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イングリドのアカデミー

〜ザールブルグのグレートティーチャー〜

作:マサシリョウさん


第一話 黒い護衛は死の案内人の巻(その2)

そう。上ではあの人がほうきにまたがって滞空していたのだ!!

「イッ、イングリドッ!!・・・・先生。」

先輩はすでに冷や汗をかいている。
先生は、地面に飛び降りた。

「いやーこ、これはこれはイングリドセンセ。
いったいどうしてこのような所へ?」

遅れて落ちてきたほうきを見事キャッチして答える。

「星のかけらを切らしてしまってね。
思いきって少し遠出をしたのよ。
・・・ところでマイヒル。」

先生の口調が変わる。

「また面白いことを始めた様ねぇ。」

先輩は後ずさりしながらこう言った。

「あ、あのう・・・例のごとく話を聞いていたみたいですが
これはちゃんとした取引であって・・・」
「わーん。先生ー!!
私・・先輩に無理やり・・・」

私は先生に泣きすがった。
すると先生は慈愛に満ちた顔でこう言った。

「良いのよ何も言わなくて。辛かったでしょう・・・可哀想に・・・」
「こらー!!汚いぞヴァネッサ!!
それに他の人が聞いたら誤解されるような会話をするなー!!」
「・・・ヴァネッサ。このほうき、預かってくれないかしら。」

先生は私にほうきを預け、杖を握り締めた。

「このおバカを懲らしめないといけないからね。」

「・・・チッ。力で正義を示す・・・か。大好きだねぇ。そう言う考えは。」

先輩、スタッっと後ろに飛んで間合いを開けた。
そして、黒メガネを左手の人差し指で上げて、右手は背中の杖に手をかける。

「ほほほほほほ・・・・・・覚悟は出来ている様ね。
マイヒィィィィル!!!」

足元からオーラが一気にに湧き上がる!!

「覚悟?たしかに貴方と戦うならば死を覚悟せねばならないでしょうね。」

なぜか落ち着いた様子で語る先輩。
その間に先生はすでに必殺の気合をため終えている。

「でるわ!!先生の必殺技!!」
「地獄で補習を受けなさい!!(←どーいう決め台詞だ。)
シュタイフブリィィィィ・・・・・・・・ぐッ!!」

先生が必殺技を放とうとしたまさにその時!!
信じられない事が起こった!!

「おお・・・主人である俺の危機を救う為に自ら敵に向かうとは!!
かっ感動だッ!!貴様こそ忠臣の名にふさわしいぞ!!
生きている台車よ!!」

そう。生きている台車が先生に体当たりを食らわせたのだ!!

「ゴッ・・・ゴハッ・・・」

完全に不意を突かれた先生は思いっきりダメージを受けた様だ。
先輩は・・・

「見える・・・見えるぞぉぉぉ。未来では貴様の功績をたたえた像が建ち
その周りで恋人達が待ち合わせをしているのを・・・」

戦闘中に自分の世界で感動の涙を流している。

「ゴフッ・・・そんなバカな!!生きている台車にそんな効果は無いはず・・・
これは一体・・・・」
「え・・・でも見た目は台車じゃないですか!!」
「いいえ・・・あれはただの台車じゃ・・・いや、ただの生きている台車じゃないわ!!」

先生と私がそんな会話をしていると。

「んひひひひひひ・・・・・・さすがはイングリドセンセ。
いかにもこれは生きている台車ではない。
生きている台車よ!!!今こそ真の姿を見せる時ッ!!
錬金変形ッ!!生きている戦車アアアアアッ!!!!」

先輩がそう叫ぶと
台車はガコンガコンと音を立て
見る見るうちに戦車に変形した!!
まるでタロットカードの絵から抜け出したかのような戦車に。

「んひひひひひ・・・・見たまえ。
ドリル付きだから鉱山採掘もトンネル掘りもできるんだぞー。
・・・ていうか元々これ戦闘用じゃないけど。」

「・・・マイヒル。武器に命を吹き込むのは校則違反だと言うことを知っての狼藉(ろうぜき)かしら?」

「違うね。武器に命を吹き込んだんじゃない。命を吹き込んだ物を武器にしてるんだ。
何の問題も無いね。」

「先輩!!先生を殺す気ですか!?」

「いや・・・俺はセンセを殺さないよ?ただ生きている戦車はどうするかな。」

「だったらはやく止めてください!!」

「それは出来ない。だってこいつは俺の命を守る為に動いているのだ。
センセが俺に危害を加えようとする限り動き続けるよ。
まぁ、その時は俺も応戦するがね。自衛のために。
・・・イングリドセンセ。僕は貴方とはまだ戦いたくない。命が惜しいからね。
今ここで戦えば2対1だ。苦戦しますよ。だから大人しくヴァネッサ君を渡して下さい。」

「ふーん・・・だったら・・・先に戦車を破壊すればあなたへの障害は無くなると言うわけね。」

「交渉決裂か・・・・・・フン。やってみるがいい。
戦車にも自分の命を守る様にさせてあるから破壊に骨が折れるぞ。
行け!!生きている戦車よッ!!貴様の初陣(ういじん) このマイヒルがしっかり見届けてやるッ!!」

先輩がそう言うと戦車がドリルを回しながら先生に突っ込んできた!!
凄いスピードだ。本当に採集アイテムを載せているのかしら。

「あら。一人(?)に任せる気?・・・ずいぶんと余裕ね。」

先生、戦車を軽くかわす。

「ふふふ・・・もともとこれは対強力モンスター戦用に開発した
錬金生命体の一種。貴様なら十分なデータが取れる。
余裕かどうかは戦って判断したまえ。」

そんな事を言っているうちに先生はすでに戦車の背後に回っている!!

