《しあわせは 智慧の不足を 自覚して》

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 新聞の書評欄に"「詐欺師たちの殺し文句」比名子暁著"が取り上げられていました。本は現物を見て買うので,人の感想や評には全く関心がなく,普段はほとんど書評欄は素通りします。切り抜く情報を探していて,どこに目がとまったのか定かではないので,たまたま目にしたというしかありません。
 マルチまがい商法や金のペーパー商法,ネズミ講を解説した書籍のようです。詐欺師たちの手口としていくつか紹介されていました。「他人から物品を受け取るとお返ししなければと人は考える」「好意を示してくれた人には悪意は持たない」「公的な権威に人はつい従ってしまう」「ここだけの話,に人は弱い」。著者が言う詐欺師の法則です。詐欺で貴重な老後の資金を失う高齢者が多い中,「世の中にうまい話はない」と頭では分かっていても,つい信じてしまう心の弱さを詐欺師たちは突いてくる,と結ばれていました。
 自分は大丈夫! 無意識に確信をするのが人のようです。意識の外のことであれば,そのように推測するしかありません。自分のことは自分がいちばんよく知っています。その思い込みが,自分につながってくる物事にまで拡大されて,直接に見聞きしたことの心地よさのチェックによって,受け入れてしまうのでしょう。もしも不快なことであれば,不合理性という理由付けをして排除するはずです。また,世間情報であれば,自分からは切り離されたこととして,冷静な判断が主に機能します。
 飲酒運転をしてしまうという他者の立場からの言い回しも,自分のことは自分が分かるという本人からは,飲酒運転はしていない,酔ってはいないという思い込みに置き換えられています。飲酒運転はしてはいけないという知識にワザワザ逆らう勇気はないはずです。また,宝くじを買うのも,ほかの人は確率的に当たりっこないと考え,他方で自分はもしかしたら当たるかもしれないと思っています。人に厳しく自分に甘いのは,人の常です。
 自分を大切にという個性を尊重する傾向によって,程度の違いはありますが,唯我独尊の道に走り込んでいます。その副作用として,自分の判断に疑いを差し挟むことをしなくなります。もしかしたら自分の判断は間違っているかもしれない,そういう不十分さを自分の中に抱え込むことができたら,見聞きしたことを慎重に検分する機能が働くはずです。自分には見えない部分があるはずという謙虚さが,理性を呼び込む端緒になります。

ご愛読いただきありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。
よき新年を迎えられますようにお祈りいたします。

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(2011年12月25日号:No.613)