│BACKHOME│


 
 

      
                舟木一夫後援会会報
           昭和46年10月発行「浮船」ニュースより

                 「初恋」に燃える秋         

 

芸術の秋、読書の秋、スポーツの秋、そして食欲の秋、天高く馬肥ゆる秋、秋は人それぞれにいろいろ思いがあると思う。今、僕にとって秋は新曲に賭ける秋”初恋”にかける秋ということになる。
『初恋』作詞は「若菜集」より島崎藤村先生/作曲は新進気鋭の作曲家、若松甲先生で9月25日に出したばかりで、今はこの曲のヒットに全てをかけて全力投球というところだ。
 とにかくいい歌で、いい歌としか言いようが無いくらい、いい歌だと思う。よく、どうしてこの歌を見つけたの?どうしてこの歌を唄おうと思ったの?と聞かれるが、「いい歌だから」「好きだから」としか答えようが無いくらいに素敵な歌だと思っている。いわゆる日本人の心の奥底に潜んでいる情緒を新たに蘇らせてくれるメロディーだと思う。そして、何ともいえない素朴な人の美がいっぱい潜んでいて、いまにも、溢れんばかりの情感に満ちているみたいなのだ。

  

                          まだあげ初めし 前髪の
                          林檎のもとに 見えしとき
                          前にさしたる 花櫛の
                          花ある君と 思いけり

 この詩はあまりにも美しく切なく、ほのぼのとした情感に溢れ、心が温まる思いがする詩で中でも3番は最高に好きだ。

  

                          わがこころなき ためいきの
                          その髪の毛に かかるとき
                          たのしき恋の 盃を
                          君がなさけに 酌みしかな

  

口ずさむだけで瞼がジーンときて思わず涙がこみ上げてきてしまう。また美しいメロディーと詩が見事に溶け合っている。そしてこの歌を唄うたびに、ボク自身の初恋の思い出が脳裏に映る。田舎で心の奥に刻み込んだ初恋の想い出は、かなり純心であったと思っている。
 追憶を求めて追憶に浸って涙する…女々しすぎるでしょうか?人間誰しも幼い日の美しくも淡い初恋の想い出はあると思う。だから僕自身は追憶に涙することを、女々しいこととは決して思いたくない。それはむしろ素晴らしいことじゃないんだろうか。
 今度、この「初恋」を発売することにあたって、”初恋というものは美しいものだ”ということを再認識しているところだ。まあともあれ、この「初恋」はいい歌だ。それだけに是非ヒットさせなくては…。「初恋」に燃える秋である。


 

BACK HOME