【生きる羅針盤の提案(37):イライラ6態】
人権宣言等から導き出した「人権羅針盤」は,人権という言葉が目指すものに言い換えると人が穏やかに生きるための羅針盤と考えなければなりません。だからこそ,先に示した子どもの育ちを考える羅針盤としても有効になることができたのです。ここでは,「生きる羅針盤」としての様子を描き出しておくことにします。ふと立ち止まって,「生きるとは?」という疑問に出会った際に,その思考のお手伝いができたら幸いです。
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「私が生きる羅針盤」を考える第37版です。人間関係において,人は誰でもいらだちを抱えることがあります。ただ,それがいつもということになると,何らかの要因となる実態があるようです。その特性が紹介されていましたので,生きる羅針盤に参照してみました。少しでもイライラを減らすことができるような手がかりになるかもしれません。
【2.栄養バランスが乱れがち】
《説明》偏った食生活が習慣となっている人は,栄養バランスが乱れやすくなっています。実は,ビタミンやミネラルの継続的な不足は,イライラしやすくなったり,倦怠感や疲労感などを招く原因とも言われているのです。例えばしょっちゅうダイエットをしている人は,偏った食事が原因でイライラしがちになったりしませんか? 体に必要な栄養素はしっかり補って心のバランスもとれるようにしましょう。
※イライラを減らすためにできることは,もう一人の自分が自分の健康に配慮をすることです。自分がイライラしていることを感じ取り,その不健康な反応が現れる要因に気付くことです。イライラが自らの不健康に対する警告でもありうるということに気付くことも大事です。イライラしやすい自分を健康にすることは,もう一人の自分にしかできないことです。
【5.睡眠不足】
《説明》脳内の神経伝達物質であるセロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ,精神の安定や安心感には欠かせないと考えられています。セロトニンが減少する原因のひとつには,睡眠不足があげられます。ストレスや睡眠不足でセロトニンが減少すると,心が不安定になりイライラしやすくなりやすいため,朝は起きたら日差しを浴び,朝食は食べるようにする,など規則正しい生活で過ごしましょう。
※イライラを減らすためにできることは,自らの心身を落ち着いた状況にしておくことです。安心できる環境を作り,気持のゆとりを持つようにすれば,些細なことに過剰に反応したイライラはなくすことができます。ゆったりとした感性は,自らの居場所がごく自然な状況であるときに得られます。規則正しい生活,それは身近にいる者との温かな暮らしの中にあります。イライラは不規則な生活リズムに共鳴しやすいのです。
【3.固定観念が強い人】
《説明》固定観念とは他人の意見に耳をかさない,頑固な考えを持っていることです。周囲の状況によって考え方を変えないため,自分の中で「こうあるべき」という信念や価値観が強いのが特徴。そして、他者にもその信念や価値観を強要したがります。固定観念が強いと,同じような価値観でない人に対して,勝手に理想を裏切られた気持ちになり,イライラしたり怒りの感情を抱きやすいと考えられます。〇〇であるべき,などの思い込みはやめ,できるだけ柔軟性を持つようにしましょう。
※イライラを減らすためにできることは,自分の考えや価値観を表す言葉を振り返り,相手からの応答の言葉を受け止め,その意味の重なりを落ち着いて吟味することです。言葉は数字と違って,意味の幅があります。その幅を厳密さを求めて切り捨てるとき,イライラのわき出しが起こります。目指す価値観がずれていても,似た方向であればしばらく付き合ってみるくらいの余裕がある方が,共に得るものが生まれるでしょう。観念の堅さは柔軟な発展への機会を逃すことにもなります。
【6.真面目で責任感が強い】
《説明》まじめで責任感が強い人は頑張りすぎて疲れてしまい,イライラしやすくなることがあります。最後まで手を抜かずやり遂げることは素晴らしいことです。ですが,頼まれごとに対してNOといえなかったり,1人で抱え込んで負担を大きくしてしまうと,気持ちに余裕がなくなりイライラしやすくなってしまいます。何でも自分の責任と捉えることはやめ,周囲の人に頼ることも意識しましょう。
※イライラを減らすためにできることは,社会的な人間関係においては,お互いに頼り合う協働を意識することです。分担することで目的を達成する形が望ましく,それぞれが余裕を持って関わることで,安全性や効率化が保証されます。責任感は大事ですが,無理を抱えることは期待されてはいません。それは危険や不都合な結果を招きやすいことから避けられるべきです。自分が無理を背負い込むと、他者にも無理を背負わせるように向かいます。良い互恵関係とは言えません。
【1.せっかち】
《説明》いつも急いでいたり焦っている,いわゆる「せっかちな人」は,漠然とした不安を抱きストレスを感じやすいと言われています。また,他人に対しても厳しくなりがちで,自分にも他人にもイライラしやすい傾向があります。いつも気持ちが急かされたり焦っている人は,長い目で楽観的に物事を考えるよう意識しましょう。
※イライラを減らすためにできることは,時間の経過に沿う状況への対応に余裕を持ち込むことです。物事を為すときは,予め想定しておいた段取り通りに進捗することを期待します。時間の経過は正確に着実に刻まれていき,人の事情にはお構いなしです。人にできることは,事情の方に余裕を持たせることです。やるべきことへ十二分な力を注ぎ,時間を待つくらいな形で対応していきます。時間に追いかけられていると受け止めているから,イライラしてしまいます。
【4.完璧主義】
《説明》完璧主義は妥協を許さず,ひとつも欠点が無い,完璧であることを基準にしています。そのため,自分自身にも他者にも寛容になれず,些細なことでイライラしやすくなるという特徴があります。細かいことはあまり気にせず,80%の程度の出来でもよいと考えるようにしましょう。
※イライラを減らすためにできることは,物事の処理能力の実情を認識することです。完璧な処理は目指すものではあるものの,努力目標までに到達できればという現実的な評価が必要です。事の重要性に沿った目標を冷静に設定するようにします。したいけどできないという判断はつらいことですが,人は現実を越えることはできません。ただ,その現実の壁を越える努力は続けるべきです。前向きに動いていることの自覚があれば,イライラは軽減されるはずです。
○以上,イライラを減らすためにできることを,「生きる羅針盤」に対応させてもらいました。これまでの対応事例と同じように,あまり違和感もなく整理をすることができているはずです。それぞれの想定している世界観における具体的な表現は違っていても,人が思い至る幸せに生きる境地は本質的に同じ構造になっているようです。それぞれを別個にしておかずに,まとめていく作業から,人の生き方について深い理解が得られるのではないかと期待しています。
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社会に真剣に向き合って生きていくことは,人として誰もが願っていることです。ただ人には本能から派生する弱さもあります。その弱さを押し込めていく意思が必要になります。そしてその意思は目標を必要とします。それが羅針盤なのです。
人としてすべきことから外れないようにすることは大事であり,それは誰にとってもできることであり,気持ちの良いものです。しあわせは誰かだけにあるのではなく,皆に同時にあるものです。権利を守る,言葉は堅く響きますが,人として生きていく自然な姿であればいいのです。
(2025年10月19日)