家庭の窓
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1893年にアメリカで出版された「幼稚園の歌物語」に「グッドモーニング・ツー・オール」(みなさん,おはようございます)という曲が掲載されました。幼稚園で朝に子どもたちを迎えるときの歌でした。ところが,1924年,ある出版社がメロディはそのままに,歌詞を無断で変更して出版しました。それが,「ハッピー・バースデー・ツー・ユー」です。ブロードウェイのミュージカルにも使われて一挙に皆に知られるようになりました。作詞作曲した姉妹が盗作だとして訴訟を起こして認められました。今では世界中でお祝いの歌として広まっていますが,誕生を祝う歌は盗作だったのです。
私たちの身の回りにあるものはすべて,誰かが創作したり発見したものです。箸を作った人がいます。なまこを最初に食べた人がいます。毒キノコにあたった人がいます。思想や概念も誰かが創造したはずです。多くの人がいいものであると認め受け継がれ広まっていく途上で,使う人の思惑が働いて意図的あるいは無意図的に改変がなされます。よりよいものになればめでたいことですが,時にはえせものもできることがあります。
経済の世界では貨幣という交換手段はとても有用なものでした。ところで,お金に色はないといった状況が起こります。裏金といった使い方をする人も居るようです。よいものが,使う人によってわるいものにすり替わってしまいます。皆の役に立っている電話やメールが、悪意のある人によって邪な道具に変質させられてしまいます。悪知恵という知恵の変造をしてしまうことが起こるのは,創作されたものの不完全さとは無関係です。人の思惑が不完全なのです。
都市生活はこのようにありたいという願いにむけて創造された形に整えられています。ただ一切が機械的に定まった動きというわけではありません。そこには人の判断・選択が入り込む個所が含まれています。そこで想定されていない間違いが入り込んでいきます。若い頃の社会と今の社会では豊かさがまるで違っていますが,気の休まり具合という面では形が変わっていますが大してよくなっているとは思われません。世間が大きくなったからといって,人の思惑は豊かになっているわけではないのかもしれません。
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