家庭の窓
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レ・ミゼラブルで知られるフランスの文豪であるビクトル・ユゴーは長編小説を残してくれていますが,世界一短い手紙を書いていることも知られています。
1862年,レ・ミゼラブルを上梓して1か月目,この新作の評判が気になったユゴーは,ロンドンの出版社に宛てて次のような手紙を出しました。「?」。すなわち,「評判は?」ということです。これ以上短い手紙はあり得ません。
これに対して,出版社は折り返し返事をよこしました。その返事が傑作で「!」というものです。すなわち,「すばらしい!」。出版社にもユーモアを解する人がいました。このやりとり,優れたユーモアはさらに優れたユーモアを引き出すという見本です。
作者と出版社は,共通した願いを持ち合わせているので,直結した問答が成り立ちます。親子学習の機会があるときに,問題に手こずっている子どもに「どこが分からないか?」と問いかけて,「どこが分からないか分からない」という返事にお手上げになる場面が想像されます。先生と生徒のように共通した課題に取り組んでいるのなら,先生には分からない箇所は見当がつきます。
いきなり子どもから問われる相談事は,何が問題なのか,受けている方は分からないものです。相談する子どもも何が問題なのか分からないから手の付けようがなくて相談しているのでしょう。まずは何をしようとしているのかの出発点に一緒に立ってみて,一つずつ順を追って話を進めていくと,行き止まりに突き当たります。行き止まりのところに手を付けるべき問題があります。相談を受けたときは,最初に出会うはずの問題を見つけるようにします。あれもこれもと勝手に先走りをして複数の問題を順不同で想定するから困ってしまうのです。
仲間内では一言で通じ合えますが,付き合いが薄いと一言伝えても,何のことか通じません。文章で丁寧に説明する必要があります。LINEのやりとりでは言葉を交わして確かめ合う手続きがあって,分かり合うことに至ります。特に気持ちを表す言葉は気をつけないと,思いもしない誤解を生みます。「あり得ない」という言葉で感心した驚きを表すつもりでも,聞く方は非難されていると受け取るかもしれません。そういう擦れ違いを経験していると,話すことが恐くなります。若い人の話すことが苦手という傾向が増えているようで,気になっています。
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