家庭の窓
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ドアを開け放たれると,隙間風が足元をひやりとさせます。それを心地よいと感じるかどうかは,季節によって逆転します。冬は寒いと感じて,ドアを閉め切ります。和風の建物はきっちりと閉鎖されていないのでしょう,風の通り道があります。冬の寒さは衣類で防ぐことができますが,夏の暑さは裸になってもしのげません。風の助けが必要だという昔からの知恵です。
商業社会では隙間は良くも悪くも意識されます。業務上の隙間は損失につながるので極力対策が取られます。一方で,新しい業務を興そうとするときは,産業社会全体の隙間をねらうことになります。それが独占という優位性を獲得することになるからです。
隙間には,守るときは隙間をふさぎ,攻めるときは隙間を広げるという二面性があります。すきま風のように,利用する立場によって価値が逆転します。
個人の暮らしについても,隙は意味を持ちます。あまりよいものではなくて,隙を突かれるというリスクになります。戦略として隙を見せるということもありますが,普通は隙をなくすようにしているはずです。
ところで,人間関係の面から見ると,隙のない人というのは,いささか付き合いにくいということになるから不思議です。隙を見せない人は守りが堅いということ,ひいてはこちらに対して気を許していないというメッセージを伝えてくるからです。
気の置けないつきあいというものがあります。それはお互いに隙だらけであり,同時にその隙をお互いが了解の上で認め合っていることです。例えば,夫婦関係において,それを言ってはお終いという禁句があります。お互いの隙を突くような言動は,気を遣う関係に格下げすることになるので,夫婦関係は破綻します。ベターハーフという関係はお互いの隙間を補完しあう関係でもあります。夫婦はあばたもえくぼから始まっているのです。
傍にいると安心する関係,その和やかな関係は隙を許容し合う関係です。ただし,それはわがままを許すということとは違います。それは隙ではないので,親しき仲にも礼儀ありという気配りが必要になります。
人との関係に隙間風が吹くことがあります。人が抱えている隙をお互いに意識するようになったら,そこに冷たい感情が忍び込みます。気を許せない関係に離れなくてはなりません。全く別次元のことですが,直径3cmの金属棒を直径3cmの穴に通すことができるでしょうか。できません。ごくわずかの隙間がないと入りません。お互いに譲りあうという隙間が和やかな関係を産むことができます。
隙を見せてはいけないという緊張感を持たなくてよい関係があることは,とても楽しいことです。そのためには,隙を突くという嫌らしさを封印しておくことです。
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