単純に、変ホ短調に移調しやすい力作は手元にあったけど変ロ短調に移調しやすい力作はなかった、ない以上はつくるしかない、つくる以上は気合入れて、ってことなんでしょうか。
(変ホ短調、変ロ短調はそれまで使えなかった調と勝手に思い込んでますが、本当のところはどうか知りません)