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〜75000HIT記念リクエスト小説<HU7様へ>〜

アトリエ大王 Vol.1


Part−1 構想

感謝祭

「さあ、いらっしゃい、いらっしゃい! ザールブルグで最も古い歴史を誇る、『職人通り』商店会の百周年感謝大セールだ。銀貨50枚のお買い上げごとに、福引券を1枚もれなく差し上げてるよ! 福引会場はこの先! さあ、どんどん買ってっとくれ!」
「おや、福引とは懐かしいねぇ。どれ、ひとつおくれでないかい」
「わあ、おもしろそう。やってみようよ」
「福引会場はこちらだよ! 豪華賞品盛り沢山だ! 今回の1等は、なんと、『ミュラ温泉へ行く秘湯の旅』ご招待券をペアで1組様にプレゼント!」
「え・・・? ミュラ温泉って・・・」
「それって、危険なんじゃ・・・(汗)」

オプション

「ねえ、ミュラ温泉って、あのヴィラント山のてっぺんにあるんでしょ。そんなところにご招待って言ったって、怖くて行けないよ」
「そうそう、1等は、あんまり当たりたくないよね」
「おっと待った! この『職人通り』商店会がそのへんをおろそかにするものかい! ちゃあんと冒険者の護衛付きにすることもできるんだよ」
「あ、なあんだ。それなら安心だね」
「ただし・・・」
「ただし・・・?」
「護衛はオプションだから、ご招待とは別料金になるんだが」
「・・・だめじゃん」

残念賞

「じゃあ、福引券2枚あるから、2回引くね。それっ!・・・あ、ふたつとも白い玉だ」
「ああ、残念だね。そいつは6等賞で、つまりはずれだ。6等賞はこれ。2本持ってってくれ」
「何なの、これ?」
「『魔法の草』だよ」
「あんまりぱっとしない草ねぇ。食べられるのかい?」
「いや、食べられはしないけど」
「じゃあ、何の役に立つのよ」
「この先の『マリー&エリーの錬金工房』へ持って行けば、1本につき銀貨5枚と交換してくれるぜ」
「・・・そういうことかい」

換金率

「でも、たった銀貨5枚じゃあねぇ」
「おっと、そう捨てたもんでもないぜ。実は、『魔法の草』にはごくたまにだが、『珍しい』とか『高価な』という従属効力が付いてるのがあって、ものによっては銀貨500枚にもなるらしい」
「何よ、その“じゅうぞくこうりょく”って」
「いや、俺にもよくわからないんだがな」
「そのなんとか効力って、どこを見ればわかるの」
「いや、それはちょっと・・・(汗)」

客は客

「さて、今回は百周年ということで、1等の上に、さらに特等を用意したよ! それは・・・」
「おぅ、ちょいと邪魔するぜ!」
「あ、これは武器屋の・・・」
「福引だ! 福引やらせろ!」
「で、でも、あんたは商店会の組合員じゃないか。福引はお客さんのためのものなんだぜ。あんたはいわば身内だろ? 身内がやるってのはちょっと・・・」
「うるせえ、何をがたがた言ってやんでぇ! ほれ、これ見ろ。福引券だぜ。さっき、雑貨屋でイモ買って、もらったんだ。券があれば、誰でも福引できるんだろうが!」
「もしかして、強奪して来たんじゃ・・・(汗)」
「何ィ!?」
「わ、わかりましたよ。どうぞ。(早くはずれて出てってくれよ)」

大当たり

「よっしゃあ! 行くぜぃ!」
「あ、ああ、そんなに強く握ったら、柄がもげちゃいますよ」
「ばか野郎、こういうものは気合だよ、気合! それぃ、回すぞ!」
「だから、そんなに力を入れなくたって、回せるんだってば。(はずれろ、はずれてしまえ・・・)」
「てやぁ! どうだっ! この野郎!」
「あ、これは・・・」
「ん? 何だ、この玉。金色してるぜ」
「お・・・大当たり! 特等だぁ!」
「なに!? ほんとか!?」
「なんで・・・なんでこんな人に当たりが出るんだ・・・」

