*****《ある町の人権擁護委員のメモ》*****

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【研修概要報告】


 【研修報告】
※同和問題部会:7月18日(金)15時 西新庁舎3階会議室で,NPOフレンズの石ア杏里さんを迎えて,「多様な性が生きるまち福岡を目指して」として性同一性障害に係わる研修会が開催されました。
 性同一障害者の性別の取扱いの特例に関する法律第2条(定義)によると,「性同一性障害とは,生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず,心理的にはそれとは別の性別であるとの持続的な確信を持ち,かつ,自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって,そのことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められて医学的知見に基づき行う診断が一致してものをいう」とされています。
 同第3条では,「家庭裁判所は,性同一障害者であって,次の各号のいずれにも該当するものについて,その者の請求により,性別の変更を審判することができる」として,性別の取扱いの変更の条件を挙げています。
 一 二十歳以上であること。
 二 現に婚姻をしていないこと。
 三 現に未成年の子がいないこと。
 四 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
 五 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。

 石アさんが代表を務めているFRENS(Fukuoka Rainbow Educational NetworkS)の活動目的は,セクシャルマイノリティをはじめ,共に生きる全ての人々が「自分らしく生きやすい」社会の実現です。主な活動は,
 1 セクシャルマイノリティに関心を抱く方を対象とした交流会の開催,相談対応
 2 若者やその他関係機関への講演会活動
 3 セクシャルマイノリティの普及啓発活動
 4 その他,セクシャルマイノリティに関する活動
などです。ちなみに,福岡の警固公園で,2008年5月から,全国から集まった「多様な性にYES!」のメッセージを発信しているそうです。
 ところで,多様な性とはどういうことでしょうか? FRENSのパンフレットによると,
 1 からだの性(身体的な性別)
 生殖器や性染色体の形などによって分けられる性別です。どちらかに分けられないインターセックス(性分化疾患)の人たちは約2000人に1人います。
 2 こころの性(性自認)
 「自分は女である」「自分は男である」など,その人が自認している性別です。からだの性と一致していない人はトランスジェンダー(性同一性障害)と呼ばれ,約300人に1人います。
 3 好きになる人の性(性的指向)  恋愛感情を持つ相手の性別。「異性を好きになる人」が多いですが,そうでない人もいます。レスビアン/ゲイ(同性を好きになる人),バイセクシュアル(性別を問わない人),Aセクシュアル(恋愛感情や性欲が希薄な人)は,約40人に1人います。
ということです。
 性というのは,簡単に男か女かで二分できるものではなく,個人によって異なっていたり,一人の人間の中にもいろいろな面があるようです。このような「性」におけるマイノリティ(少数派)をセクシャルマイノリティと呼びます。
   石アさんは女性の身体で男性と自認するトランスジェンダーで,バイセクシャルと話されていました。

※子どもの問題部会:7月22日(火)13:30分 西新庁舎3階会議室で,筑紫少女苑の渡辺玲子苑長を迎えて,「悩みを持つ子どもへの接し方と支援のあり方」のテーマで,男女共同参画社会推進部会との共催で研修会が催されました。
●子ども本人による問題の解決に必要なことは?
@自分で何とかしようとする意識(動機付け)
 我慢したり逃げたりせずに,解決することができると本人が思うことであり,そのためには「いやなことをいやだ」と言える体験を重ね,自分の主張が通るという人権意識を育む必要がある。
A現状の整理・分析
 本人が自分の言葉で自分の抱える問題を整理することができれば,向き合うことができるので,傾聴を重ねて言葉の整理を助けることが大切である。
B他者の援助を得る方法
 自分の力で可能な具体的な方法を探すために,周りの信頼できる人に相談する道を知ることができると,第1歩が踏み出せる。苑の少年たちは,それまでに訴えても聞いてもらえない現実の壁にぶつかっていたために,非行に自分を逸脱させていくしかなかったのである。
●支援する側の具体的な対応は?
@親身に子どもの気持ちに寄り添って話を聞くこと。
 気持ちを吐き出すことができると,子ども自身の中に解決方法が見えてくるようになる。
A子どもの自ら持つ力をエンパワーすること。
 「よく相談してくれたね」と,相談する力があることを認めてやることから始めて,子どもの力を大人が信じてやれば,子どもは自らの力を信じる勇気を得ることができる。
B悪者を作らないこと。
 自分の境遇に対して人のせいにしたくなるが,その人を完全な悪者と認識してしまうと,これから先に付き合っていかなければならない人がいなくなる。人は100%悪いという単純なものではない。
※非行に至ってしまう子どもの中にあれこれ貯まっているものをすべて消し去ることはできない。生い立ちを含めてあれこれを抱えたままでも,気持ちを新たにしたり認識を改めたりすることで,非行から抜け出す道を歩み出すことができると信じている。

(2014年08月03日)