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植物珪酸体は、植物の細胞内にガラスの主成分である珪酸(SiO2)が蓄積したもので、植物が枯れた後も微化石(プラント・オパール)となって土壌中に半永久的に残っています。 | ||||
イネ葉身の灰像 (葉脈に沿って並ぶ機動細胞珪酸体) |
イネの機動細胞珪酸体 | ヨシ | ネザサ | クマザサ | シイノキ |
植物珪酸体(プラント・オパール)分析は、この徴化石を遺跡土壌などから検出して同定・定量する方法で、低地の堆積物をはじめ、ローム層や黒ボク土、焼土、灰化物、土器胎土等も分析の対象となります。 | |||||||
古墳時代中期の水田跡 (仙台市、富沢遺跡第35次調査) |
照葉樹の自然林 (宮崎県綾町) |
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この分析は、これまで主にイネをはじめとするイネ科栽培植物を中心に研究が行われ、水田跡の探査や確認等に応用されて大きな成果をあげています。 また、重要な畑作物であるヒエ、アワ、キビ、ムギ、モロコシ、ハトムギ、トウモロコシなどの同定も行われ、農耕史の研究に役立てられています。植物珪酸体はイネ科の草本類をはじめブナ科やクスノキ科などの樹木葉でも形成され、草原植生および照葉樹林などの森林植生の復原に応用されています。今後の研究の進展によって分析の対象はさらに増加すると考えられます。 分析法や同定精度も向上しており、イネの亜種レベルの同定や、タケ亜科の属・節レベルの同定、植物の部位や生育段階(季節)の検討なども行われています。 タケ亜科には温暖・寒冷の指標になるものがあり、その変遷から気候変動(氷期−間氷期サイクル)をとらえることが可能です。また、タケ亜科のうちチシマザサ節・チマキザサ節とミヤコザサ節が積雪50cmを境に棲み分けしていることに着目して、過去における積雪量の変遷を推定する試みも行われています。 当研究所では、これらの研究成果を踏まえ、農耕史や古植生・古環境の復原およびその変遷史などを解明するための資料を提供致しております。 |
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木材は、解剖学的形質の特徴から、属レベル(一部は種レベル)で同定できます。また炭化材についても、落射顕微鏡や走査型電子顕微鏡によって同定が可能です。 これらの分析により、家屋の用材をはじめ、木製品の樹種の選定、さらに地域ごとの木材利用の様相などを解明することができます。また流木や埋没木の分析により、遺跡周辺の森林植生が復原されます。 古環境研究所では、分析担当者が現地に出向き、木製品などの貴重な試料について必要最小限の切片採取を行うことが可能です。また、糖アルコール含浸法による木製品の保存処理も行っております。 |
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珪藻は、珪酸質の被殻を有する単細胞植物であり、海水域や淡水域などの水域をはじめ、湿った土壌、岩石、コケの表面にまで生息しています。また塩分濃度、酸性度、流水性などの環境要因に応じて特定の生息場所を持っています。 珪藻化石群集の組成は、当時の堆積環境を反映しており、水域とその周辺の堆積環境や古環境復原の指標として利用されています。 |
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Cyclotella stylorum | Cocconeis scutellum | Navicula marina |
植物の種子や果実は、種レベルまで同定できるものが多く、栽培植物の種類や植生について有用なデータを提供することができます。 種実は微細な植物遺体よりも移動性が小さいため、遺跡周辺の比較的狭い範囲の植生復原が可能です。また、栽培植物や食用植物の検出状況から、当時の農耕や食生活を解明することも可能です。 |
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イチイガシ | クルミ | ウリ |
最近めざましい進歩を遂げている生物学の研究成果を応用して、植物遺体からDNAを抽出し分析することで、種の同定や株の異同を調べることができるようになってきました。 作物では品種レベル、樹木でも種や亜種レベルで同定され、今までは考えられなかったほどの精度で植生の復原が可能です。また個体レベルの識別が厳密に行えるため、建築材や木製品が同一の材で作られているかどうかを鑑定することも可能です。 植物遺体DNA分析は、遺物の保存状態が良ければ数グラム程度といったごく少量の試料で可能であり、部材の位置を問わないため貴重な遺物を大きく傷つけたり破損したりすることなく、信頼度の高い同定結果を得ることができます。 |
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イネ | |||
炭化米 |