《気配りに どちらが大事 妻が問う》

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 連れ合いが行政のある委員会の委員に委嘱され,会議が開かれることになりました。生憎その時間帯は講義の日で,連れ合いを送り届けることができません。コミュニティバスが巡回していますが,時間が一致しないので役に立ちません。自宅から会場の役場までを結ぶバス路線がないので,足の便が整いません。タクシーを利用するしかないという状況でした。
 ところで,先日ボランティア仲間の定例会があり,歓談している中で,ある仲間が連れ合いと同じ委員会のメンバーであることが分かりました。連れ合いも出席するのでよろしくという話をしていると,連れ合いを連れて行ってくれるという展開になりました。夫婦連れで付き合っているボランティア仲間たちなので,気安くお願いをしておきました。
 ある日のことです。連れ合いをクリニックから連れて帰って,そのまま小用で直行することがありました。自宅前で連れ合いを下ろすのですが,連れ合いが乗っている助手席側が家の反対側になりました。そのときに、連れ合いが言いました。「○○さんは,ちゃんと家の前で降りられるように車を止めてくれた」というのです。反対向きに走ってくるためには,ぐるっと路地道を回らなければならないという状況があります。それだけの手間を掛けてくれたということです。それに引き替え,あなたは・・・,という軽いけん制です。
 よその奥さんに対しては、それくらいの気配りをすることぐらいは承知していると答えると,それが気に入らない風です。自分は大事にされていないということになるからです。機嫌を損ねるほどではないにしても,その現実を認めることは面白くないということでしょう。礼儀としての気配りでしかないのですが,分かっていても気分が許さないという微妙なざわめきです。親しき仲にも礼儀あり。その言葉が示す人間関係の知識を,連れ合いに適用すべきなのか,そういう問題意識は想定外でした。
 親しき仲というのは,まだ他人の間柄です。連れ合いは、親しき仲ではなく,一心同体という認識なのです。連れ合いをことさら大事にという意識は,自分に対して気配りをするようなものであり,思いもよらないことです。最大限のおもてなしを必要とするお客様であるなら,それは自他の断絶を明確にすることになります。
 連れ合いとの軽い冗談話をネタにして,夫婦の間合いについて考えてみました。

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(2013年11月03日号:No.710)