がんばれ輝君!(テル君)

 

  当学園の卒業生 輝君と園長の闘病日記です。
  輝君は、血管肉腫という重い病気になってしまいました。
  そして高齢のため、寝たきりの生活をしていました。
  輝君は重い病気と一生懸命闘って2000年7月11日 静かにその一生を終えました。
  
  このページは、園長が2時間おきにつけた看護日記を元に、輝との闘病生活、
  老犬の介護 その他、言葉では語り尽くせない輝との思い出や、輝への想いを綴ったページです。
  

  私達のパートナーは私達より早く年老いていきます。
  私は、愛する自分のパートナーに介護が必要になったり、重い病気になってしまった時や
  これから新しく動物と暮そうと思っている方になど愛犬家の皆様に
  是非このページを読んでほしいと思っています。
  老犬介護や看護は辛い事ばかりではありません。
  辛い事、悲しい事はモチロンたくさんありますが、その分喜びも大きいのです。
  現実から目を背けるのではなく、しっかり受け止めて愛犬と歩いていくことができるよう
  愛犬が元気なうちから色々な面で準備をしてあげる事も、大切なことだと思います。 
  
  つたない文章ではありますが、心を込めて書きました。
  すべての犬達が幸せな老後を過ごす事ができるよう、天国の輝と一緒に心からお祈りしています。

       

10歳位の時の輝君です。
硬いバスケットボールも30分たらずで
プシューっと穴を開けてしまう
とても活発なワンコでした。

穴をあけたボールを咥えて
ご満悦の輝君です。

17歳になった輝君。
寝たきりでもちゃんとアイコンタクトがとれる
賢いワンコです♪
現在の体重は24キロほど。
上に掛っている毛布は、
病犬用として使っているネンネ毛布。
柄は元気になってピョンピョン跳ね回るように・・・
との願いを込めてピーターラビットを選びました。

寝たきりの状態が続くと、人間と同じように
床ずれになってしまいます。
輝の左ひじは床ずれで赤くなってしまっています。
また、左手は神経障害を起こしていて
ツネッても叩いても痛みを感じません。
筋肉もかなり落ちてしまっています。

癌患部の写真です。
初めて患部を見たときはショックでした。
化膿してしまうので、
毎日イソジンで消毒して清潔を保ちます。
輝君の体調が良ければ
できるだけ早く手術する予定です。

輝は立ち上がる事が出来ないので
寝たきりで排泄します。
やはり寝たまま排泄するのは嫌のようで
限界まで我慢してしまいます。。。
脱水を起こさないよう1日に洗面器2杯分のお水を
私が直接口移しで飲ませています。
お水には少量のポカリスエットが混ぜてあります。

輝君のお散歩です。
寝たきりなので抱っこして庭で
色んな匂いをかいだり
風を感じたり・・・
最近は少し体重も増え
元気も出てきました。
輝君は他のワンコがお庭で遊んでいるのを
ちょっと羨ましそうに、でも暖かい瞳で
見つめています。



2000年5月    1日  5日  13日  19日  24日  27日

          2000年6月    2000年7月   お星様になった輝君


 20000年5月1日

    先週、実家の母から電話があり「輝くん、寝たきりになったよ。。」と告げられました。
    今日は輝君のお見舞いに行ってきました。

園長 「輝くん。お姉ちゃんが来たよ!どうした?大丈夫かな??」

輝君 「クー!クーウ!クーン。。。」

園長 「そうか、そうか、逢いたかったよね。嬉しいよね! お姉ちゃんもとっても嬉しいよ。」

輝君 「ヒィーン」

園長 「さぁ〜て!じゃあキレイキレイしようか?」

    輝をそっと抱き上げ古くなったカーテンの上に寝かせる。
    輝は不安そうな顔で私を見つめている。

園長 「大丈夫だよ、ちゃんと傍にいるからね。」

    本当に??って顔をしている輝君。なんだか可愛い。
    輝の犬舎は私が来た時してしまった嬉オモラシでオシッコだらけだったので、
    急いで掃除した。

輝君 「グーーッ ヒーーン ヒーン」 ブルブルと震える

園長 「どうした?お腹痛い??どうしたの?」

輝君 「ウーン。。」 ブリブリッと少し下痢ぎみのウンチをした。

園長 「そうだったんでしゅか、ウンチ君が出たの。良かったねぇ〜(^^)」

    下痢気味のウンチ君を掃除する時、ウンチがたっぷり手に付いた。
    でも、そんなことはどうでも良くて、ただウンチが出た事に喜んでしまう。
    お尻を濡れたタオルで拭き、ブラッシングとタオルマッサージを施す。

