*** 子育て羅針盤 ***

〜 《Ver.2 from No.15》 〜

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「子育て羅針盤」:第19号
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[2001/02/05]
【子 育 て 羅 針 盤】
(第19号)
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 酔っぱらって線路上に転落した大人を救おうとして,李秀賢さんと関根史郎さんという若者が命を召されました。韓国大統領が「殺身成仁」と追悼しています。救助という一点に気持ちを封じ込めた集中力は人の素晴らしさの透明な結晶です。二人の心をこそ忘れないでおこうと思います。

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★子育てtips★
『パパ・ママ』
(第05号)
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 パパもママも,その起こりはおそらく幼児の言葉であったろう。くちびるを使うパとマとは,子どもに最も発音しやすい(パ行とマ行だけが唇を閉じてから発声する)。幼児は一族の中の大きい男をパパと呼び,乳で育ててくれる女性をママといった。

 父の字は斧の原字であって,手に石斧を持った形である。その父を,父親という意味に用いるのは,いったいどうしたことであろうか。これは,いわゆる仮借的用法(当て字)の顕著な一例である。太古の中国語で,成人の男を"pa"といい,その語を表すための当て字として,発音がよく似た父という字を借用したのである。

 母という字は,女の字とほとんど同じ形であるが,ただ母の方には,胸の両脇にオッパイがはっきりと描かれている。母親は子どもを産み,乳で育て上げることに情熱をもやす。そこで育児のシンボルとしてのオッパイを,とくに強調して描いたのが,この母という字である。

 妊という字の核心はその右側(壬)で,糸巻きの棒に糸を巻いて,その腹がふっくらとふくれた姿である。そして女性が赤ちゃんをはらんでお腹をふくらませることを,「女+壬」を組み合わせた妊の字で書き表した。

 娠の字の右側の辰は,貝の姿である。カギ型に開いた貝がペラペラした足をのぞかせた形である。柔らかい貝の足はペラペラと振れて動く。さて胎児が成長して7,8ヶ月ともなると,時おりピクピクと胎動する。その胎児の振動する感じを娠というのである。

「女へんの漢字」:藤堂明保著・角川文庫

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★続・子育ち12章★
『反抗を してくる子どもは 産む痛み』
《第2-05章》
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 ■はじめに

 子どもが育っていく途中で,親に対して反抗を重ねる時期があります。
 その最も初期の反抗のやり方は,「イヤ」という拒否表明です。
 「どうしてイヤなの?」と尋ねても,「イヤだからイヤ」と答えます。

 子どもに自分の気持ちを話させようとしても,低学年までは無理です。
 生まれようとしている「もう一人の子ども」が言わせているからです。
 ママの強い支配に対し独立運動をはじめたのだと受け止めてください。

 ここで「もう一人の子ども」について,簡単に復習をしておきましょう。
 子育ちに関する六課題の一つは「誰が育つのか?」ということでしたね。
 子どもが育つのではなく,もう一人の子どもが育つと考えてみました。

 自信とは「もう一人の自分」が「自分」を信じることだということです。
 可能性を引き出す人とは親や教師ではなくて,もう一人の自分なのです。
 子どものことはもう一人の子どもに任せることが,親による子育てです。

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 【質問2-05:あなたは,お子さんに考えさせていますか?】

 《「考えさせる」ということについて,説明が必要ですね!》
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 ○責任能力?

 人は我を忘れてカッとなって暴力を振るうことがあります。キレル人とはかつては有能さを表すほめ言葉でしたが,今は何をするか分からないとても恐い人というイメージに変わっています。ヤケになるという言葉は自棄と書きますが,自分を棄てるのはもう一人の自分です。我を忘れるのももう一人の自分です。我に返るとは自分をもう一人の自分が掌握したということです。

 犯罪を犯した人の精神鑑定がされるようになりましたが,それはもう一人の自分が覚醒しているかどうかの評価です。もし,もう一人の自分が不在なら罪には問われません。責任能力を持つのは,もう一人の自分だからです。悪を引き起こしかねないわがままな自分を上手に統率できるようなもう一人の自分を育てることが成長です。

 最近の若者が幼稚であると評する識者がいますが,もう一人の若者が幼稚である,十分に育っていないという意味です。幼稚であると結果を言い立てるだけなら,誰にでも言えます。どうしてそんな若者が育ってしまったのでしょうか? もう一人の子どもを育て忘れてきたからであり,本当には若者として育っていないのです。その要因は「誰が育つのか」ということを意識して養育をしてこなかったことです。何となく単純に子どもが育つと思ってしまい,育ちの要である「もう一人の子ども」を無視した,まさに的はずれな養育になっていたことを反省することが大事です。

・・・もう一人の子どもに注目!

