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ナレーション(←小杉 ○郎太さんの声で)

ここシグザ―ル王国に錬金術という学問を根付かせた人々がいた。
錬金術・・・この国の住民は最初はこの学問に対し好意的ではなかった。
長い年月をかけて彼らの誤解を解き
王室や国中の人々の助けを借りてアカデミーを建てたのは何年前の事だろうか。
それから、ケントニスやシグザ―ルの国中から
優秀な人材を講師として集めるのにさらに月日が流れ
やっと生徒を取れるようになった時。
彼らは・・・錬金術を根付かせた彼らは信じて疑わなかった。
誰にでも使えて、誰もが幸せになれる錬金術。
目指していた理想がもうすぐ現実になると。
だが・・・・・・
アカデミー生徒の中には、他人の苦痛を喜びとする者がいた・・・
錬金術師に深い恨みがあるが故に、錬金術をもって人々に苦しみを与えようとする・・・
そんな相手に戦いを挑む人物がいた。


イングリドのアカデミー

〜ザールブルグのグレートティーチャー〜

作:マサシリョウさん


第一話 黒い護衛は死の案内人の巻(その1)

皆さんこんにちは。プロローグを見てなかった人ははじめまして。
私の名前はヴァネッサ。
ザールブルグに住んでいる錬金術師。
・・・の卵。
私の夢は世界一の錬金術師になる事。
でも今は酒場と寮を往復する毎日です。

「・・・あーあ、しばらくは新しい情報は無いみたいね。」

ここの生活も、はや3ヶ月目。
一回銀貨100枚払って得る情報はあらかた出てしまったようです。
仕方が無い。寮にこもって調合でもするかなぁ・・・。
でも手持ちの教科書に書いてあるアイテムも作成済みだし、
新しい参考書を買うお金も持っていないから
依頼のありそうなアイテムとか大量に使う各種中和剤、研磨剤を
調合しましょうか。
・・・・・・不毛だ。

「新しい採集場所。ないかなぁ。」

私がそうつぶやいた時、
タイミング良くあの男が現れた。

「ふふふ・・・ずいぶんお困りのようだね。小さいレデー。」
「・・・レディーでしょう、先輩。」

この人は1年先輩の錬金術師の卵。
自称悪の天才錬金術師。
人は彼を・・・

アカデミー生「あ。悪魔の(ような)プリンスだ。」
アカデミー生「サボりの帝王だ。」
アカデミー生「おバカ錬金術師だ。」
アカデミー生「ザールブルグの黒い竹だ。」
マイヒル「うるさいぞ貴様らぁ!!!」
みんな「うわー!!逃げろー!!」

・・・呼びたい様に呼ぶ。
マイヒル先輩は先輩風を吹かすけど
みんなあまり彼のことを尊敬してないんですよね。
もちろん私も

「・・・くそっ、いつかあいつら燃やしてやる。」
「・・・で、先輩。新しい採集場所、教えてくれるんですか?」
「むぅ、話を進めやがったな。もうちょっと遊びたかったのだが。」
「ここまで来るのにどれだけかかってるんです。こんなに長いとピコりん君死にますよ。
(しかもほとんど読み飛ばしてもいい所だし。)」
「(読み飛ばしていい所はほとんどお前の発言じゃないか。)
・・・・・・新しい採集場所ねぇ。しかし何をもって新しい採集場所とするのか。」
「それはもちろん私の知らない場所の事ですよ。」
「じゃ、その場所を教えてくれ。」
「できるわけないでしょう!!」
「それじゃぁ、君が探しているアイテムとか材料とかを教えてくれ。
もしかしたらご期待にそえる場所をお教えできるかも知れない。」
「探しているアイテムは・・・未だ見たことがないアイテムをつくりたいなぁ。」
「・・・じゃぁそれを教えてくれ。そのアイテムの材料とか。」
「・・・・・・先輩、からかってませんか?」
「・・・そうだ。君は手持ちの本を全て読破したみたいだが、
材料アイテムの入手法が判らなくて作成できないアイテムがあるだろう?
その材料の名前。それを教えてくれればいい」
「あ、なるほど。でもどうして知ってるんですか?私が本を読破した事。」
「読者の皆さんは読み飛ばしているかも知れないけど、ずっと↑に書いてある」

そういう事言うな。

「・・台詞に「新しい採集場所、ないかなぁ。」と言う台詞がある。ここから簡単に推理できるのだよ。」

そっちかい!!