園長 「ほら、気持ちいいねぇ? 王様みたいにキレイになろうね?」

輝君 「ヒーヒーヒーーン。」 気持ちよさそうにしている。

    一通り手入れをして、ビオフェルミンを飲ませる。
    お薬を飲むのは昔から上手なのでゴクンと一飲みで済んだ。
    その時、口の中を見て、脱水症状を起こしているようなので、お水を少しずつ与えた。
    美味しそうにゴクゴクと飲んだ。

園長 「さて、次は何しようかなぁ〜?・・・お散歩行く??」

輝君 「クーーーン! ヒーーン!!」

園長 「そっか!分かったよ。 お姉ちゃんに任せとけっ!連れてってあげるかんね」

    輝はとっても嬉しそうに待っている。
    私は、厚手の大きな古カーテンで輝を人間の赤ちゃんのように「おくるみ」する。
    輝は生まれて初めての「おくるみ」状態を嫌がっているようだ。
    でも、老犬とはいえ、20キロ近い体重の犬を運ぶにはこれが一番安定するので
    しかたない。 我慢してもらうしかなさそうだ。

園長 「ヨイショーっと。。はぁ〜重いよぉ〜。。。」

輝君 「クーッッ。。」

園長 「うそうそっ! 大丈夫だよ。気にしないでね。」

輝君 「。。。。」

園長 「さっ、じゃあ行きましょうねぇ〜♪」

    輝は嬉しそうに目を輝かせている。そうだろう。。何日ぶりかのお散歩なのだから。
    私の父と母では、抱いてお散歩させる体力はもうないようだし。。
    それにしても重い(ーー;) でも輝が嬉しそうに自慢の鼻をピクピクと動かし、
    外に興味を示すのを見て、重たい事は忘れてしまう。
    興味や関心があるうちは大丈夫。と少し安心する。

園長 「ほら、いつも遊んでた畑だよ?分かるよね?」

    輝は鼻をしきりに動かしている。瞳はとても輝いている。
    私は涙が出てきた。
    輝は私が泣いているのを感じたのだろうか?
    私の顔をベロベロと舐める。

園長 「うはっ!分かったよぉ〜」

輝君 「ベロベローン!」

園長 「ったくお前は良く分かるねぇ〜。。でも、お姉ちゃんも輝君の事は良く分かるよぉ〜。」

園長 「そうだ!ガジガジ君する?」

    ガジガジ君とは、棒やオモチャなどをガブガブ噛んで破壊する遊び?です。
    輝は元警察犬で防衛訓練が入っており、飛びついたり噛み壊したりする遊びが
    大変気に入っている。 小さな頃から自宅前にある木でできた街頭に噛み付き「ガルルルル」と
    唸り声を上げながら破壊しようとしていた。若い時は、私と窃盗犯を捕まえた事もある優秀な
    警察犬である。

輝君 瞳が輝きを増していく。

園長 「よし!やっつけちゃえーー!!」

    その辺に落ちていた材木を輝の目の前にかざし口元まで持っていく。

輝君 「ガブッ!!」 「ウ〜ゥ〜ガウゥーーー!」

園長 「よしっ! よしよしっ!! かかれ!」

輝君 「ガルルルー」

    この調子で15分ほど引っ張りっこが続いたが、体力を消耗しすぎると良くないと思い
    遊びを終わりにする。大分日が落ちてきたので、家に帰り、輝と少し話をする事にした。
    昔私と輝がしていたように、輝と目線を同じ高さにして静かにゆっくりと話し掛けた。

