*****《ある町の人権擁護委員のメモ》*****

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【理不尽な応酬?】


 フライドポテトは,通常,アメリカではフレンチフライ (米:French fries),イギリスなどではチップス (英:Chips),フランスなどではフリット (仏:Frite),ドイツではポメス(独:Pommes frites) と呼ばれます。ベルギーではフリッツと呼ばれ,オランダでは一度粉末にしたジャガイモを成形して揚げたものをラスポテト (Raspatat) と呼びます。日本で使われるフライドポテト (英:Fried potato) は和製英語といわれていますが一応意味は伝わります。
 1853年の夏,アメリカニューヨーク州サラトガスプリングスにあるムーンレーク・ロッジのレストランでの出来事です。コックのジョージ・クラムは一人の客から,「このフレンチフライは分厚すぎて,自分の好みに合わない」と,文句を付けられました。これを聞いたクラムは,ジャガイモをもっと薄く切ってフライにして客に出しましたが,それでも客はまだ分厚いと言うのです。
 自分の料理に文句を付けられ,作り直してもまた苦情を言われたクラムは,それならばと,ジャガイモを紙のように薄くスライスし,フォークで刺せば割れてしまうほどにパリパリに揚げて,客を困らせてやろうとしました。ところが,それを食べた客は「これはうまい!」と大喜び。他の客も,ならば自分もと,どんどん注文するようになり,大評判となりました。コックの意地から生まれたジャガイモ料理は「サラトガ・チップ」と名付けられ,レストランの人気メニューになりました。やがて,ポテトチップスは包装されて市販されるようになり,クラムは自分の店を持つまでになりました。
 世界中で愛され親しまれているポテトチップスは,一人のわがままな客の文句とコックの意地の応酬から生まれたのです。理不尽に思われるような領域に踏み込んだからこそ,新しい創造に出会えたということでしょう。これでもかという意地を発揮する際に,平常世界を突き抜けることができるようです。
(2012年01月03日)