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イングリドのアカデミー

〜ザールブルグのグレートティーチャー〜

作:マサシリョウさん


プロローグ 顔合わせ

9月1日。ザールブルグアカデミー・・・
今日、ここでは入学式があった。
アカデミーが運営を開始してから3年目。
リリーという偉大な人物のおかげだろうか。
錬金術という職業に心ひかれる大勢の若者が明日の錬金術師を目指し
希望にむねを膨らませる・・・
その中の一人。
水色の服を着た、長い髪を後ろで束ねた少女。あ、美少女。それが私。
小説だから姿を見せられないのがとても残念。
「教科書はどこで買うのかしら・・・。それに学生寮の場所もちゃんと聞かなくちゃ。」
私がそんな事を考えていたその時
玄関の扉が開き、一人の男が入って来た。
「ふぅ、やっと着いたぜ。」
その男の姿が目に入ったとき、私は彼から目が離せなくなった。
いや、恋の始まりとかそんなロマンのかけらも無いのだけど・・・
その男は
東洋の修行僧がかぶる様な笠をかぶり
目に丸いレンズの黒眼鏡
背中に杖とカゴを背負い
漆黒の外套を羽織っていた。
その外套には・・・大量の血液が付いていた。
そして手には赤黒く変色した血がついた竹やりが握られていた。
「!!!!!!」
私の驚いた視線に気づいた男から声をかけられた。
「どうしたの?俺に何か用かい?」
彼は自分の格好が私のような
デリケートでいたいけな少女を驚かすのに十分な格好をしているのに気づいてないようだ。
「どっ、どうって!!そのかっこ・・・」
そう言われて男ははじめて気づいたようだ
「ああ、これね。俺は大丈夫だよ。これ返り血だから。」
いたって落ち着いた様子で語る。
「別にあなたの心配をしているわけじゃ・・・」
「なにぃ?」
しまった。人殺しの機嫌を損ねるような事を言ってしまったの私?
こ、殺される!!世界一の錬金術師になりたかったのにー!!
「まさか俺を人殺しかなんかだと思っているんじゃないだろうね。」
・・・え?
「採集の時襲ってきたウォルフをこれで軽く刺しただけなのに」
そう言って彼は右手の竹やりを振って見せた。
「なぁんだ・・・ビックリした。」
「勝手に驚いたのは君だろう。なんだね君は。
いつからこのアカデミーは錬金術と関係の無い人物が出入りするようになったのか。
君は知らないみたいだけど錬金術師が採集に行く時はみんな血を見るんだよ。」
「あの・・・これでも私、錬金術師・・・の卵なんですけど。」
「あれ?前に会ったことがあったかい?俺は少なくともここで君を見たのは今日はじめてだけど?」
「だって今日入学したばっかりだもの」
それを聞いた彼はカゴに目をやって
「そうか、今日は9月1日だった・・・そうか。一ヶ月半もザールブルグから離れていたからなぁ。
血を見慣れていない連中がいるんだったら寮じゃなくて工房に持っていけば良かったな」
・・・工房?
「あっそうだ。君新入生だよね?」
さっき言ったでしょうが。自分の格好の事といい・・・もしかしてこの人・・・おバカ?
「アカデミーの事やお金の稼ぎ方とか良く分からない事があったら答えてやってもいいよ。」
・・・・・・大丈夫かしら?
格好からして怪しすぎる。黒い外套に黒眼鏡。竹で編んだ笠とカゴ、それと竹やり。
こんな全身黒と竹で覆われた人はじめて見た。
・・・あ、外套から竹の水筒を取り出した。
「ああ、クソ暑い。」
そりゃ、まだ9月の初めなのに全身黒ずくめだったら暑いでしょう。
「ごくごく・・・(←水を飲む音)
・・・で、君は・・・ええと。」
「あっ、ヴァネッサです。はじめまして。」
「・・・・・・ヴァネッサ?」