園長  輝? お姉ちゃんとお散歩、楽しかった? お姉ちゃんね、輝君が行きたい所は
    どこにだって連れていってあげたいの。 そう。。昔たくさん泳いだ川、もう一度行きたいね。
    夏に自転車でよく行ったよねぇ〜。。。 覚えてるぅ? 駄菓子屋さんでだまってお菓子持ってきちゃった
    ことあったでしょ? 咥えたまま川に飛びこんじゃって駄菓子屋のおじさんが
    「こらーー!!返せぇー!」ってすごい剣幕で追いかけてきたよね?
    お姉ちゃん、すっごく怒られたけどその時はお腹抱えて笑っちゃったよ。
    一緒におすわりしてごめんなさいって謝ったっけね。
    おじさん、ちゃんと許してくれて、輝君の持ってきたお菓子のお金、タダだったよね?
    うふっ。あの時は得しちゃったね? またやってみたいね。 

輝君  私を少し眩しそうに見つめていた。

     こんな調子で30分ほどお話をしていたが、涼しい風が吹いてきたので
     今日は帰ることにする。

園長  「じゃあね。。。今日は帰るからね。必ずまた来るから良い子にしてようね。」

輝君  「ヒーーンッ!」 必死に起き上がろうとするが出来ない。大変寂しそうだ。

園長  「ダメだよ。 良い子にしてないと。。じゃあ、お鼻げんまんしようか?」

     ゆびきりげんまんのワンコ版だ。犬のお鼻と人間の小指をくっ付けて約束する。(園長の発想)

園長  「ゆーびきーりげんまん♪〜〜〜〜。」

輝君  分かったような分からないような複雑な顔をしている。

園長  「輝、帰るからね。 今度お姉ちゃんが来る時まで マテッ!! ですよ?」

輝君  分かったようだ。

園長  「マテ!」

     私は後ろ髪を引かれる想いで実家を後にして車に乗り込む。
     輝は私の唯一無二の親友だ。
     彼が私を何度も助けてくれた。
     彼がいなかったら私の人生は大きく変わっていたかもしれない。
     彼のおかげで私はここにいることが出来るのだ。。。
     残り少ない命の彼に出来る限りの事をしたい。
     そんな風に思った。


 2000年5月5日

     3日前、輝君を私の自宅に連れてきた。私の実家では、父と母の体力を考えると、輝への十分な介護が出来ないと
      判断し、連れてきたのだ。 父と母は自営業だが、輝の他に、7匹の犬と生活している。
      輝の介護をする暇と体力がなかったのだろう、輝は、脱水症状と下痢、睾丸の所にある腫瘍はグジュグジュしていた。
      「もう見ていられない!!」と相談もせず、なかば強引に引き取ってきた。
      村長に付き添ってもらい、車で私の自宅まで30分走った。
      車内で、「輝は長年住んでた実家を離れて寂しくないだろうか?」と思ったが仕方がない。
      少しでも良い状態で暮らしてもらいたいから。。。

園長   「さあ、着いたよぉ。 ここが今日から輝君のお家だからね!」

輝君   「ヒィーーン」

      私と村長は、輝を抱き上げとりあえず縁側に寝かせた。
      体からは異臭がする。 オシッコとウンチ、腫瘍の化膿した臭いだ。
      私は輝のお腹、お尻、足にバリカンをかけた。
      濡れたタオルで固まったウンチや腫瘍の膿の塊をそーっと取り除きながらの作業を4時間続けた。
      村長が手伝ってくれなかったら2日がかりの作業になったかもしれない。
      協力者がいるのは大変心強い。
      一通り作業を終えて腫瘍を「手術用イソジン」で消毒した。
      すると、何か動く物がある??白い・・・小さな・・虫??

