*******  平面的無時間思考からの救出  *******

〜 いまどきの若者を読み解く 〜

【 序 】
 はじめに言葉ありき。人間は言葉によって人になります。優しい言葉を使うとき,人は優しくなれます。多くの人がしつけの悪い子と思う子どもは,言葉遣いの悪い子です。
 人を育てようとするなら,美しい言葉を伝授することが基本になります。若者の言葉世界はいたって貧相です。言葉が貧しいところに豊かな心の花が咲くはずもありません。
 この論文では,若者の言葉に欠けている空間認識が「第三次元と時間」であることを提示し,さまざまな面から検証したものです。大人の感じている若者への違和感が何かを明らかにしようとする論評は数多いのですが,いずれも具体に引きずられて個別的な解釈の段階に留まっており,実践活動の指針とはなりません。
 教育界においても幾多の改善が提唱されていますが,その統一的目的が整理されていないので,現場では困惑だけが広がっています。これ以上新しい方策を重ねるよりも,現在向かおうとしている実践の目的を明らかにすることが急務であると考えています。

 最近の若者が見せる行動に戸惑いを感じている大人たち,いまどきの若い者は何を考えているのか分からないという巷の感想,そのような状況を読み解くキーワードを探すことが本論考の目的です。手がかりは,「住む次元が違っている」という素直な直感にあります。
 考えるという行為は人の特質であり,それはまた言葉を使って可能になります。そこで,若者を読み解く作業をするためには,まず若者の言語生活が持っている特徴を紡ぎ出し,それを,若者がどのように考えているか,その思考形態に移し替える必要があります。本考察は,そのような特徴を見つける補助指標として「次元」という概念に依拠しようという試みです。