*****《ある町の人権擁護委員のメモ》*****

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【連想のよどみ?】


 平成27年の9月には秋のゴールデンウィークが出現します。毎年恒例ということではないのでプラチナウィークとも言われます。ところで,4月,5月の春のゴールデンウィークを,NHKでは大型連休と言っています。ゴールデンウィークという言葉は映画業界が作り出した造語です。昭和26年5月初め,映画「自由学校」が大ヒット。お正月とお盆以外の5月に観客が多く入ったことから,ラジオの最も視聴率の高い時間帯「ゴールデンタイム」に倣って,5月の連休をゴールデンウィークと名付けたのです。
 その後,一般に使われるようになりましたが,NHKでは,映画業界のキャンペーン用語であったこと,休むことのできないで「何がゴールデンウィークだ」という気持ちの人たち,外来語を使ってほしくないという声など,この言葉に抵抗がある人たちに配慮して,「大型連休」という言葉を使っているそうです。
 黄金が出てきましたので銀を探すと,シルバーシートという言葉があります。9月の第3月曜日は敬老の日です。昭和48年9月15日の敬老の日,当時の国鉄に初めて「シルバーシート」が登場しました。なぜ優先席をシルバーシートと呼んだのでしょう。
 当時お年寄りや身体の不自由な人のための優先席の設置までの準備期間が短く,国鉄の工場に余っていた新幹線普通席の座席カバーの在庫を使って間に合わせたそうです。たまたまそのカバーの色がシルバーグレーだったので,シルバーシートと言うようになったということです。別の色であれば,違っていたことになります。その後シルバーシートは全国に広がっていき,「シルバー」は高齢者に関連する言葉として使われるようになりました。
 現在は「優先席」と言われるようになっています。小さな子どもや妊婦の方にも必要とされたからです。
 言葉は連想という広がりを経て意味がシフトしていきますが,予期しないところで定着することがあります。「人権」という言葉が連想の助けによる理解を進めているうちに,「思いやり」という言葉に行き着いて止まっています。その停滞に気付き,抜け出す工夫をすることが求められています。

(2015年08月06日)