園長   「村長。。。ウジがいる。。。。」

村長   「え!? 本当に??」

園長   「うん。 なんとかしなくちゃっ!」

      ウンチやオシッコが手に付いたりは当たり前のように全然平気だったのに、ウジだなんて初めてで
      うろたえてしまった。 しかし、何よりも早くウジを取ってやろうと体は動いていた。
      一匹ずつ、慎重に取る。 悔しくて仕方ない! 私の親友にたからないでよ!
      失礼な!!と怒りながら計7匹を取った。

園長   「もういないみたいだよ。」

村長   「じゃあ、燃やしてくる!」

園長   「輝? もう大丈夫だからね。 みんなお姉ちゃんがやっつけたからね。」

輝君   「ふぅーー。。」 ため息を付く。疲れたのだろう。

園長   「じゃあ、お水飲んでネンネしようね。 お姉ちゃん一緒にいてあげるからね。」

      輝は水をガブガブと飲み大きなため息を付いた。 私は輝を座敷に上げて、体に毛布を掛けてやった。
      そして、体中をゆっくりと撫でた。 初めての家で落ち着かない様子だったが、大分疲れたようで
      すぐに寝ついてくれた。私は輝が寝ている間に家事を済ませ、お風呂に入った。
      3時間後、輝に食事を与えに行った。

輝君   「ヒーン ヒーン!」 ジタバタと手足を動かしている。

園長   「あ〜〜! 元気だねぇ〜! お腹空いたでしょう?ゴハン作ってきたよ♪」

輝君   ベロ〜ン。。ゴクリッ。  食欲があるようだ。

園長   「ハイ、じゃあ、あ〜んして食べようね。」

輝君   バクッ! モグ! ゴクンッ。  輝は美味しいゴハンは噛まないで食べてしまう。さすが大型犬だ。

      昔よりは少ないが、寝たきりの輝にとっては十分な量を食べ終えた。
      とても満足そうな顔で私を見つめる輝の表情からは、老いが感じられない。
      こんなに生き生きとしているのだから、大丈夫、と思う。

輝君   「グーーゥゥーン。  クゥーーッ。。」

園長   「どうしたの?お腹痛いの?どうしたの?どうしたの???」

輝君   じょぉぉーーーー。。。

園長   「なんだぁ〜。オチッコしたかったのぉ〜(*^。^*)」

輝君   。。。。。申し訳なさそうな顔をしてる。

園長   「ハイ。 キレイキレイしようねぇ〜♪」

輝君   ハッハッハッ。 とても嬉しそうだ。

      輝はほんの子供の時だけ座敷で飼っていたが、ある程度大きくなると外で生活していた。
      家の中で、しかも寝たきりでオシッコして、体がビチョビチョになるのは嫌なはずだ。
      ペットシーツを取り替えて爽やかな気分なのだろう。
      ありがとう。という目をして私を見つめる輝。
      私達は心が通じていると思った。

園長   「じゃあ、お姉ちゃんもココで寝るから、安心してネンネしようね!」

輝君   「ヒーーーーン。」 半端じゃなく嬉しそうな顔をしている。

園長   「じゃあ、手を繋いでネンネね。」

輝君   「ヒーーヒーーンヒンヒンッ」 嬉しくて眠れないようだ。(ーー;)

園長   「も〜〜っ! ネンネ。ゴロ〜ンするんでしょ? 知らないよぉ〜。お化け出るよぉ〜。」

輝君   「ヒーンヒーンヒーン」 またしても嬉しそうだ。

      こんな事をしばらく続けてやっと私達は眠りについた。


 2000年5月13日

      今日は輝を病院に連れて行った。 5種混合ワクチンの接種と、癌患部の切除手術の相談をした。
      先生は、切除しても良いと言ってくれた。
      輝の体力、体調が万全の状態になったら、手術をしようと思う。
      家に来てから、輝の体重は2キロ増加し、毛艶も良くなり、筋肉も少しついてきたようだ。
      私も、こんなに早く体調が良くなると思っていなかった。
      驚くほどの回復ぶりを見せる輝に、「生きようとする力」を感じている。

