【生きる羅針盤の提案(30):コミュ力(2)6要素】
人権宣言等から導き出した「人権羅針盤」は,人権という言葉が目指すものに言い換えると人が穏やかに生きるための羅針盤と考えなければなりません。だからこそ,先に示した子どもの育ちを考える羅針盤としても有効になることができたのです。ここでは,「生きる羅針盤」としての様子を描き出しておくことにします。ふと立ち止まって,「生きるとは?」という疑問に出会った際に,その思考のお手伝いができたら幸いです。
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「私が生きる羅針盤」を考える第30版です。今号では,コミュニケーション力の6要素を解説している情報に接したので,生きる羅針盤に参照してみました。SNS時代のコミュニケーション力を考える手がかりになるかもしれません。
【1.自己統制】
《説明》自分の感情や行動をうまくコントロールする力のことです。
○得意な人の例:「イライラする。ストレスが溜まっているのかも。でも休憩して深呼吸をすれば大丈夫、きっと落ち着ける」
○苦手な人の例:「イライラがおさえられない!腹が立つ!」
※コミュニケーション力の6要素の一つは,感情表現を自己内に止めて,相手に向けて発することをしない抑制をすることです。コミュニケーションとはお互いの分かり合いを求める行動であり,その前後で,お互いによりよい変化を受容することになります。双方によいものというもう一人の自分の冷静な判断と,受け入れる決断,そのことが大事なのです。
【3.読解力】
《説明》相手の伝えたい考えや気持ちを正しく読み取る力のことです。
○得意な人の例:「大丈夫って言ってるけど大丈夫じゃないよね?心配事はなに?」
○苦手な人の例:「大丈夫ってことだから、いつまでも不安な顔しないで頑張ろうね!」
※コミュニケーション力の6要素の一つは,相手の発する言葉を相手の思いにつなげて聞き取る配慮することです。言葉は状況を反映するものなので,お互いの状況が同じであることを確認できないと,意味合いがずれることがあります。違いがあることを前提として,丁寧な聞き取りによる解釈が必要になります。多少の違いを超えて同じ人間でありたいという共通の認識があるからこそ,コミュニケーションをする価値が生じます。共に生きていく仲間であるという信頼を交わそうとする気持が土台になります。
【2.表現力】
《説明》自分の考えや気持ちをうまく表現する力のことです。
○得意な人の例:「最近あまり会えてなくて寂しく思ってるの」
○苦手な人の例:「私が怒ってる理由がどうしてわからないの!」
※コミュニケーション力の6要素の一つは,自分の思いを表現する言葉を正しく選び,相手に伝わるように配慮することです。自分の感情のままに表現をぶつけるのではなく,相手が理解できているかを確かめることを忘れないことです。伝えたで終わらず,伝わったかと見届けることで,より良く理解し合うことができます。
【6.関係調整】
《説明》周囲の人間関係にはたらきかけ良好な状態に調整する力のことです。
○得意な人の例:「最近、〇〇さんが元気がないみたいだからご飯に誘ってみようかな」
○苦手な人の例:「最近、〇〇さんって付き合い悪くなったよね。もう誘わない方がいいかしら」
※コミュニケーション力の6要素の一つは,常に人間関係が壊れるという事態を避けようと気配りをすることです。意見が対立して,お互いに問答無用となるのは,コミュニケーションの失敗です。対立やすれ違いが生じても,その部分の範囲を限定し,より大きな視点を構築することで,つながりを保つことができるように結んでいきます。何が大事なのかを見失わない冷静さが大事なのです。
【4.自己主張】
《説明》自分の意見や立場を相手に受け入れてもらえるように表現する力のことです。
○得意な人の例:「この提案を採用すれば、全体の効率はよくなるけど一つひとつのケアが手薄になるから私は反対かな」
○苦手な人の例:「この提案、わたしは反対です!」
※コミュニケーション力の6要素の一つは,直面する課題への取組についてmリット・デメリットを冷静に提示する形で,主張のポイントを明らかにすることです。自分の意見の修正や,相手の意向の緩和など,できうる歩み寄りのために,論理を明確に組み立て直す能力も必要になります。感情的な解決ではなく,理性的な対応を崩さない冷静さが,コミュニケーションの先行きを実りあるものにするはずです。
【5.他者受容】
《説明》相手を尊重して相手の意見や立場を理解する力のことです。
○得意な人の例:「このツールを導入すれば、皆の売上成績もきっと良くなるね!」
○苦手な人の例:「便利なツールを導入しても、皆の成績が上がると思ったら大間違い」
※コミュニケーション力の6要素の一つは,お互いの現状が少しでも良くなる方向に進むように論点を選ぶことです。人は互いに支え合って生きていこうとしています。あるときは支えられ,あるときは支えています。どちらにしても,相手の立場になって互いの思いを尊重しています。優しさや思いやり,人の温もりがコミュニケーションを介して通い合うことが,生きていく幸せであることを実現することになります。
○以上,コミュニケーション力の6要素を,「生きる羅針盤」に対応させてもらいました。これまでの対応事例と同じように,あまり違和感もなく整理をすることができているはずです。それぞれの想定している世界観における具体的な表現は違っていても,人が思い至る幸せに生きる境地は本質的に同じ構造になっているようです。それぞれを別個にしておかずに,まとめていく作業から,人の生き方について深い理解が得られるのではないかと期待しています。
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社会に真剣に向き合って生きていくことは,人として誰もが願っていることです。ただ人には本能から派生する弱さもあります。その弱さを押し込めていく意思が必要になります。そしてその意思は目標を必要とします。それが羅針盤なのです。
人としてすべきことから外れないようにすることは大事であり,それは誰にとってもできることであり,気持ちの良いものです。しあわせは誰かだけにあるのではなく,皆に同時にあるものです。権利を守る,言葉は堅く響きますが,人として生きていく自然な姿であればいいのです。
(2025年08月31日)