賞品

「やったぜぃ!! これでこそ、無理を言って福引券をふんだくってきた甲斐があったってもんよ!」
「へ? 今、何て・・・」
「い、いや、何でもねぇ。・・・ところで、特等の賞品って、何なんだ?」
「あ、あのねえ・・・。商店会の寄り合いで特等の賞品を決めた時、あんたもその場にいたでしょうが(怒)」
「そうだったっけか?・・・いや、わりぃわりぃ。あの時は、居眠りしてたんだわ。もったいぶらねぇで、教えろや。俺は当選者さまなんだぜ」
「はいはい、わかりましたよ。特等は、この秋に落成予定の『ザールブルグ小劇場』のこけら落とし公演で、自分の好きな筋書きで主役を演じることができる、という権利です」

「何だって!? ほんとか? この俺が、主役・・・。くうううううっ! 嬉しいじゃねえかよ。・・・で、どんな役でもいいのか? いいんだな!? だめとは言わせねぇぞ!」
「え、ええと・・・」
「芝居ってことは、アレだな。きれいな衣装を身につけて、小道具も使ってよぉ。舞台狭しと大立ち回りだ! 燃えるねぇ」
「あ、あの・・・(ドリーム入っちゃってるよ・・・)」
「それに、もちろん、アレも使えるんだろうな!」
「あ、アレって・・・?」
「わからねぇかなあ、カツラだよ、カ・ツ・ラ。ふさふさとした黒髪のヒーロー! うう、たまらねぇ」
「そ、そのへんは、実際にシナリオと演出を担当する人にきいてもらわないと・・・」
「なに? そいつは誰でぇ!?」
「たしか、アカデミーの方に頼むことになってるって・・・」


Part−2 企画

そういうことで

「そんなわけで、『職人通り』の商店会から依頼があったわけだ。商店会にはうちの生徒たちも世話になっているし、断るわけにもいかなくてね」
「はい、お話はわかりました、ドルニエ先生。で、わたくしたちは具体的に何をどうすればよろしいんですか?」
「そこなんだよ。実は、私にもいい知恵が浮かばなくてね。この公演については一切をアカデミーに一任するという・・・。しかし、考えてみれば、これはかなりの重労働だ。どうしたらよいか、君たちの意見を聞きたいと思ってね」
「ふふふふふ、イングリド、あなたがやればいいじゃない」
「何を言うの、ヘルミーナ。わたくしは生徒の指導や研究で忙しいんですからね。あなたこそ、暇を持て余しているんじゃないの?」
「おあいにくさま。そんなことを言って、あたしの研究を邪魔しようったって、そうはいかないわ。ふふふ」
「こらこら、いがみあうのはやめなさい。・・・それにしても、困ったものだね。生徒たちにやらせるわけにはいかないし」
「・・・あ、そうだ!」
「どうしたの、イングリド」
「適任者がいましたわ、ドルニエ先生」

適任者

「君たちふたりを呼んだのは、他でもない。企画から演出まで、この公演の全体を取り仕切ってもらいたいのだ」
「へ? あたしたち、ふたりでですか? お芝居を?」
「そう。イングリドの強い推薦もあってね」
「そうよ、マルローネ。錬金術は、無から有を創り出す学問。お芝居も、無から有を創り出すということでは共通したものがあると思わない?」
「それは、そうですけど・・・。でも、なんでクライスなんかと!?」
「それは私の言うセリフです」
「あなたたちはふたりとも、アカデミーの研究員という身分です。自由になる時間はたくさんあるでしょうし、研究の息抜きにもなるのではないかしら?」
「そうでしょうか。私には時間の無駄としか思えませんが。しかも、マルローネさんと一緒にだなんて」
「あ〜ら、クライス、逃げるの?」
「だ、誰が逃げるなんて言いましたか!?」
「それじゃ、引き受けてくれるのね。ふたりとも、よろしくね(笑)」

逆襲

「ところでイングリド先生、お芝居っていいますけど、役者はどうするんですか?」
「それは・・・詳しくは知らないけれど、プロの役者さんがいるわけではないから、『職人通り』の人たちを中心に有志を募ると聞いたわ」
「ふうん、そうですか・・・。クライス、ちょっと耳貸して」
「は、何ですか、マルローネさん」
「(ひそひそ)」
「ああ、なるほど」
「どうしたの、ふたりとも。そんな意味ありげに笑って・・・」
「じゃーん! 発表します。今回のお芝居には、アカデミー代表としてイングリド先生とヘルミーナ先生にも、出演していただくことにします!」
「な、何を言い出すの、マルローネ!?」
「イングリドはともかく、あたしは関係ないでしょ!?」
「決定事項です」
「くっ・・・」