園長   「輝君? 今度イタイイタイの所、やっつける手術するんだよ。」

輝君   「ヒーー!」 なんの事??と言う顔だ。

園長   「元気になるのに、チョッキンするのっ!」

輝君   「???」 

園長   「チョッキンしたら、痛い消毒しなくて良いんだって」

輝君   「ヒーッ!」

      輝は最近「痛い」という言葉に敏感だ。 手術用イソジンで患部を消毒しているのだが
      自壊した患部の傷が焼けて痛いのだ。
      そんな時、私が 「痛いよね。我慢しようね。」と言うから、痛い=消毒になってしまったようだ。

      最近変わった事は、私が寝ているとき、寝返りの代わりに輝が自力で時計回りにクルクルと回ることだ。
      簡単なようだが、寝たきりの老犬にとっては、至難の技である。
      WANWANパーティーの一瞬芸コンテストに参加出来たら、優勝間違いなし!だろう。
      輝と私の自慢が増えた。

園長   「輝君、ガム食べる??」

輝君   ガムの置いてある場所を見る。

園長   「ハイハイ。じゃあ取ってあげるね。」

園長   「ハイ。 ガブガブしなさい。」

輝君   「ガブガブ ガブガブ。。」

園長   「よしっ! 守れは?」

輝君   「ガウゥゥ〜〜ウゥ〜 ガルルルルゥ〜〜」

      守る時の警戒の唸り声が長くなった。鼻に寄せるしわも、細かくシッカリしてきたし、
      歯肉を沢山見せることが出来るようになった。
      顔の筋肉が復活してきているようだ。
      また、首も大分上がるようになった。
      これで、左手が動いてくれたら嬉しいが、神経障害を起こしもう動かす事は出来ないらしい。。
      まあ、3本しか動かなくても寝返りが一人で出来るようになれば。。。
      今のままでも、十分だが、どうしても多くを望んでしまう。
      しかし、希望は大きく持ったほうが頑張れる。


 2000年5月19日

      2日前の夜、輝が血尿をした。 ビックリしたが、その後目に見える血尿はなかった。
      私は血尿を採取して結石の検査をしたが問題ないようだった。
      検温すると40度で熱が高いようだ。 膀胱炎なら良いが。。と心配だった。
      今日午前中に病院に行き、先生に詳しく診てもらった。
      エコーをかけて膀胱の様子を映してもらい、膀胱の中がかなり荒れていると言われた。
      膀胱炎の為に血尿と熱が出たようだった。厄介な病気にかかっていなかったので
      一先ず安心した。注射をしてもらい、今まで投与していた抗生剤で3日間様子を見て
      熱が下がらなかったら点滴治療することになった。
      
園長   「輝君、膀胱炎だって。 変な病気じゃなくて良かったねぇ〜♪」

輝君   「ヒィ〜〜。。」

園長   「ホッとしたらお腹空いちゃったね。 お弁当買っちゃおっかなぁ〜!」

輝君   「??」

      私は輝が膀胱炎だと分かり力が抜けて、急にお腹が空いてきたので
      近所のお弁当屋さんでお弁当を買った。
      車の中で待っていた輝はお弁当の匂いをかいで舌なめずりしている。

園長   「ん?? 美味しそう? 食べたいの?」

輝君   「ベロ〜〜ン! ベロベロ〜ン!」 激しく舌なめずりしている。

園長   「食いしん坊だなぁ〜。 じゃあ、少し、チョコットだけね。」 私はお弁当の中のお肉を一つまみだけ与えた。

輝君   「バクッ! ゴクン。。。??ヒーーーー!!!!」

園長   「もうないよぉ〜。 チョットの約束したでしょ?」

輝君   「ヒーーー!! ヒーーーン!」 おねだりしている。

園長   「輝君。。。 (ーー;)」

      車で家まで帰る間、輝はお弁当を見つめピーピーとなきまくっていた。
      輝もお腹が減ったのだろう。 良い事だ。早く食事にしてあげようと思った。
      村長は風邪を引いて寝ていたが、輝の様子を心配して起きてきてくれた。
      一緒にお弁当を食べながら輝の診療結果を話した。
      輝は沢山の人に支えられ応援されて生きている。
      みんなの愛情を沢山感じて早く元気になってくれると良いなっと思う。
      最近、お薬を呑ませる時 お友達のアレックス君のお母さんとお父さんに
      お見舞いで貰った「カロリーメイト」と一緒に与えている。
      輝はバクバクと薬とカロリーメイトを美味しそうに食べている。
      カロリーメイトは大好物になったようだ。
      箱を見ると大きく目を開き「早く頂戴!!」と必死にねだる。
      
