《喜びは 悪しき渦巻き 儚きに》

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 カスハラという言葉が目に入りました。カスタマー(お客)が起こすハラスメント行為ということです。一応の定義は「常識を越えた悪質なクレームや迷惑行為」です。店員に土下座をさせたり,金品の要求をしたりしている映像が流れているのを見たことがありますが,度が過ぎると脅迫としてつかまることもあるようです。
 そのような犯罪行為にまで発展しているとは言えない,法的には疑わしいというグレーゾーンがカスハラになります。厚生労働省もその対応に乗り出してきましたが,ハラスメントとして,セクハラやパワハラに並ぶほどに認知されるには時間が掛かりそうです。
 お客様は神様という旧い言葉が誤解されて,都合のいいように使われています。店員や社員を自分より低い位置に貶めて,無理難題を押し通してもいいという傲慢さには,何の論拠もありません。お年寄りが切れやすいといったことも言われているようですが,抑制機能が衰えているからでしょう。
 自分の主張を通すために,SNSで言いふらすという脅迫をするケースもあるようです。根も葉もない言いがかりであっても,広まってしまうと信じられるという恐れを押しつけます。噂話は1人や2人から聞かされても信じられませんが,3人から聞かされると信じてしまう傾向があります。今はその噂が3人どころではない数に拡散するので,より信じられてしまうことになります。情報社会は怖い状況であることを用心して,個人の発信情報は人間性という面から厳しく評価した方がよいようです。
 以前,モンスタークレーマーという言葉が流行っていたことがあります。クレーマーが一線を越えてきたのかもしれません。人として品がない行動に堕してきたと思われます。社会にじわりと意識され始めてきた格差にいらついてきて,八つ当たりをしているような世情の背景を感じます。貧すれば鈍するという言葉を想起します。じわじわと進行すると自覚症状がないために,気がつかないうちに変容することになります。朱に染まれば赤くなるということで,ファーストの時代の変容に染まっているとも言えるでしょう。
 社会のうねりは周辺部に濁りを起こしうたかたの渦を起こします。大きな流れは静かに滔々と落ち着くべきところに向かって下っていきます。願わくは,この先に滝となる断裂が潜んでいないことを願うのみです。

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(2018年12月23号:No.978)