「私の名前に何か?」
「いや・・知っている人と同じ名前だからちょっとビックリしただけだ。」
「あなたの名前は?」
「ふん・・・君に名乗る名前などない・・・。
そうだな・・・。先輩とでも呼んでもらおうか。」
・・・・やっぱりこの人は"おバカ"だ。
「何か聞きたい事は無いのかい?」
「えっと・・・じゃあ。お金を稼ぐにはどうすれば良いのですか?」
「酒場で依頼を受けろ。」
「・・・レジエン石とかフェストはどこで手に入れるのですか?」
「酒場で採集場所を教えてもらえ。」
「・・・・・・ヴィラント山みたいに危険な場所へはどうすれば?」
「戦力を上げれば良い。」
「・・・・・・・・・・・・具体的にはどうすれば。」
「そりゃ酒場で冒険者を・・・
・・・なんだ、せっかく先輩が質問に答えてやっているのに何故ため息をつく。」
だめだこりゃ。アカデミーの事を聞こう。
「・・・学生寮はどこにあるのでしょうか?」
「先生に聞け。」
・・・確かに他の人に聞いた方がよさそうだ。この役立たずが。
「・・・・・・イングリド先生は今どこに?」
「・・・・・・・・・!!イングリド!!?えッ!、君ッ、あの先生の講義を受けるのか!!」
「ん?先生がどうかしましたか?」
「どうかしました?って・・・・・・。あの先生は凄い先生なんだぞ!!」
「本当ですか!!?やったー。そんな凄い先生の講義が受けれるなんて!!」
「何のんきな事いってんだ。いいか。彼女はただの人間じゃない。
錬金術の奥義を極めて不老不死になった女なんだ!!
・・・彼女が最初にザールブルグに現れたのは今から400年前の事だ。
その時は違う名前を名乗っていたらしいが・・・」
「え?そうなんですか!?」
「ああ、強力な魔力でいろいろやったらしい。
カノーネ岩が欲しいと言って地震を起こして山を作ったり
星のかけらが欲しいと言って隕石を降らせたり・・・そこは今湖になっている。
魔界にある材料が欲しいといって異次元ターミナルを作ったり・・・
知ってるか?いまシグザ―ルを徘徊している魔物は全てそこから来ているんだ・・・」
彼がそこまで話したその時!!!急に外が光った!!そして轟音が!!!
「ひっ!!」
「・・・嵐か・・・」
「そんな・・・いままで雨が降る気配なんて全くなかったのに。」
「・・・そう言えば彼女・・・イングリド先生は激しく怒った時には嵐を呼んだな。」
「・・・え。」
「そして先生を怒らせた相手に雷を落とすんだ・・・
どこかのバカが先生を怒らせたな・・・
またアカデミーの誰かが行方不明になったな。
そして発見された時には身元不明だ。黒焦げで。
お前、絶対先生を怒らせるなよ。特に目の前で調合の失敗なんてもってのほかだ。」
「ひぃーどどど、どうしよう。そんな人(?)講義を受けなきゃいけないなんて!!」
その時、後ろでドアがバタン!!と勢い良く開いた!!
そして目の前で先輩の顔色がどんどん青ざめていった。
「イッ、イングリド先生?」
先輩が後ずさりする。
カツン・・・コツン・・・後ろで一歩一歩足音がする。
私は恐ろしさのあまり振り向けなかった。
「あらマイヒルじゃないの。久しぶりね。」
斜め後ろで声がする。とても綺麗な声だ。
だがその声には強力な魔力が・・・いや怨念が込められているのか
私は振り向けない。否ッ!動けない!!!!!!!!
「こッ、これはこれはイングリドセンセ。
わ・・・わた・・・わたたたわたくしめに何かご用でありましょうか?」
マイヒル先輩がさらに後ずさりする。
・・・カツン・・・コツン・・・後ろからの足音が隣で止まる!!
いま・・・隣に・・・先生が・・・