      夜になり、輝の寝ている場所を消毒する為輝を抱っこして移動させようとした。
      抱き上げると嫌だったようでジタバタと動いてしまった。
      私はバランスを崩し、輝を落としてしまった。
      すると、輝の癌患部のカサブタが取れて出血してしまった。
      一番大きなカサブタが取れてしまい出血が止まらない! どうしよう。。。
      病院に電話をして処置方法を教わりやってみた。

輝君   「ヒーーッ!」

園長   「うん。 ごめんね。。 ごめんね。。 お姉ちゃんが悪かったよね。」

園長   「今直してあげるから、我慢してね?」

輝君   「ヒ〜ン。。」

      患部に消毒液をたっぷりかけ、圧迫して20分くらいそのままに。。
      血は止まったようだ。 良かった〜〜。。

園長   「もう大丈夫だよ。 痛かったね? 良い子で我慢したね。」

輝君   「ヒンッ クシュンッ!」

園長   「あっ! ハナタレちゃったの?ごめんねぇ〜〜。」

      今日はなんだか色んな事があって疲れたが 輝の幸せそうな寝顔を見ていると、自然と力が抜けて眠くなる。
     


2000年5月24日

     輝の体温が下がらない。 19日から平均で39,3℃ ぐらい。 2時間おきに水を呑ませ排尿させて、体の中の熱を
     外に出そうとしているのだが、熱が高い時は40℃もある。 何故なんだろう? 原因が分からないので心配だ。
     先日(19日)に病院で検査をして、膀胱炎の熱だろうと推測したのだが、膀胱はほぼきれいな状態だと思う。
     膀胱の熱じゃないとしたら・・・血液検査で膵臓、肝臓も健康だった。 では・・肺に転移しているのか??
     不安な気持ちで一杯だ。 肺に転移し、肺炎を起こし苦しむのは輝も私も辛い。
     次に病院へ行った時に、肺のレントゲンを撮ってもらうつもりだ。 どうか、どうか転移していませんように。。

園長  「輝くぅ〜ん。。。 おはよぉ〜〜ぉ〜。。」  

輝君  「。。。ブウ〜〜〜ッ。」 オナラをする。(ーー;)

園長  「今日も元気な臭いオナラですねぇ〜。。 1日の始まりは大きなオナラなの?輝君??」

輝君  「ヒーー!」 うれしそうな顔。

園長  「はいよぉ〜。。チッコしたいのね? ホイホイ。」

     私は眠い目を擦りながら、輝のお腹の上から膀胱を手で圧迫し、排尿させる。
     輝の排尿は1日2時間おきに行なっている。 膀胱の感覚を失いつつある輝君は膀胱を刺激しないと
     オシッコが溜まり膀胱炎になってしまうのだ。
     大変だが慣れると楽しい?と思う。 排尿させるたびに私の手は輝のオシッコでビショビショになる。
     排尿が終わると、体温計で輝の熱をはかり、水を大量に飲ませ、食事をさせる。
     輝の部屋を塩素で消毒し、シーツ タオルの交換、そして家事が待っている。
     家の洗濯機で1日3〜4回の洗濯。 部屋の掃除、他の3匹のワンコの散歩、ゴハン、輝のゴハン作り。
     そして忘れちゃいけない村長のお世話!?
     その合間を見て、2時間おきに輝の排尿と検温、水分補給をしている。
     まるで戦争だ。 一番手のかからないニャン太郎君は私が一息つくと 「にゃ〜お」と甘えてくる。
     みんな、私と遊びたくて甘えたくて仕方がないようだ。
     今日は朝から「セミ」が鳴いている。 暑い。。 夏のような日差しで風がない。
     輝がバテてしまう。。そんな事を思いながら、午前中を過ごした。

