《仕合わせは 世代をまたぐ 智恵を継ぎ》

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警察庁の発表によると,平成27年上半期(1〜6月)の全国の刑法犯認知件数(暫定値)は,前年同期から8.8%減の約53万9千件であり,戦後最少だった昭和48年の年間約119万件を下回るペースで,窃盗犯の減少が目立つということです。
 罪種別にみると,空き巣やひったくりなどの窃盗犯が39万5301件で,4万725件減少。暴行や傷害などの粗暴犯は3万1556件,詐欺などの知能犯は2万753件,殺人や強盗などの凶悪犯は2915件で,いずれも前年同期を下回っています。
 地域の防犯活動に当たるボランティア団体や人員が増加し,路上や住宅などの防犯カメラも普及。警察庁の担当者は「官民一体となって不審者に目を光らせる取り組みも犯罪抑止につながっている」としています。
 一方で,刑法犯の摘発件数は前年同期から3.5%減の17万2270件,摘発人数は同2.6%減の11万6353人でした。その内訳は,65歳以上の高齢者の摘発が2万3656人で,上半期の統計がある89年以降で初めて14〜19歳の未成年(1万9670人)を上回っています。摘発件数と認知件数の比率を示す摘発率は1.8ポイント増の32.0%。近年は3割前後で推移しており、6割前後だった70年代前半と比べると水準は低いままになっています。
 警察庁の担当者は「ストーカーやドメスティックバイオレンス(DV)など、速やかに体制を組んで対応しなければならない事案が増えており,連続窃盗などの余罪捜査に手が回っていないのが一因」としています。

 防犯活動の効果を認めていただいている部分からは,地域でボランティア仲間と夜間パトロールを続けていることが幾ばくかの役に立っているのかもしれないと,自賛してもいいかなと感じます。ただ,高齢者の摘発が少年の摘発よりも増えたという新たな状況については,同世代として恥ずかしいことと思わされます。摘発ですから,高齢者の逃げ足の衰えが影響しているなどという下手な言い訳はしないでおきましょう。
 地元の新聞でも高齢者の摘発の多さに注目して,新幹線での71歳の男の焼身自殺,長崎での84歳の男のストーカー殺人,スーパーでの高齢者万引き対策強化などの事例を取り上げながら,社会での孤立感や生活苦が影を落とすと結んでいます。かつての地域では,近隣が生活を分け合って,孤立や生活苦を回避できていました。個を大事にすることが孤を大事にすることとなり,社会生活が無機質な様相を呈していきます。人が孤に閉じこもることなく,隣人と柔らかに触れ合っていて,ごく自然に共に生きようとしていました。
 摘発に向かう警察力を削いでいる新たな事案として,緊急性のあるストーカーやドメスティックバイオレンスの増加が指摘されています。個の肥大化,行き過ぎたわがまま,傍若無人さ,人としての未熟さが引き起こす事案です。自分自身が思い通りにならないのは他人のせいであると転嫁して,その理不尽さを暴力に隠匿して責め立てるしかできない弱さです。個を大事にするという目線は,他者という目線を喪失し、自己を客観視するという成長が停止します。それが幼児性と見えてしまう要因です。
 かつては,自分以外の目線に自分をさらす仕組みがありました。お天道様がお見通し,という自戒です。故事では,天知る地知る己知る,という教養です。尊い存在を廃止した魂の尊大さが,自らを危うくしています。バベルの塔と同じ轍を踏んでいます。人は懲りないようです。天災は忘れた頃にやってくるという科学者の言葉がありました。反省は長続きしないということでしょうか?

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(2015年09月27日号:No.809)