「先生!!今です!!必殺・・・!!」

「甘い。」

!!戦車の後ろから矢が!!

「くっ!!」

先生の足に命中した!!

「んひひひひひ・・・これでもう避けられませんねぇ。イングリドセンセ。」

誰も乗っていない戦車がクルリと先生の方に向いた。

「シュ・・・シュタイ・・・」

「無駄(ムダ)だッ!!矢には麻痺毒が塗ってある!!もはや魔法は使えん!!
ウリィィィィィィィィィィヤァァァァァァァァァァ!!!
ひき潰されよォォォォォォォォォォォォ!!!」

ドリルを回転させながら先生に猛スピードで迫る戦車!!!!!!

・・・このままじゃ先生が死んでしまう!!!
自分は何も出来ないの!!?
自分を助けようとしてくれた先生に!!
何か・・・何か・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
!!
そうだ!!!

「先生!!これを受け取って!!」

「ムダだ!!もはやイングリドはチェスや将棋で言うチェックメイトだ!!」

「先輩・・・それはどうでしょうか?
ほら・・・今先生の手の中にある物を見てもまだそう思いますか?」

「!!あッ、あれはッ!!!」


「受け取ったわヴァネッサ・・・・・・貴方が渡してくれた」

手の中にある物が先生を急上昇させる!!!!
戦車はむなしく何も無い所へ体当たりした・・・・・・

「この空とぶほうきを!!」

先生は空中にみごと回避した。そして・・・

「しまった!!こいつは空中戦を想定していない!!

・・・ゲェェェェェェェェェ!!
あッ・・・あれは・・・
マヒロン!!」

先輩はなぜか先生の手の中にある小ビンをみて青ざめた。

「ほほほ・・・そう。この薬は麻痺を治す薬・・・もうわかるわね。
シュタイフブリィィィィィゼッ!!!」

先生が必殺の呪文を唱えると
神の鉄槌(てっつい)が戦車に振り下ろされた!!
ズドオオオオオオン!!!
轟音(ごうおん)と閃光(せんこう)が
世界を止める!!






・・・そして時は動き出す。

「あ・・・ああッ!!お・・・俺の!!
俺のかわいい錬金生命体ちゃんがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「ほほほ・・・次はあなたの番ね。」

先生が死の宣告をした。
だが先輩はそれに反応せず、
戦車の残骸へとまるで抜け殻のような様子で歩いて行った。

そして焦げた台車に話しかけた。

「ああぁぁぁぁ・・・戦車・・・」

がらッ・・・(ま・・・マイヒル様・・・)
(↑戦車が崩れて行く音)

「ああぁぁぁ・・・すまない・・・俺が一人でイングリドに向かわせたばっかりに・・・」

ガラガラ(←戦車が崩れて行く音)・・・・・・・・・・・・・・・
(いいんです・・・マイヒル様は私を信用してくださった。
それなのに期待に応えられなかった私のふがいなさ・・・。
なのにそれを責めないでいてくださるあなた様のやさしさ・・・・・・
              私はあなたにお仕えできて幸せでした。)

「ち・・・ちがう・・・俺は怖かったんだ!!
イングリドという恐ろしいバケモノと戦うのが!!!
だから卑怯にもお前一人に怖い仕事をさせて
自分は安全な所へにげたんだ!!
正々堂々と二対一で戦えばこんな事にはならなかったッ!!!
だから死ぬなァァァ!!!!!」

ガラガラ(←戦車が崩れて行く音)・・・・・・・・・・・・・・・
(ご自分を責めないで下さいマイヒル様。
それに私は死ぬんじゃありません。
ただ台車に戻るだけ・・・採集したアイテムも私が守りました。
仕事はまだ残っているのに手伝えないのが心残りですが・・・
少ししたらまた会えます。)

