*** 子育て羅針盤 ***

〜 《Ver.7 from No.78》 〜

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「子育て羅針盤」:第81号
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[2002/04/22]
【子 育 て 羅 針 盤】
(第81号)
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 人は何もいうことがないと,他人の悪口をいう。

・・・・・ヴォルテール

 親は何もいうことがないと,我が子の悪口をいう。

・・・・・H.モリのクマさん

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★ママの?★
『ママはなぜクロワッサンが好きなのでしょう?』
(第16号)
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 おしゃれなママはどうしてなのかクロワッサンが好きです。フランスの香りに浸っているのでしょうか? クロワッサンって,フランス語で三日月の意味だって。だからかな〜。

 時は1683年,オーストリアのウィーンがトルコ軍に包囲されていました。街が消えるかもしれないという心配の中で,あるパン屋さんが街を記憶に残すために三日月形のパンを作りました。三日月にしたわけは,トルコ軍のシンボルをまねたら,気に入られるかもと考えたからです。

 それから100年後に,マリー・アントワネットがこのパンをフランスに持ち込みました。元々はウィーンのパンだったのです。

 そう! だからって,それがどうしたの! 関係ないでしょ! 昔はどうであっても,今が大事なの! ママはきっとそう言うはずです。

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★パパ12章★
『ママと呼び あなたのママじゃ ありません』
《第7-04講》
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 ■はじめに

 子どもにインタビューすると,「おもしろかった」,「楽しかった」,「きつかった」,「恐かった」という単語が返ってきます。どれも感想ですが,自分の気持ちを表す言葉です。子どもは自分を表現する言葉を覚えていきますが,それが途中で止まっています。いい年をした若者が,子どもと同じランクの言葉しか使えません。

 自分を表現する言葉が貧しいから,作文や日記に書かれた文章がポツポツと切れてしまいます。そして,・・・,の連続になり,同じところを行ったり来たりするようになります。

 実のところ,子どもの文章は幼い頃の方が表現が豊かです。稚拙に見えますが,気持ちを豊かに言い当てています。「雨が怒っている」。大人は雨が怒るはずがないでしょ,と紋切り型に捨て去ろうとします。ものを見て表現する豊かな力を十分に伸ばしておいてやらないと,その次に控えている自分を表現するという課題で力を発揮できなくなります。

 ママが機嫌の悪いとき,子どもは「今日の足音はドンドンしてる」と覚えるから,子どもは自分がすねたとき足音高く歩こうとします。子どもはマネをして育っていくので,たくさんの言い回しを教えるとき,比喩を使うことからはじめてみてください。リンゴのように赤い,新幹線のように早い,パパのように強い,注射のように痛い,といった調子です。

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 【質問7-04:あなたの家庭では,パパと会話をしていますか?】

・・・・・「パパと会話」という意味について,説明が必要ですね

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 ○いつ話したらいいのでしょうか?

 パパがおもしろくないと感じてしまうときがあります。愛しい連れ合いの心変わり?です。仕事から帰ってきたパパを,「お疲れになったでしょ。すぐに支度をしますから,その間に着替えてくださいね」と温かく出迎えておられますか?

 「何を今更,そんなこと!」。しばらく前はオトーサンの言いぐさでしたが・・・。甘い言葉はいざ知らず,待っていたという態度を示して欲しいと願っています。飲み屋さんに行って何がうれしいかって,待たれていたというお世辞です。男はそれに弱いんです。

 ママが話しかけてくることは,子どものことです。ママの気持ちも分かります。でも,パパの気持ちも分かってあげるわけにはいきませんか? まずはじめに夫婦の会話から入ってください。その確認ができたら,愛しい連れ合いの話ですから聞く気になろうというものです。いきなり子どもの話では,何かしら責められているような気になります。それでなくても,パパは後ろめたさを背負っているのですから。

 パパは家では「夫」でありたいのです。夫であると思えたら,妻の話を聞きたくなります。二の次として,子どもの話が出てきても,夫婦二人の話として受け止めることができます。ママの気持ちの中に,子どものパパという思いが強くなってはいませんか? パパは夫婦の間に子どもが挟まっている違和感を感じているのです。

 家庭は夫婦がいて,その二人の傍に子どもがいるのです。そして,ママが妻になることによって,子離れが自然にできていくものです。パパが話を聞いてくれないということを伺うとき,夫婦の香りが薄くなっているような印象を受けることが度々です。夫婦という気持ちになったときに思いを話してみる,そんなワンクッションをおすすめします。

・・・子どもを挟んでいるから,夫婦喧嘩になってしまいます。

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 ○生きた言葉?

 パパが宿題をしている子どもの傍に行って,「がんばってるか?」と声を掛けます。そんなときはたいてい一杯飲んでパパのご機嫌がいいときです。ママは余計なことを言わなければいいがと気がもめます。子どものペースを乱されたくないからです。

 ママから見ると,パパには少しばかり変な所があります。子どもをからかって面白がるのです。幼い頃はそれがじゃれ合いになるから,子どもも一緒に遊んでいるという気になります。しかし,いつまでもその手は通用しません。特に女の子が相手ですと,やがて嫌われる原因になります。

 どうもパパは子どもを直に構うことが上手ではないようです。それでいいのです。子どもにすれば,ママに十分に構ってもらっているので,それ以上構われる必要は感じていません。満腹していれば,同じものは嫌であり別のものを食べたいはずです。

 パパはママとは違った存在として姿を見せることです。普段ママがしていることとは違ったことをしてみせるのです。子どもは変わったことには興味を示します。パパを何をしているのだろうとじっと見つめます。ママが苦手とするちょっとした力仕事,大きな片づけごと,ものの移動,ガラス拭き,外回りのことなど,いくらでもすることはあります。

 忙しいママが後回しにしていることをパパが休みの日に仕上げるのです。パパが一休みしていると,子どもが参加しようとまとわりつきます。「さあ,もう少しがんばろうか!」と立ち上がるパパ。子どもはパパの後ろ姿を見上げながら,やりかけたことを黙々と続けることがガンバルことだと悟ります。子どもはがんばっているパパという生きたイメージによって,一つの育ちをしていきます。

・・・生きた言葉は暮らしの中でしか聞こえてきません。

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 〇丁寧な言葉?