園長  「輝? 暑いでしょぉ〜? 扇風機持ってきたからね。」

輝君  「ハッハッハッ。。。。」 かなり暑そうだ。 このままでは本当にバテてしまう。

園長  「どう? 涼しいでしょ〜? 」

輝君  「ヒィ〜〜〜!!!!!」 

園長  「何? どうしたのぉ〜?? 嫌なの? 怖いの?」

輝君  「ガウゥ〜〜。。」  扇風機が怖いようだ。 すごく怖い顔をしている。(^^)

園長  「大丈夫だよぉ〜。 扇風機君でしょ? 友達、友達。」

輝君  「クゥ〜。。 フゥ〜。。」  分かってくれたようだが、やはり気になってしまうようだ。

     輝の熱は39、7℃度ある。 何とか熱を下げたい。 薬は効かないし。。。
     私は冷凍庫にあった「アイスノンまくら」を思いだし、輝の動脈を冷やす作戦を思いついた。
     早速試してみたら、熱は下がらないものの、輝君は少し涼しい気持ちになってくれたようだ。
     輝は小さい頃から氷や水が大好きだ。 当然アイスノンもかなり気に入ってくれた。
     
     熱が下がり、良い気分になってきたようなので、犬用のガムを与えると、夢中になって噛んでいる。
     うっとりしたような幸せそうな顔をして無我夢中になってガムを噛み、時折思い出したように
     私の顔を見て、「ガム持ってて!」という顔をする。寝たきりの輝は、ガムを両手で押さえる事が出来ないので
     私がガムを持っていてあげないと食べれなくなってしまう。
     調子の良い時は1時間も付き合わされる。(ーー;)
     輝のガムを噛む口と首の力が、私の手に伝わってくる。
     まだ、歩く事が出来た時に感じた力と何にも変わっていない。
     力強く、ガムを噛む輝を見て、「大丈夫。。大丈夫。。」と思う。
     何が大丈夫なのかは、自分でも分からないが、とにかく輝は大丈夫!と思うのだ。。。


 2000年 5月27日

     今日、輝を病院へ連れて行った。 癌患部がかなり成長しているのだ。
     毎日4回も消毒しているのに、先日またウジが湧いた。しかも今回は30匹位。
     ショックだった。 私は1日のほとんどを輝と過ごし、介護している。
     ハエがたからぬように、薄いカーテンを輝の体に掛けて、ハエのいない環境を作っているつもりなのに。。。
     私と輝が寝ている間に、卵を産んだに違いない。
     ウジは、前にやったように、1匹ずつ残さず取り除いた。
     そして、今日の一番の病院へ行く理由は、肺のレントゲンを撮る事である。
     高熱が続く理由を、肺のレントゲンを撮って調べるのだ。

     私と輝、村長で病院へ行った。
     問診の後、いよいよレントゲンを撮りに。。。

先生  「じゃあ、レントゲン撮りましょう。 どなたか輝君と一緒にレントゲン室へ入っていただけますか?」

園長  「私が行きます。」

先生  「妊娠とかしてないですよね?」

園長  「はい。大丈夫ですぅ。^^;」

先生  「じゃあ、これ着てください。」

     先生は私に放射線を防ぐ為のエプロンを渡してくれた。 私はやたら重いそのエプロンを着用して
     輝を抱き、レントゲン室に入った。
     輝の胸部のレントゲンを1枚撮った後、輝と私は診察室に戻りレントゲンが出来るのを待った。
     待っている間の時間が、とても長く思えた。
     もし、肺に転移していたら。。。そう思うと、息が出来ないくらい胸が苦しくなる。
     どうか、転移していませんように。。。

先生  「これが肺のレントゲンです。」 輝のレントゲンを見せてくれた。

園長  「で、それで、転移は??」 胸が張り裂けそうな緊張感が走った。

先生  「大丈夫です。 転移はありませんね。しかし、ひどい気管支炎を起こしていますね。」

     私はその言葉を聞いて、力が抜けた。 へなへなと床に座り込んでしまいそうなほどだった。
     足が笑っている。。 私は自分の足に気合を入れるべく、診察室をチョロチョロと歩き回った。^^;
     その間、先生の気管支炎の詳しい説明を聞いた。
     
