*****《ある町の退任人権擁護委員のメモ》*****

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【生きる羅針盤の提案(29):コミュ力(1)高い人】


 人権宣言等から導き出した「人権羅針盤」は,人権という言葉が目指すものに言い換えると人が穏やかに生きるための羅針盤と考えなければなりません。だからこそ,先に示した子どもの育ちを考える羅針盤としても有効になることができたのです。ここでは,「生きる羅針盤」としての様子を描き出しておくことにします。ふと立ち止まって,「生きるとは?」という疑問に出会った際に,その思考のお手伝いができたら幸いです。

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 「私が生きる羅針盤」を考える第29版です。今号では,コミュニケーション力が高い人の特徴を列挙している情報に接したので,生きる羅針盤に参照してみました。SNS時代のコミュニケーション力を考える手がかりになるかもしれません。

生きる羅針盤の提案(コミュ力高い人)です
【1.自己抑制しながら,周りに合わせて振る舞える】
《説明》コミュニケーション能力は,自分をコントロールする力と深いかかわりがあります。自分の感情や衝動をうまくおさえ,状況に合わせた行動ができると,自ずと周りの人との関係もよくなっていくのです。

※コミュニケーション力が高い人とは,時と場所柄を弁えた振る舞いをすることができるという基礎的な素養を持つ人です。コミュニケーションとはお互いの分かり合いを求める行動であり,その前後で,お互いによりよい変化を受容することになります。双方によいものというもう一人の自分の冷静な判断と,受け入れる決断,そのことが大事なのです。

【3.相手の気持ちを読み取れる】
《説明》自分の気持ちと同じく,相手の気持ちや感情を読み取る力も大事です。発言やしぐさ,表情などから相手の気持ちを察知できると,「この人は私の気持ちを分かってくれる」と思われ,好かれるようになります。

※コミュニケーション力が高い人とは,相手には相手の気持ちがあることを前提として,きちんと察知しようと努めることができる人です。同じ人間であるという共通の認識があるからこそ,コミュニケーションをする価値が生じます。共に生きていく仲間であるという信頼を交わそうとする気持が土台になります。

【2.自分の気持ちをうまく表現できる】
《説明》コミュニケーション能力の高い人は,表現力にすぐれています。あなたは自分の感情や心理状態を言葉でうまく表現できますか? 「なんとなくモヤモヤするけれど,自分が何を感じているのかよくわからない」という人も多いかもしれません。このように,自分の感情や心理状態を感じ取る力も表現力のひとつです。また,表現力は言葉だけに限りません。一般的にコミュニケーション能力と言うと,「口が達者でよどみなく話せる人」をイメージする人が多いですが,しぐさや表情も使いながら,相手に伝えられる力が本当のコミュニケーション能力です。

※コミュニケーション力が高い人とは,自分の思いを表現する言葉を正しく選び,相手に伝わるように配慮することができる人です。自分の感情のままに表現をぶつけるのではなく,相手が理解できているかを確かめることを忘れないことです。伝えたで終わらず,伝わったかと見届けることで,より良く理解し合うことができます。

【6.良好な人間関係を維持できる】
《説明》せっかく楽しく会話ができても,人間関係を維持できなくては元も子もありません。コミュニケーション能力の高い人は,意見が対立したり,お互い感情的になったりしても,関係を修復することができます。「ケンカがいけない」のではなく,「仲直りが大事」なのです。

※コミュニケーション力が高い人とは,常に人間関係が壊れるという事態を避けることを優先できる人です。意見が対立して、お互いに問答無用となると,コミュニケーションの失敗です。対立点が生じても,その部分の範囲を限定し,より大きな視点を構築することで,つながりを保つことができるように結んでいきます。何が大事なのかを見失わない冷静さが大事なのです。

【4.上手な自己主張ができる】
《説明》ときには相手と自分の立場や意見が異なることもあるでしょう。その際,自分の意見を押し殺したり,反対に強すぎる自己主張をしたりすると,コミュニケーションはうまくいきません。コミュニケーション能力が高い人は,自分の主張を論理的に筋道立てて説明しつつ,議論に柔軟に対応できます。

※コミュニケーション力が高い人とは,解決すべき課題の合意が整わなかったり,理不尽な状況に陥ったりすることを放置したままにしない人です。自分の意見の修正や,相手の意向の緩和など,できうる歩み寄りのために,論理を明確に組み立て直す能力も必要になります。感情的な解決ではなく,理性的な対応を崩さない冷静さが,コミュニケーションの先行きを実りあるものにするはずです。

【5.相手の意見や立場を思いやれる】
《説明》コミュニケーションの上手な人は共感性が高い傾向があります。相手の立場になって気持ちを尊重することができ,「優しい人」「思いやりのある人」と認識されるようになります。友好的な態度で相手に接する力ももっているので,真心が伝わりやすいのです。

※コミュニケーション力が高い人とは,お互いの現状が少しでも良くなる方向に進むように願っている人です。人は互いに支え合って生きていこうとしています。あるときは支えられ,あるときは支えています。どちらにしても,相手の立場になって互いの思いを尊重しています。優しさや思いやり,人の温もりがコミュニケーションを介して通い合うことが,生きていく幸せであることを実現することになります。

○以上,コミュニケーション力が高い人の様子を,「生きる羅針盤」に対応させてもらいました。これまでの対応事例と同じように,あまり違和感もなく整理をすることができているはずです。それぞれの想定している世界観における具体的な表現は違っていても,人が思い至る幸せに生きる境地は本質的に同じ構造になっているようです。それぞれを別個にしておかずに,まとめていく作業から,人の生き方について深い理解が得られるのではないかと期待しています。

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 社会に真剣に向き合って生きていくことは,人として誰もが願っていることです。ただ人には本能から派生する弱さもあります。その弱さを押し込めていく意思が必要になります。そしてその意思は目標を必要とします。それが羅針盤なのです。
 人としてすべきことから外れないようにすることは大事であり,それは誰にとってもできることであり,気持ちの良いものです。しあわせは誰かだけにあるのではなく,皆に同時にあるものです。権利を守る,言葉は堅く響きますが,人として生きていく自然な姿であればいいのです。

(2025年08月24日)