*****《ある町の人権擁護委員のメモ》*****

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【意識しては?】


 ご飯をつぐ,ご飯を盛る,ご飯をよそう,普段どのように言っていますか? 本来の言い方は,ご飯をよそうです。よそうは装うであり,ご飯に対する感謝の気持ちから生まれた言葉です。器にただ単に入れ込めばいいというのではなくて,形美しく整えてあげるという気持ちが添えられています。米粒を大事に扱うという気持ちがそうさせてきたのでしょう。ご飯をつぐという言い方では,この気持ちを表すことはできません。「ご飯を装う」という言い方を意識すれば,きっとご飯がおいしくなることでしょう。
 今日のお昼は何を食べようか? 考えるのは「おかず」のことです。毎日おかずを考えるのは大変です。食べる方は日替わり定食にすれば考えなくて済みますが,食べさせる方はもっと大変です。ところで,おかずとは主食の米のご飯があって,味噌汁以外の料理を言い表す言葉です。ご飯のない洋風の料理をおかずとはいいません。また,おかずは御数と書き,たくさんあるという意味があります。一品ではおかずとは言えません。さらに,その他大勢といったニュアンスもあるので,ステーキがあってもその他大勢の一つという脇役でしかありません。食材が片寄らないように気配りが込められた言葉です。
 「腹八分に医者いらず」と食べ過ぎを控える言葉があります。続きがあって「腹六分で老いを忘れる」と,高齢者への気配りもあります。さらに,ゆっくりよく噛んで食べることも勧められます。満腹感は食事をはじめて20分ほど経過しないと出てきません。早食いをすると満腹以上に食べ込むことになります。少し控えめに,そして20分以上の時間を掛けることで,適量の食事をすることができるのです。
 人が生きていく上で大事にした方がよいことが,ありふれた言葉の中に込められています。何となく使っている言葉を時々きちんと意識してみることも,生きる姿勢を立て直すきっかけになるかもしれません。
(2011年10月29日)