今なら先生の横顔を見る事が出来る。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
すいません、出来ませんでした。
出来るのに出来ないなんて矛盾しているなんて言われるかもしれませんが
ご理解お願い致します。
「全く・・・コンテストをサボって行方不明になって。
帰ってきたと思ったら・・・なかなか面白い話を聞かせてもらったわ。」
「そっ、そうでしょう、そうでしょう」
「ホホホホホホホ・・・・・・」
「ヒッ、んひひひひひひ・・・・」
カツン・・・コツン・・・先生が前に出た。
「ホホホ・・・面白い話を聞かせてくれたあなたには・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
素敵なご褒美差し上げないとね!!!マイヒィィィル!!!」
瞬間!!先生の足元から物凄い量の魔力がッ!!髪の毛が一気に逆立った!!
「ひひひ・・・チィッ」
マイヒル先輩、背中の杖(竹製にあらず)を手にとって、先端を先生に向ける!!
「シュタイフブリィィィィィゼッッッッッッ!!!!!!」
先生が叫ぶ!!!
「魔力(まりき)ッ!!魔法盾(まほうたて)ッ!!」
先輩が叫ぶと同時に目の前に魔方陣が現れて彼をガードした。
ガードしたが・・・・・・
「ぎにゃあああああぁぁぁぁ・・・・」
頭上から襲ってくる雷には何の効果も無かったようだ。
建物の中なのにどうやって雷を落としたのだろう。
「さて・・・」
先生の逆立っていた髪がゆっくりと降りて行く。
先生がまとっていたオーラも消えて行く・・・・・。
「あなた、新入生よね?」
先生がこちらを振り向いた。
その顔は・・・優しさに満ちていた。
女神アルテナ様もこんな顔をしているのかしら。
「はっはい。ヴァネッサといいます。宜しくお願いします。」
「全く・・・新入生に嘘ばかり教えて・・・」
「えっ?じゃあ調合に失敗しても雷は落とさないんですね!!」
「ホホホ・・・当たり前じゃない。」
なんだ。とても良い先生じゃない。先輩嘘ばっかり。
そうだ。この機会にいろいろ聞こう。
「あの・・・先生、質問してもいいですか?ザールブルグでの生活は初めてですので・・・」
「ええ良いわよ。何でも聞いて。」
「まずは・・・そうだ、お金をためるにはどうすれば良いんですか?」
「そうねぇ。あまりお勧めできないけど酒場で依頼を受けるのが良いわね。」
「・・・はぁ、酒場ですか・・・」
すると先生、急に口調が変わって・・・
「なぜため息をつくのかしら?」
・・・・・・見た。
先輩が見たのはこの顔なのかしら。
「すっすいません!!!いや、私酒場の場所が良く分からなかったもので、
チョット途方にくれただけです!!ほら、私ザールブルグは初めてだから・・・」
「あらそう、酒場の場所は・・・」
そんな感じでいろいろ教えてもらった。
良い先生だ。怒らせさえしなければ。
いろいろ教えてもらった後、先生は自分の部屋に帰っていった。
そして・・・・・・
「うぅ・・・くそう。」
「あ・・・マイヒル・・・先輩。生きていたのですか。」
後ろでは完全に真っ黒になった先輩がいた。
「ふん。俺は不死身だ。
それに雷に当たって死ぬ人間は隕石があたって死ぬ人間よりも数が少ない。」
「それ・・・雷は滅多に当たらないと言う意味では?」
「くそう・・・グリ子め。いつか殺す。殺してバラして調合材料にしてッ!!!
産業廃棄物Dを作ってやるッ!!!!!んひひひひひッ!!!!」
・・・この人はやっぱりバカだ。しかし彼の言っている事は全部が嘘と言う事ではなさそうだ。
よし。明日早速酒場にいってみるか。
めざせ!!明日の錬金術師!!!
先輩は最後に叫んだ。
「だいたい俺が何をしたというんだ!!!!!!」