「ぶぎゃあああああああああああああああああ
逝くな戦車あああああ!!
おれを一人にしないでくれええええええ!!!」

独り言を叫びながら大粒の・・・
いや。滝のように涙を流して号泣する先輩。

「・・・・・・誰がバケモノですって・・・?」

先生が髪の毛を逆立てて・・・

「シュタイフブリィィィィィゼ!!!」

とどめをさした。


がらがらがらがら・・・・・・

「先生、おかげで助かりました。ありがとうございます。」

がらがらがらがら・・・・・・

「いいのよ。弱い者や困っているひとを助けるのも、錬金術士の仕事なのだから。」

がらがらがらがら・・・・・・

「あーあ、これからあのウォルフがたくさんいる危険地帯を通ると思うと・・・」

がらがらがらがら・・・・・・

「大丈夫よ。ストルデル川沿いのルートを通れば日数はかかるけど
強いモンスターがいないから安全に帰れるわ。」

がらがらがらがら・・・・・・

「あ・・・ということは。わざと強いモンスターが出没するルートを選んだなー先輩。
ひどーい。・・・・・・それにしても良く揺れますねこの台車。ねぇ先生。」

「そうね。作った人の顔を見てみたいもんだわ。」

「だったら降りろ!!重いんだよおまえらぁ!!」

私と先生は先輩が引く台車に乗って
悠々とザールブルグへの帰路についていた。

「でもこの中のアイテム・・・どうして無事だったのかしら・・・・・・
私の雷を直撃して無事だなんて・・・」

「・・・それ、俺のんだから触らないで下さい。」

「・・・何言っているの。これはモンスターのドロップアイテム扱いだから全部私のものでしょ。
・・・まぁ可哀想だから半分はあなたにあげるわ。」

「ぶぎゃあああああああああああ!!
人をモンスター扱いの上にアイテム半分没収!!?」

「わー先生やさしー。」

私は先生のやさしさに感動した。
この人が居なかったら私は大損するところだったわ。
銀貨480枚はらってわかる事は
最果ての地の場所とその近道ルート。
生きているほうきと妖精さん人形の知っている属性が1になった事
消し炭とグラビ石というアイテムの事が新しくわかっただけだ。


ナレーション

錬金術をもって人々に苦しみを与えようとする錬金術師が居た・・・
イングリドがその男に敗北した時、錬金術に対する偏見はよみがえる。
マルローネが追試を言い渡された時からさかのぼる事7年。
アカデミー黎明(れいめい)期・・・
イングリドと邪悪な錬金術師との戦いは、始まったばかりなのだ!!

「・・・畜生ッ!!どうして俺がこんな目にッ!!!
俺が一体何をしたと言うんだぁぁぁぁぁぁー!!!」

(ここでタイピング音とともに)
イングリド アカデミー生徒 ブラックリスト
NO.1 マイヒル・エメス
11月15日
  新入生をだまして強制労働をさせようとする。
先生に人工モンスターをけしかける。〈チーン)


次回予告

アカデミーの問題生マイヒルを軽く下した
我らが偉大なる先生イングリド。
・・・シグザール王国には産業廃棄物を捨てる場所があった。
そこへごみを捨てに行った騎士隊が行方不明になってしまった・・・・・・
噂では正体不明の怪物が徘徊し、すでに彼らは死んでいるという。
一体そこではなにが・・・?錬金術の廃棄物を捨てる場所だと言う事で、
強引にも調査に駆り出されたイングリドがそこで見たものとは!!?
戦え!!!イングリド!!!
今こそ雷を落とす時だ!!!
次回 イングリドのアカデミー 〜ザールブルグのグレートティーチャー〜
第2話 人形は発条羊〈ゼンマイひつじ)の夢を見るか?の巻に・・・・・

シュタイフブリィィィィィゼッッッッッッ!!!!!!


<あとがき>

マイヒルがイングリドを敵視しているのは
実はマイヒルはヘルミーナの事が好きなのに
ヘルミーナはイングリドの事ばかり見ているから
イングリドのことが嫌いと言う設定で・・・の巻。

マイヒル「何なんだコレ(↑)は?」
ヴァネッサ「さあ・・・今思いついた設定だそうですよ」
マイヒル「・・・また適当な事を。」
ヴァネッサ「まぁそんな事より第一話の解説でもしましょう」
マイヒル「そうだけど・・・はぁ、それにしてもまた長い話を書いてくれたなぁ」
ヴァネッサ「そうですね・・気づいた人も居るかも知れませんが、
今回のお話はマサシリョウのリクエスト小説「鋼鉄の甲虫」
のプロットを元にした小説なんですよ。」
マイヒル「生きている戦車とか俺の名前に名残はあるね。」
ヴァネッサ「生きている戦車はプロットでは生きているカタパルトでした。
マイヒルと言う名前は実は名探偵クライス クライス空白の時間
のどこかに出てきます。実は私達は99年の6月ぐらいから
マサシリョウの頭の中に居たんですよ」
マイヒル「余計な事まで言うな!!ちなみに我々が登場したのには
マサシリョウが登場人物に、死体や人間、生命や魂を材料とした
錬金術をさせたいと思ったからだそうだ。だがガストオリジナル
キャラにそれをさせるのはさすがにまずい。それで汚れ役専用キャラを
作ったと言うわけ。」
ヴァネッサ「結局今回は出来ませんでしたね。」
マイヒル「いや・・・この中の一つは次回に・・・んひひひひひひ・・・。」

おまけ
今回のNGシーン

「ほほほ・・・そう。この薬は麻痺を治す薬・・・もうわかるわね。
シュタイフブリィィィィィゼッ!!!」

神の鉄槌がイングリドに振り下ろされる!!

「・・・バカが。雷は高い所に落ちると言う事を忘れていたようだな。」


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