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 ○自分のものの中で最も大切なものは?

 アイヌの古老が若者に「お前の身についているものの中で何が最も大事か?」と尋ねました。若者は「心臓だ。それがなければ死ぬ」と答えましたが,却下されました。「それでは頭だ」と言い直しましたが,「ゆっくり考えろ」と宿題にされました。

 若者は数日考えましたが答は出ません。そこで古老に教えを請いました。「最も大事なものはお前の名前だ。名前は死んでも残る」ということでした。かつて生き方の指針として,名を挙げるとか,名に恥じないといったことがありました。命がけで家名を守るといったこともありました。古くさい考え方になりましたが,その背景には何があったのでしょうか?

 「旅の恥は掻き捨て」といわれ,普段の自制が外れる解放感があります。人の目を気にしなくていいというのは,心の自由さを満喫させてくれるでしょう。しかし,誰とも分からない匿名性は簡単に一線を越えさせてしまいます。それは他人の目から逃れると同時に,もう一人の自分が自分を抑制する自制が効かなくなるからです。名前を大事にするのは誰でもないもう一人の自分であるという隠れた知恵があったのです。

 幼児は自分のことを「〇〇ちゃん」とママから言われているように呼びます。我が子が自分のことをちゃん付けで呼ぶことに,親は愛らしさを感じるかもしれません。でもそのことは育ちには大切なステップです。もう一人の自分が自分に名前を付けて相対化しようとしています。そのときに自分を意識する「もう一人の自分」が生まれようとしているのです。

・・・自分の名前をしっかりと意識できるように。

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 ○母子戦争?

 忙しいママが子どもの反抗にあうと,イライラしてきます。普通に遭遇する反抗は,「イヤ」という拒否行動です。言うことを聞かせようとしても,だだをこねます。「ママはもう知りません。勝手にしなさい」と匙を投げたらいいのですが,「どうしてママの言うことを聞かないの」と手を挙げても従わせようとしたら大変です。母子戦争はエスカレートしていきます。「パパ,何とか言って」と振られて,パパはどぎまぎ?

 子どもは我慢の限度がオーバーすると,自分を閉ざします。思い通りにならないと,所構わず座り込んで動こうとしません。弟スサノオの乱暴狼藉に耐えきれなくなった姉アマテラスが天の岩戸に自閉した神話もあります。「イヤ」という行動は,自分を守る自衛行動です。

 イヤという拒否の背景には,もう一人の自分が自分をコントロールしたいという欲求があります。ママの言うとおりではなくて,もう一人の自分が考えるとおりにしたいということです。学校での生活も自分なりに考えたようにしたいのです。それができない束縛に遭遇すると,イヤと反抗し,終いには閉じこもります。

 子どもが「イヤ」と言ったら,先を急がず,子どものことはもう一人の子どもに任せてみて,考える時間を与えてやることです。どうするか見守ってやることが親の務めです。反抗という形で,自分がどれほどの力を持っているのか,もう一人の自分が確認しようとしているのですから。

・・・子どもの反抗は,もう一人の子どもの力試しです。

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 ○笑われる辛さ?

 テレビで放映されたビデオ作品です。滑り台で着地しようとして失敗し,前につんのめって地面に顔から突っ込んでしまいました。起きあがった子どもはすぐには泣きませんでしたが,周りで家族が大笑いしていることに気付いた途端,母親を指さし「笑っちゃダメ」と大声で泣出しました。母親が笑いを噛み殺しながら抱上げると,近くの人たちがまた笑う。火のついたように大声で泣きながら「笑っちゃダメ」と絶叫しています。

 自分が笑われていることを,もう一人の自分が認識し傷ついています。その自尊心の痛みのために泣叫んでいるのです。人の存在感の基盤にある自尊心・プライドは子どもでも十分に持っています。もう一人の自分は自分をこよなく大切に思っています。

 もしもそんなに大切な自分がいじめられると,いじめられるような惨めな自分をもう一人の自分が許せなくなります。自分なんか居なくなればいいと見捨てようとさえします。かわいさ余って憎さ百倍という次第です。

 いじめによる恐喝が高じて自殺に追い込まれた少年の遺書に,「君たちもばかなことをするのはやめてくれ」,「お金を取った人を責めないで」と書かれていて,さらにいじめられる自分が悪いと,もう一人の自分までが自分をいじめる側にまわっていました。

 子どもも子どもなりの大小さまざまな障害にぶつかって悩みます。悩みがあるとあれこれと考えます。考える方向はプラスの向きでなくてはなりません。もう一人の子どもが自分を否定的に考えないように,親が子どものプライドを支えてあげてください。

・・・自尊心を壊さないように見守ってください。

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 ○お話しを聞いたら?