・・・で、私は先輩にあるアイテムの材料が不明で作れないと言った。
すると先輩、ああそれなら知っている。
銀貨80枚でその材料がとれる場所に案内するがどうする?と聞いてきた。
・・・酒場の噂話が銀貨100枚。
採集場所教えてくれる上に護衛付きで銀貨80枚。
まぁそんな訳で・・・今私は先輩の後についていっている訳なのです。
現在位置は妖精の森奥地。葉の隙間から漏れる木漏れ日が心地良い。

「・・・先輩。何ですかそれは。」

私は先輩の後ろにくっ付いているモノを見て言った。

「台車だよ。見て判らないか?」

たしかに台車だけど・・・
・・・だけどこの台車・・・・・・
・・・まるで意思があるかのように・・・
勝手に動いているんですけど。

「あ・・・そうか。まだ君は生命を吹き込む錬金術は知らなかったのか。」

なるほど。台車に命を吹き込んでいたわけか。

「生命を・・吹き込む?・・・ちょっと不気味ね。」
「まぁ・・・たしかに。昔は死体に命を吹き込んでちょっとした労働力にした人もいたけど。」
「うっ。凄い人がいたもんですねぇ。その人は今どうなったんですか?」
「まぁその人は・・・アルテナ教の信者に殺された。自然の法に逆らう悪魔め!!てね。」
「・・・・・・よみがえった死体は。」
「・・・森の奥深くに逃げた。・・・死にたくなかったんだろうなぁ・・・・。
すぐに自警団が組織されて狩りが始まったが・・・」
「・・・始まったが?」
「結局見つからなかったそうだ。かりそめの命は大体一ヶ月しかもたない。
たぶんもういないだろうが・・・もしかしたら未だに彷徨(さまよ)っているかもな。」
「・・・可哀想ですね。」

それを聞いた先輩、訝しげに・・・

「・・・変な事を言うね君。普通なら怖がるはずなのに。」
「だって・・・こっちの都合でよみがえらされて、こっちの都合で迫害されて
一人ぼっちの生活を余儀なくされるなんてひどいじゃないですか。」
「さぁそれはどうだろうか。たった少しの間だけど冷たくて暗い世界から解放されて
暖かい世界を体験できたんだし。」
「冷たくて暗い世界って?」
「・・・土の中の世界だよ。ところで教団に殺された人は可哀想とは思わないのか?」
「殺されて当然ですよ。」
「ひどいなぁ。ま、近くにそんな人が住んでいたら俺だって怖いと思うな。
けどね・・・その人は何でわざわざ死体に命を吹き込んだのか?」
「労働力を得るためでしょう?」
「だから、生きているほうきとか妖精さん人形とか使えば良いんだよ。」
「・・・なにそれ?」
「あ・・・そうか、知らないんだったな。名前でどんなアイテムか想像できる?
妖精さん雇った事はあるかい?」

うーん。
ほうきの方は分かる。きっとほうきに命を吹き込んだ物だろう。
妖精さんも雇った事はある。と言うか現在も雇用中だ。
けど・・・妖精さん人形?妖精さんの人形?
それとこの話に何の関係が?

「お?わからないようだな。
じゃあ質問するが、錬金術師をやっていて、欲しい労働力といえば?」
「簡単な質問ですね。妖精さんを雇っていればすぐにわか・・・・・・
!!!!
えっ、そんな便利なものがあったんですか!?」

勝手に部屋の掃除をしてくれたり、勝手に採集や調合をしてくれるとでも言うのだろうか?
調べてみたいけど図書館は今工事中だったなぁ・・・

「はい、ここでもう一度質問。俺が疑問に思った事とは?」
「そうか。普通の労働なら、教団に迫害されるという危険を犯してまで
あんな事をする必要がのあるか・・・死体に命を吹き込む事がどれほど難しいか
わかりませんが・・・それほどの実力があるなら、ほうきや人形に命を吹き込んだほうが
簡単そうですし。」
「そう言う事。」
「一体何のために・・・」
「多分、どうしても死んで欲しくなかった人だったんだろうな。恋人とか。
・・・もしかしたら夜の労働の為とか。んひひひひひ・・・」


「・・・・・・殺されて当然です。先輩も。」
「ひどいなぁ。(笑)
あっ、そうそう。↑のアイテム名をクリックするとピコりんのデータベースに」
「・・・飛びません。ところで先輩。」(面白いから飛ばしてみたよ。by ピコりん
「何?」
「どうして台車に乗らないんですか?勝手に動くのだからその方が楽なのでは?」
「いや、これは俺の後ろをついてくるようにしているから俺が案内しないとダメなのだ。」
「じゃあ私は乗るとしますか。」
「あ。ずるいぞ貴様。」
「ふぅー楽チン楽チン。勝手に採集先に向かう様にすれば先輩も楽なのに。」
「・・・それじゃあ初めて行く場所につれて行けないじゃないか。
まて・・・・・・・・・・・・・・・・・・この気配は・・・・・・・・・・・・」

そう言うと、先輩は竹やりを構えてこう言った。

「歩く調合材料のおでましと言う奴だな。」

森の間の茂みから一匹の狼が私達の目前に現れた!

