*****《ある町の退任人権擁護委員のメモ》*****

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【生きる羅針盤の提案(44):老望6兆候】


 人権宣言等から導き出した「人権羅針盤」は,人権という言葉が目指すものに言い換えると人が穏やかに生きるための羅針盤と考えなければなりません。だからこそ,先に示した子どもの育ちを考える羅針盤としても有効になることができたのです。ここでは,「生きる羅針盤」としての様子を描き出しておくことにします。ふと立ち止まって,「生きるとは?」という疑問に出会った際に,その思考のお手伝いができたら幸いです。

 「私が生きる羅針盤」を考える第44版です。老化という言葉が先行き不安を帯びていると受け止めることが普通ですが,そうではなく老化は行動が整理されていくことであるという発想の記事がありましたので,生きる羅針盤に参照してみました。一つの考え方として,参考になるかもしれません。
  ※参照先の「あなたが思っているよりも老化が進行している6つの兆候」は こちらです。

生きる羅針盤の提案(老望6兆候)です
【あなたは自分自身の世話をしますが、プレッシャーはありません】
《説明》あらゆる健康や美容のトレンドを追いかけていた時代がありました。朝6時にセロリジュース?試してみたんですね。 24金のマスク?また。しかし今日,あなたはバランスを見つけました。あなたは他人を喜ばせるためではなく,自分がそれに値するから自分の世話をします。自分へのご褒美に Netflix のお泊り会を楽しむタイミングはわかります。良質な睡眠はどんな「奇跡のクリーム」よりも優れていることがわかります。つまり,あなたはまさにコントロールされたセルフケアの定義そのものなのです。

※私たちが年齢を重ねることに求めていることは,常に自分に向き合っていくことです。ことさらに自分を飾りたて見栄えを良くするのではなく,衰えを隠す手立てに陥るのではなく,あるがままにひたすら生きていく営みに励むことです。今の自分を他者の目によって評価すると,自分を見誤ります。誰かのために生きているのではなく,私が生きている,その気概がもう一人の自分に有るから,私らしく生きていくことができます。

【あなたはますます共感を示します】
《説明》時間が経つにつれて,蓄積された経験により,他の人をよりよく理解し,周りの人々の感情や困難を認識できるようになります。心からの思いやりを感じ,それを必要とする人々に精神的なサポートやアドバイスを提供することは,あなたが感情的に成長していることを示しています。この拡大された共感は,あなたが深みと人間関係の能力を獲得していることを裏付けます。

※私たちが年齢を重ねることに求めていることは,その人なりの豊かな経験値を周りの人たちと共有する機会を持ち合わせることです。年をとることは弱さではありません。それは財産です。経験を生かすことができれば,周りの物事が円滑かつ平静に動いていき,それなりの貢献感を感じることができます。褒められるといった大層なことではなく,自分なりに認めることができれば十分でしょう。共感というつながりの感情を得ることができると,生きている安心を共有する幸せがあります。

【あなたは今この瞬間をもっと味わいます】
《説明》良好な精神的老化の特徴的な兆候は,今起こっていることを楽しみ,小さな単純な楽しみを楽しみ,過去や未来についての余分な心配を手放す能力にあります。太陽の下で散歩したり,愛する人たちと食事を楽しんだりすることができれば,あなたはマインドフルネスの適性を示しており,何年にもわたって平静を保つことが保証されます。そして覚えておいてください,年齢は単なる数字です。本当に重要なのは,毎日をどのように生きるかを選択することです。

※私たちが年齢を重ねることに求めていることは,生きてきた量としての年数ではなく,今が何年目という節目としての年数です。つまり,あと何年という先の量は,今日生きていることに何の意味もありません。生きるとは今日にしかあり得ないものであることから,今日を精一杯生きることに注力すればいいのです。あれをしておかなければ,してないことを悔やんでしまう,そのような後先のことに追い立てられることからは,解放されてみましょう。