 授業の教材になったお話しです。夕方,信号のない交差点を渡りかねている老婆がいました。帰宅を急ぐ通行人は無関心です。一人の子どもが手を取って一緒に渡ってあげました。この話の感想を子どもたちが発表します。「この子は偉いと思います」,「気が付かない大人はいけないと思います」といった意見が出されました。

 一人の子どもが違ったことを考えていました。「この話を書いた人が一番悪い」と言います。お年寄りが困っているのをはじめから分かっているのに,子どもが手伝うまで自分は何もしないでただ見ていたからということです。この子は考えすぎていると思いますか?

 本を読むのはもう一人の自分が作者の目を持つことです。作者にのりうつっているのです。だからこそ,読書がもう一人の自分の疑似体験として有効になります。作者の立場に立った子どもは,自分だったらどうするかを考えました。知ってて見過ごしたことが恥ずかしかったのでしょう。本を読んで感想を述べるだけではなく,自分のこととして考えることができたとき,もう一人の子どもは育ちます。

・・・傍観者は考えていません。

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 ○割れた!・・?

 台所でママが手にしたコップにヒビが入っています。「アラ,いつ割れたのかしら?」。子どもが学校でふざけていて窓ガラスが音を立てました。「アッ,ガラスが割れた」。割れたのではなく,割ったはずなのですが!

 割れたと思っていると,モノのせいですから原因を考えません。自分の扱い方に不備があったことをチェックしないので,事態は改善されません。割ったと受け止めたら,ごく自然に「どうして」と考えるようになるはずです。

 もう一人の自分は常に自分と寄り添っていなければなりません。そのせっかくのチャンスを「勝手に割れた」と思うことで逃します。もちろん割った責任を逃れようという気持ちも働くでしょうが,大事なことは「二度と同じことはしでかさない」ということです。自分を逃がそうとすれば,育ちが止まります。子どもにとっては,考えることが責任の取り方です。

・・・単純な責任追及は子育ちの邪魔になります。

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 《考えさせるとは,もう一人の子どもに自分を見つめさせることです》

 ○「何度も教えたでしょ! どうしてチャンとできないの?」と,ママが迫ります。ママにとっては簡単なことですが,子どもは自分で考えて納得しなければできません。考えるためには,時間をたっぷり与えることです。

 【質問2-05:あなたは,お子さんに考えさせていますか?】

   ●答は?・・・もちろん「イエス」ですよね!?

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★編集後記★
 お届けした「子育て羅針盤」第19号はいかがでしたか?

 物心ついてくる時が,もう一人の子どもの誕生です。3歳頃まではまだもう一人の子どもは産まれる前です。ですから,子ども自身をコントロールできるもう一人の子どもはいません。本能的にわがままに生きていますから,家庭は第二の胎盤として温かく包んでやって,第二の陣痛を乗り越えてください。
 さて,皆さんもお子さんとの暮らしの中でいろんな体験をお持ちでしょう。よろしかったら,皆さんに話のお裾分けをするために,ぜひお聞かせ下さい。もっとたくさんのメールをお待ちしております。

☆予告☆
 次号では,

 【質問2-06:あなたは,お子さんに気配りを教えていますか?】

について考えます。お楽しみに!

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 ●モリのクマさんのホームページ「徒然窓」,
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  に,コラム「パパな毎日」や子育てに関する受賞論文,子育ち12章,
  県教委の事業として実施した調査結果や組織活動の指導テキスト
  などを掲載しています。是非訪ねてみてください。

 ●皆様の場として掲示板を設けています。ドウゾ積極的にご利用下さい。
   http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/bearbbs/index.html

 ●講演のご依頼は,メールでお問い合わせ下さい。

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○タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban]
〇発行責任:モリのクマさん
○発行期日:2000年9月25日より,毎週月曜日正午
○著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp
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〇転載許可:事前に必ず,クマさんまでメールのご一報を下さい。

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