「ヤクトウォルフ!!でも一匹だけなら私だけでもなんとか・・・」
「バカか貴様ッ!!」

私が目の前の敵に気を取られていると、横から
ガサッという音がした。

「!!!!!」

私が音のした方向を振り返ると、
・・・・・・もう一匹潜んでいたのか。
そしてそいつは今まさに私の首筋に牙を立てようとしている所だった。

「いやぁぁぁぁぁー!!」

よけられない。もうだめだ。

「ヴァネッサ!!」

その声が聞こえた直後、牙を立ててきた狼の首に竹が生えた。

「・・・・敵を甘く見すぎだぞ。それもお前よりも遥かに強い相手に。」
「先輩!!」

先輩は竹やりを投げて、狼をしとめた。
すると突然、目の前の狼が遠吠えをした。
その合図に隠れていた狼が姿を表す。その数は・・・

「1、2、・・・全部で5匹!!」
「ちっ・・・やりを手放したのは痛かったな。」

武器を持っていないのを知ってか、狼は先輩に集中攻撃をしかけた。
先輩はそれをかわしながら・・・

「せっかく・・・」

背中の杖に手をかけた

「牙とか毛皮とか手に入ると思ったのにな!!」

そして、杖の先端を敵の群れに向ける。

「魔力(まりき)ッ!! 地獄の業火(じごくのごうか)ッ」

杖からでる炎が5匹の狼を包む。
炎が消えた頃には・・・

「ほら見ろ・・全部消し炭になっちまった。」

そしてなぜか、元は狼だった物を回収し始めた。

「・・・そんなもんどうするんですか?」
「まぁ、こんなのでも材料になるらしいからな。」
「ふーん。」
「ところでヴァネッサ君。君はヤクトウォルフのことを知っているみたいだが・・・
実物を見たことは無かったのか?」
「ええ、普通のウォルフとは色が違っていたからそうじゃないかとおもったんです。
でも良くわかりましたね。」
「・・・ヤクトウォルフは集団で狩りをする。一匹だけというのはあり得ないんだよ。
一匹が注意をひきつけ、ほかの奴らが死角から獲物を襲う。」
「・・・そうかアレは囮(おとり)役だったのか。」
「そう。全く・・・畜生の策にまんまとはまりやがって。
何が「一匹だけなら私だけでもなんとか・・・」だ。
おかげでこの一匹以外は全部炭になっちまったじゃないか。」

そう言って、先輩は外套からナイフを取り出して
最初にしとめたやつから牙と毛皮を剥ぎはじめた。

「おい、手伝えよ。分け前が欲しくないのか?」
「えっ!!・・・いいです!!先輩に全部あげます!!」

詳しくは語りませんが、結構グロテスクなシーンでした。
腹部に刃を突き立てた時に、腹圧で腸がまるで生きているかのように・・・
とか。そう言うわけで私は遠慮させていただきました。

「さてと、出発するとするか。奴ら血の匂いに敏感だからな。」
「え・・・と言う事は・・・」

解体にいそしんでいた先輩はすっかり血だらけになっていた。
予想どうり目的地につくまでの間、
私達は狼の群れに襲われつづけたのだった。


「ここだ。」
「やっと着いたー!!」

ザールブルグを出発して8日。
妖精の森の奥に入り、
ヤクトウォルフが大量に生息する危険地帯を抜け
遂にたどり着いたこの場所とは?

「・・・ここはなんと言う場所ですか?」
「ここはシグサール王国の極東にある採集場所。
その名も"最果ての地"だ。」
「あった!!これが日影石!!これで銀がつくれるわ!!
あ!!星のかけらもある!!」
「・・・ねえ、ひとの話聞いてる?」

そう言う先輩もすでに
台車に星のかけらやら無価値な石やら見たことも無いような石やら
どんどん放り込んでいる。

「あれ?その石は?なんだかフワフワ浮いていますね。石なのに。」
「この石はグラビ石だ。」
「いや、名前だけ言われても・・・」
「見てのとうりの特性をもっている・・・っと言ってもなぁ。
そうだ、ためしに身につけてみな。」

そういってグラビ石を投げてよこす。
予想よりも上の方に飛んできたのでキャッチするのに手間取った。
身につけてみると・・・

「ん??なんだか体が軽くなって・・・きたような・・・??」
「そう、不思議な事にそれ自体だけでなく、石の回りにある物体
の重さまで軽くする特性もあるらしい。これを使えば色々面白い物が出来るのだ。」
「ふーん。」

私もグラビ石を採集することにした。
数日間滞在して・・・

「それじゃあカゴがいっぱいになったので、帰りましょうか。」
「あ・・・そうかい。じゃあ気をつけて帰れよ一人で。」

・・・え?

