9月の二百十日や二百二十日が台風がやってくる目安で,10月になると台風はないという経験知を,年配者が語ります。データで検証しているわけではないのですが,「二百十日」という言葉があることが,思い込みを誘発しているのでしょう。Wikipediaを参照すると,
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八朔(旧暦8月1日)や二百二十日とともに、農家の三大厄日とされている。
太陽暦(新暦)では9月1日前後で一定するが、太陰太陽暦(旧暦)では閏月が
入るなどして、7月17日から8月11日前後まで、「二百十日」がどの日に該
当するのかが一定ではなかった。そのために必要になった暦注であると言われて
いる。台風襲来の特異日とされ、奈良県大和神社で二百十日前3日に行う「風鎮
祭」、富山県富山市の「おわら風の盆」など、各地で風鎮めの祭が催されてきた。
また,この日の頃に台風が多いという事実はなく、むしろ8月下旬と9月中旬
の台風襲来の山にはさまれ、二百十日頃の台風はむしろ少ない。堀口は、この頃
が稲の出穂期に当たり、強風が吹くと減収となる恐れがあるために注意を喚起す
る意味で言われ始めたのであろうとしている。
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10月に入ってから,台風が接近していると,今頃どうしてという思いになり,これも異常気象の現れと考えてしまいます。「異常気象」という言葉を知っているから,その言葉で見聞を括って分かったような気分になっています。説明できるという状況が欲しいのです。説明がつかないという曖昧な状態は,不安を抱かせます。説明がつけば,そういうものと納得が進み,嫌なことであれば仕方が無いとあきらめがつくのです。心の健康を保つ自然治癒力と言えます。
産経新聞の記事で,
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阪急阪神ホテルズ(大阪市)は24日、系列のホテルなどがメニューと異なる
食材を使用していた問題で、出崎弘社長の報酬20%減額など経営陣の処分を発
表した。問題発覚後初めて記者会見した出崎社長は「信頼を裏切ったお客さまに
おわびする」と謝罪。自身の辞任は否定し、意図的に偽装したのではないかとの
指摘に対しては「その事実はない」と強調した。
出崎社長は、「偽装ではなく誤表示」だとしたうえで、問題の原因について
「法令などの無自覚、現状でよしとする甘えがあった。管理体制が不十分だった」
と説明した。
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メニューと実物が異なっていたという事実が,偽装か誤表示かという言葉の違いによって,認識の違いになります。背景に,意図的であったかどうかという違いが想定されます。説明する側は単なる過ちで済ませようと願います。説明を受ける側は,騙されたという思い,信頼を裏切られたという怒りがあるので,逆に振れて不信感を突きつけます。お客商売をする立場としての説明の仕方があると思いますが,そういう部外者の感想は時流とすれ違っているのかもしれません。偽装ではないと否定するだけではなく,誤表示であるという筋の通らない言い訳を持ち出してくる対処法に違和感を感じます。内部的に偽装であろうと誤表示であろうと,外部的には信用をないがしろにしたことが問題です。
言葉は人の思いに添うものですが,同じほどに,人の思いは言葉に寄り添います。