(ここでタイピング音とともに)
イングリド アカデミー生徒 ブラックリスト
NO.1 マイヒル・エメス
9月1日
新入生に悪質な嘘を流す。(チーン)


次回予告

アカデミーの問題生マイヒルを軽く下した
我らがアカデミー生徒の偉大なる先生イングリド。
だが彼はまだ反省していない。
アカデミーの生徒を騙して悪どく金を稼ぐマイヒル・・・・・・
戦え!!!イングリド!!!
今こそ雷を落とす時だ!!!
次回 イングリドのアカデミー 〜ザールブルグのグレートティーチャー〜
第1話 黒い護衛は死の案内人の巻
に・・・・・・

シュタイフブリィィィィィゼッッッッッッ


<あとがき>

ヘルミーナ同盟というHPをみつけたが
少女時代限定ということで
すこしがっかりしたマサシリョウの巻

マサシ「ついに始まったね」
マイヒル「そうだね。しかしなぜヘルミーナ様が主役じゃないのか」
マサシ「そうねぇ。実は僕イングリドには不満があったのよ。
ヘルミーナ様はちゃんと目立っているのに
イングリドはあまり活躍していない。
本家のページには遺伝子技術の悪用を防ぐために戦っているのだ!!
・・・とか書いてあるのに・・・・・・
全然戦ってないよ!!サボり過ぎだ!!」
マイヒル「いいじゃないか。ヘルミーナ様が活躍してれば。」
マサシ「良くない!!強いライバルがいてこそ主役は輝くのだ!!
たしかにヘルミーナ様はイングリドの魅力を上げるのに
貢献をしているが、イングリドはどうか?
主役のヘルミーナ様が脇役のイングリドに光を与え、
脇役のイングリドが主役のヘルミーナ様に光を与える・・・
1+1が10にも100にもなるって話やで!!」
マイヒル「(・・・アトリエ2の主役はエリーでは?)
まあその辺はアトリエ3で解消されているからいいじゃないの。」
マサシ「アトリエ3といえばリリーだが
最初俺は・・・


ヘルミーナ「どうしたのイングリド?グラビ結晶なんか持ち出して。」
イングリド「ほほほ・・・これを使って配達する荷物を軽くするのよ。」
ヘル子「ふーん。楽をする事を考えたらあなたの右に出る人はいないわね。」
グリ子「ほほほ・・・これでリリー先生も大喜びよ!!・・・それ!!」

イングリドが結晶を荷物につけるとそれは50m先に飛んでいった。

ヘル子「ふふふ・・さすがはイングリド。サービスの精神を忘れてないわ!!
私の結晶ならこうはならないわ。・・・それ!!」

ヘルミーナが結晶を荷物につけるとそれは80m先の通行人にぶち当たった。

グリ子「ほほほ・・・人の事いえないじゃない。」
ヘル子「ふ、ふん!!私の結晶の方が遠くに飛んだんだから、あなたのよりも上よ!!」
グリ子「なんですって!!だったら勝負よ!!」
ヘル子「望む所よ!!」
・・・通行人の安否は。

二人が工房内の荷物をほとんど飛ばしてしまった時・・・

二人「あ・・・先生」
リリー「・・・どうしたの?工房のこの有り様は?」
グリ子「ヘルミーナがいけないんです!!!」
ヘル子「なんですってー!!元はと言えばあなたが!!」
リリー「いいかげんにしなさーい!!
あーあ・・・ハインツさんに届けるワインが・・・
あ・・・・・・
・・・・・・・・・
ゲルハルトのために作ったアップルパイがぁぁぁぁ!!」

ごごごごごごご・・・

リリー「イングリィィィィド!!ヘルミィィィィィナ!!」
グリ子「きゃー!!リリー先生がリィリィィィィィ!!先生に!!」
ヘル子「何その奇妙な名前!!?きゃぁぁぁぁぁ!!」


・・・と言う感じの人かと思ったんだが。」
マイヒル「製作発表を聞いた時に思いついた小ネタを今更するな。」


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