「・・・一人で?」
「一人で。」
「あの狼がいっぱい居る所を一人で?」
「一人で。」(リピート)

えーと・・・
私よりも遥かに強い狼が大量に徘徊する危険地帯を
私一人で抜けろと?
つまり・・・

「私に死ねと?」
「ま、運が良ければザールブルグでまた会おう。
俺はまだ採集作業があるので。それでは・・・」
「ゲマイナー調で言うな!!
先輩ー。銀貨80枚受け取ったでしょう?
ちゃんと仕事してくださいよ!!」
「あのねぇ君。僕は、銀貨80枚で、ここに案内すると、
言ったはずだよヴァネッサ君?」

あ。

「秘密の場所に案内した上に、護衛してあげて
台車にも乗せてあげて・・・銀貨160枚は貰わなきゃ割が合わんよ。
それをこのサービス価格でやっているんだから
我ながらユーザーフレンドリーにも程があるね!!
これからも"まごころのマイヒル商会"をご贔屓(ひいき)に。」
「どこが"まごころ"だー!
それに今一人で帰ったら2度とお客にはなれませんよ!!」
「・・・だったらもう一度俺を雇うんだな。」

・・・ぬう。嫌な予感が。

「・・・銀貨80枚ですよね?」
「いや。


銀貨400枚だ。」

参考資料
ウルリッヒの初期報酬:銀貨350枚
エンデルクの初期報酬:銀貨400枚




「わっ。ず、ずるい」
「嫌なら一人で帰るんだな。」
「そんなお金があったら参考書を買ってますよ!!」
「うわっ、貧乏だねー。苦学生だねぇ。
俺はそう言うのが大好きだ。
よし、このマイヒル、悪の天才錬金術師だが苦学生には優しい男前!!
助けてやるぜ!!貧乏人!!」
「えっ、じゃあ無料にしてくれるんですか?」
「いや。金で払えない分は
まず、君のアイテムを半分貰うということで手を打とう。
後は体で払ってもらおうか。
んひひひひひひ・・・・・・・」

いやらしい笑みを浮かべる先輩。

「かっ、体って・・・えー!!?
そっ、それだけは嫌っ!!お嫁に行けなくなる!!」
「お嫁にって・・・肉体労働をしただけで?」
「夜の肉体労働は嫌ぁぁぁー!!」
「いや、主に昼間にやってもらうのだが。」
「!!昼間っから?せっ、先輩の不潔!!」
「ん・・・不潔・・・?
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
こら待て!!違うぞ!!君はなんか勘違いをしてる!!
大体それだったらこの作品HPに載せられないだろ!!」
「うう(グスン)。で、でも『Eの秘密』で・・・」(←涙声)
「言うなよ!!!・・・・・・
・・・・・・体で払うと言うのは、俺の採集の手伝いと
採集をしたアイテムの一部・・・これは君のアイテムの半分だが・・・
その運搬の手伝いだよ。・・・で、どうする?断るかい?」

凄い不平等条約だが・・・

「うう・・・仕方ありません」
「やったぜ!!
いやー銀貨80枚貰えた上にお手伝いまでしてくれるなんて
ラッキー!!」

・・・・・・これが狙いだったのか。
こいつ相当な悪(ワル)だわ。

「うわーん。せめてもう一人と一緒に来れば何とか帰れたのに!
あとで銀貨100枚でここの情報を売ろうと思って
一人で付いて来たのは間違いだったー!!」
「・・・こいつ相当な悪(ワル)だぜ。」

お前が言うな!!

「だがしかーし!!ここにはあの憎きイングリドはいない。
助けは期待しないことだな!!
さあ、ごちゃごちゃ言わずに仕事をするのだ!!」

先輩がそう言った
まさにその時!!

「・・・その必要はないわ!!」

聞き覚えのある声が。

「そッその声はッ!!」

「ほほほほ・・・」

「どこだッ、どこにいる!?」

「ほほほほ・・・ここよ。」

「・・・上かッ!!!」


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