笑点

「で、どんなお芝居にすればいいのですか、イングリド先生?」
「そうね、特等に当選した人の希望では、大冒険活劇にしてほしいということのようだけれど」
「はあ」
「あ、そうだ! 聞き忘れていましたけど、特等の当選者って、誰なんですか?」
「『職人通り』の武器屋のご主人だそうだけれど」
「え〜、あの親父さんですかあ? はは〜ん、なるほどね、納得納得」
「どうしたんですか、マルローネさん。そんなに大きくうなずいたりして」
「武器屋の親父さんだけに、とくとう(特等=禿頭)がお似合いだな・・・って」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「あれ? 面白くなかった?」
「クライス君、マルローネの座布団、全部持ってっちゃいなさい」

ありがちRPG

「冒険活劇かぁ・・・。よぉし、やるぞぉ!!」
「元気ですね、マルローネさん」
世界征服をたくらむ悪の帝王!! 呪いをかけられた可憐なお姫様!! 危機に瀕した世界を救うために、今、勇者が立ち上がる!! 燃えるわね〜」
「空想するのは勝手ですが、私たちはそのストーリーを具体化しなければならないのですよ。これは大変な仕事ですよ」
恐怖におびえる村人たち!! 勇者たちの行く手をはばむ魔物の群れ!! さらに、この大事な時に仲間割れが!! 勇者たちの運命やいかに!! あああ、手に汗握る展開ね〜。これよ、これ!」
「聞いてませんね・・・」

天職

「ただいま〜、エリー」
「あ、お帰りなさい、マルローネさん。クライスさんもご一緒ですか」
「ええ、不本意ながら」
「クライス、うるさ〜い!」
「で、何だったんですか? ドルニエ先生の用事って」
「それがねえ・・・。あたしたちでお芝居を仕切れっていうのよ」
「あ、今、街で噂になってる、あのお芝居ですか? 武器屋のおじさんが主役をやるっていう・・・」
「そうよ。あ、そうだ、エリー、あなたにも手伝ってもらうわよ。それとも、出演したい?」
「いえ、あたしは・・・」
「もう、あたし、燃えてるのよ! 企画原案マルローネ! 製作総指揮マルローネ! 監督マルローネ! 脚本・・・」
「脚本・・・?」
「脚本は、あんたに任せるわ、クライス」
「あの、マルローネさん・・・」
「ん、何?」
「面倒なことは全部私に押し付けようとしていませんか?」
「あ、やっぱりわかった?(笑)」

名誉職

「ふう、やれやれ・・・」
「あの〜」
「ん? どうしましたか、エルフィールさん」
「あの、大丈夫ですか、クライスさん」
「まあ、話を引き受けた時から、こうなることは目に見えていましたからね。第一、マルローネさんにやらせておいたら、物事が混乱するばかりで絶対に収拾がつきませんから」
「はあ・・・」
「マルローネさんには名目上の役割を果たしてもらって、私は裏方に徹することにしますよ。エルフィールさんにも、なにかお手伝いいただくことになるかも知れませんが」
「クライスさんって・・・」
「は?」
「マルローネさんのことを、よくわかってらっしゃるんですね」
「な、何を言い出すのですか(赤面)」

友情出演

「あの・・・。お姉さん?」
「あら、ピコ、どうしたの?」
「頼まれていた『コメート』、できましたけど」
「ああ、ありがと。・・・あ、そうだ、あなたたち妖精さんも、お芝居に出てみない?」
「え、でも、ボクたち・・・、あの・・・」
「いいからいいから。監督権限で、出演させてあげるわ。ええと、何て言ったっけ・・・。そう、友情出演よ、友情出演!」
「いったい誰から誰への友情なんですか、マルローネさん」
「もう、クライス、かたいこと言わない言わない」
「あ、あの・・・」
「決まりぃ!!」
「・・・ううう、森へ帰りたい」

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