     気管支炎の原因は、水の誤飲だろう。と言われた。人間の子供や、老人がなるものと同じだそうだ。
     輝は寝たきりで水を飲むのでうまく食道を通れずに誤って肺に入ってしまうのだという。
     肺への転移がなくても、気管支炎をひどくして肺炎にでもなったら、弱い輝の体には命取りだ。
     輝は高熱が続いている。 熱が輝の体力奪っていく。 
     先生は、輝の熱を下げる為に、ステロイドを投薬してくれると言った。
     輝の熱が下がれば、癌の患部を切除する手術をしてくれると言う。
     嬉しかった。 涙か出そうだった。
     私達は、診察を終えて、自宅に戻った。

     輝は昨日から母屋にある村長と私の寝室のベットで寝かせている。
     床に寝せると、床ずれ、温度変化と色々問題がある。
     母屋なら、私ももっとマメに介護できるし、何よりエアコン完備だ。
     犬は温度変化に対して、とても敏感で、10℃ほど変化すると、とてもストレスを感じると病院で聞いた。
     老犬の輝は健康な犬よりストレスを感じると思う。エアコンは必要だ。
     輝が来てから、ベットには村長、龍馬、桃、ニャン太郎、幸が寝て、私と輝は離れで寝ていた。
     輝がベットを使う事になり、村長はベットからリビングの畳に、布団をひいて寝ることになった。
     私は勿論、輝とベットを使用する。
     「村長、申し訳ない<m(__)m> 許せ!」と心の中で呟きながら、輝と私は快適な暮らしをしている。(^^)
     ベットで生活していて気が付いたのだが、ベットは介護しやすいのだ。
     「ベビーベット」は輝の体にピッタリ合うのでは? 高さもちょうど良いし。。。
     誰か譲ってくれないかな?と思った。

     深夜3時、輝がおかしい。。
     息がとても荒く苦しそうだ。 体は燃えるように熱い。 検温すると40℃の発熱だった。

園長  「輝!!  輝君?? 輝!」

輝君  「ヒィ〜〜。。。。」 力なく返事をする。

園長  「待っててね、今、楽にしてあげるから!」

     私は、洗面器に冷たい水を汲んで、タオルを冷やし、アイスノンを輝の首にあてて冷たくなったタオルで
     輝の脇、股、お腹を冷やした。 1分も経たないうちにタオルは熱くなる。
     頻繁に体を冷やし、冷たい水を与える。

園長  「輝君? 楽になってきた?」 

輝君  「フゥ〜。。フゥ〜。。。」 大きく息をして、私を見つめる輝君。

園長  「ネンネしてていいんだよ。」 

輝君  「。。。フゥ〜。。 」 

     輝は私を一生懸命見つめようとしているのだが、高熱の為に、気が遠くなっていくようだ。
     目をゆっくり閉じて、ハッとしたようにめを開ける。

園長  「輝君。。大丈夫だよ。 傍にいるから。。ここに居るから。」

輝君  「ヒーン。。」 傍にいてね?というように私を不安そうに見つめる輝。

     私は輝に、明日の朝飲ませる予定だったステロイドを投与した。
     30分ほど看病した後、再び検温する。
     熱は38,8℃まで下がった。
     輝の呼吸も楽になったようだった。 

園長  「輝君? もう大丈夫だよ。 疲れたでしょう? ゆっくり、ネンネしなさいね。。」 私は静かに輝に言った。

輝君  「すぅ〜。。 すぅ〜〜。。。」 輝は安心したように、眠った。

     輝は頑張った。 私が輝にしてあげられる事は助けてあげる事だけ。
     輝自身の生きる力がなければ、助けてあげる事は出来ない。 輝があと、どの位生きれるかは分からない。
     あと1ヶ月かも知れないし、1年かも知れない。
     私は輝という「命の時計」が止まるまで、笑顔を絶やす事はないだろう。
     私の笑顔を、輝が求めているのだから。


 

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