*****《ある町の退任人権擁護委員のメモ》*****
【人権擁護機関の報告から(2)侵犯相談対比:その4:公務員】
法務省の人権擁護局から,人権擁護機関における人権相談件数および人権侵害件数とその救済処理状況についての年次報告がされています。そのデータを使って独自の分析をすることから見えてくるものを,提示していきます。
分析に使った報告数値を取りまとめた数表は
***こちら***
です。
人権擁護局による活動では,相談を受けて,その内容に侵犯の疑いがあるものについては調査を行って救済に繋いでいます。そこで,相談のうちで侵犯事案になる割合をみておきたいと思います。ただ,留意しておくことは,侵犯事案となるものは相談の中からだけではありません。直接の相談からではなく情報提供や報道内容などをきっかけとする侵犯調査も含まれていることを断っておきます。あくまでも目安ということです。
先ずは単純に相談総件数に対する侵犯総件数の比を、年毎にグラフにしてみます。
図に示すように,平成25年をピークに侵犯/相談の割合は減少の傾向を示し,令和では10%台に激減しています。この全体に現れている傾向が個別の種類毎にも当てはまるのかは,以下に見ていくことにします。
事案の内容別の結果を順次見ていくことにします。今号では「公務員関係」についていくつかの種類について侵犯/相談対比の推移を以下に示します。
公務員(教育職員)における体罰の相談のうちで平成25年から28年の間は90%以上が侵犯性の疑いのあるものになっています。推移については平成29年以降には減少して20%ほどになっています。これでもかなり高率です。人権を守る意識が高まっているのであれば良いのですが,まだまだ啓発の必要があります。
学校におけるいじめの相談のうちで平成の終わり頃には30%ほどが侵犯性のあるものとされています。令和に入って減少が見られ20%ほどになっています。令和に入っての減少はコロナ禍による子どもの環境変化が関わっているようです。今後の注視が必要です。
警務職員関係の相談のうちで平成年間には40%以上が侵犯性の疑いのあるものとされています。令和になって20%ほどの半減をしています。下げ止まりが見えているので今後の推移を見届けていくべきです。
以上,公務員関係の相談について見てきましたが,私人間の相談に比べると侵犯の疑いの割合は高い割合であるという結果が見えてきます。相談を受けるときには,その侵犯性をしっかりと見届ける対応力が求められています。
(2024年05月19日)