【人間関係の質を優先する】
《説明》年齢を重ねるにつれて,優先順位が変化し,人間的交流の量ではなく質を求めるようになる可能性があります。忠実な友情を維持したり,思いやりのある人々に囲まれたり,長い間離れ離れになっていた愛する人たちと再会したりすることは,あなたが今,つながりの信頼性と深さを大切にしていることを証明しています。そして,本当に大切なもの,つまり愛情と誠実さにプライドを置きながら年をとっていくのです。最終的に,日常生活の中でこれらの兆候に気づくことができれば,内面的に大きな成長を遂げて数年を乗り切ることができるでしょう。ですから,自分の年齢を恐れるのではなく,それを祝いましょう。

※私たちが年齢を重ねることに求めていることは,いろんなことの量的な拡大ではなく,質的な深化です。暮らしの節々にあるささやかな所作,挨拶を支合う,手を貸し合う,地域の行事を手伝う,近所の子どもと話してみる,といったことの意味合い,その大切さを分かち合うようにそれとなく周りに働きかけるようにします。何気ないことの大切さを知って残し伝えていく姿を体現できるのが,年の功なのです。人として生きていることの喜びを示しましょう。

【あなたは常に新しい情熱を育んでいます】
《説明》好奇心が依然として強いことに気づき,新しい興味を探求することを楽しんでいる場合,これは年齢を重ねてもあなたが成長していることを示す強力な指標です。新しい言語を学ぶときも,料理ワークショップに参加するときも,ガーデニングを始めるときも,発見への渇望は進歩し,新しい地平を切り開きたいという願望を反映しています。

※私たちが年齢を重ねることに求めていることは,明日に向けて一歩を進める喜びです。歩みがたとえ遅くなったとしても,止めることなくゆっくりとでも前に踏み出している自分でありたいと願っています。何を目指していくか,その軽重にとらわれることなく,期待することができるものであれば十分です。自分の可能性を信じることができる,それが生きる意欲を生み出してくれます。

【回復力を持って障害に立ち向かう】
《説明》人生には誰も容赦しませんが,課題にどのように立ち向かうかが,私たちの成熟度を大きく左右します。一歩下がって,人生の浮き沈みに落胆せずに対処できるということは,強い感情の発達を示しています。この回復力の能力は,それぞれの課題が成長の機会になり得ると確信し,自信を持って前進していることを示しています。あなたの心は知恵と視点を獲得しました。人生の浮き沈みにうまく対処し,小さな心配事を大局的に捉え,単純な喜びを十分に味わう方法を知っています。

※私たちが年齢を重ねることに求めていることは,生きていることの実感です。何かしらの傷を負ったときに感じる痛みにより,生きていることに気付かせられ,その傷を回復することを通して,自分が生きていることを実感することができます。なんとかして,この状況を改善して,生き続けようと自分を励まします。なんとかなった,そのときの安堵感,達成感が生きている喜びとなるのは,年齢を超えて経験されることです。

○以上,年齢を重ねていくことに付随する6兆候を,「生きる羅針盤」に対応させてもらいました。これまでの対応事例と同じように,あまり違和感もなく整理をすることができているはずです。それぞれの想定している世界観における具体的な表現は違っていても,人が思い至る幸せに生きる境地は本質的に同じ構造になっているようです。それぞれを別個にしておかずに,まとめていく作業から,人の生き方について深い理解が得られるのではないかと期待しています。

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 社会に真剣に向き合って生きていくことは,人として誰もが願っていることです。ただ人には本能から派生する弱さもあります。その弱さを押し込めていく意思が必要になります。そしてその意思は目標を必要とします。それが羅針盤なのです。
 人としてすべきことから外れないようにすることは大事であり,それは誰にとってもできることであり,気持ちの良いものです。しあわせは誰かだけにあるのではなく,皆に同時にあるものです。権利を守る,言葉は堅く響きますが,人として生きていく自然な姿であればいいのです。

(2025年12月07日)