 パパは家の中では割と横柄な語り口をしてしまいます。子どもがママに向かって偉そうな話し方をしていることがあります。端で聞いていてもいい感じのするものではありません。幼いうちは可愛いと思うかもしれませんが,生徒になってまでその調子ではしつけのなさと言えるでしょう。

 ママが言葉の先生であるということは前に触れておきました。子どもは母国語という母の言葉で育つからですが,言葉遣いについてはパパも無関係ではなく,大きな影響力を持っています。言葉そのものではなくて,相応しい言葉を選び出す能力に関わることです。

 言葉遣いは相手に対する自分の思いに左右されます。パパがママのことをどう思っているかということが,家庭でのパパの言葉遣いに素直に現れます。それがさらに子どもがママのことをどう思うかというところに伝染していきます。特に気を付けるべき点は,子どもは言葉遣いをまねているうちに,その言葉に似合った態度や気持ちに馴染んでしまうということです。いわゆる,言葉に染まるということです。

 悪貨は良貨を駆逐するという言葉があります。準えれば,悪口は良口を駆逐するとなります。男言葉はぞんざいで女言葉は細やかという定説は過去のものになっていますが,それがぞんざいな言葉遣いの方に移行しているような気がします。ため口の横行はそれが親しさの現れという思い違いのためでしょう。親しき仲にも礼儀あり,それが堅苦しさやよそよそしさと感じるところに言葉の病が進行しています。

 そうかもしれないけど,では,一体どんな風に話せばいいというのでしょうか? パパはママを動かそうとしないことです。ママを使おうとするから妙に命令口調になり,ぞんざいになります。「新聞は?」。なかったら,自分で取ってくればいいのです。自分が動こうとしないから,指図してしまいます。面倒なことはみんなママに押しつけようという甘えが,自分を思い上がらせていきます。言葉は正直です。

・・・口ばっかり動かそうとするから,丁寧さが失われます。

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 ○深める?

 ママの話は気持ちがベースになっています。「だから,嫌なのよ」と終わります。そんなママの話に対しているときは,パパの話は自然と理性がベースになっていきます。「嫌だといっても,それじゃ済まないだろう」と逆らう形になります。「どうして,私をいじめるの?」と再逆襲されます。

 違う! うちでは反対と思われますか? 日曜日にママは園や学校の行事で出かけなければなりません。「休みなのに,役員なんか引き受けるから」とパパは気に入らないようです。「だって,しかたないでしょ。子どものためなんだから」とママは切り返します。パパの甘えは一蹴されます。

 話がかみ合わないときは,およそ義理と人情のせめぎ合いです。やらなければならないという義理と面倒だなという人情が,理性と感情のぶつかり合いになります。大人になるということは,とりあえず義理や理性を優先させることだと言うことができます。

 人情や感情が二の次に成らざるを得ない事情,それが生きることであるとするなら,我慢という素養が不可欠になります。我慢できなければ世間では生きていけないということです。「嫌」と言えば,何でも済んでしまうようでは困るのです。子どもたちに我慢することをしつける必要があるという理由は,義理や理性が社会を組み上げているからです。

 もちろん感情を一切否定するというのでは人間味が失われます。気持ちを生かせるように上手にコントロールすればいいのです。我慢するということはあきらめることではなくて,一旦停止することだからです。そうすることでたいていのことは方向転換できる別の道を見つけることができます。

 子どもの気持ちを理解するという言い方があります。感情を理性に変換することです。パパは子どもの話をゆっくりと聞く姿勢を保ってください。きちんと話させるということです。パパに分かるように話してごらん,と気持ちを表す言葉を引き出してやります。そうすればちょっと深い所にある子どもの気持ちが見えてきます。嫌という理由が分かれば,そこに気付けば,別の道が見えてきます。パパは子どもが気を取り直せるように話を深めてやってください。

・・・感情に対して感情で受け答えしては,話が収まりません。

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 ○間合い?

 夫婦の間でちょっとした諍いがあると,ママの得意技が発揮されます。だんまり戦術です。パパにはお手上げになります。どうしても言わなければならないときは,敬語調にすることで距離を置こうとします。何も思い当たることがなくて,急にママが敬語を使い始めたら,夫婦仲が壊れた証です。

 「庭のバラのつぼみが開いたね」。「そ〜お」という返事を期待していたのに,「そうですか」と冷めた語調に変わると,パパは何かあったなと感じます。親しい間柄でことさら敬語や丁寧語に変わるときは,拒否されたと感じます。人は言葉で間合いを取ることができます。

 子どもは親や先生,友だちなどの親しい人に囲まれて育ちます。そこには敬語や丁寧語は無用です。その環境で育っていると,敬語や丁寧語に出会ったときに,自分は拒否されていると感じてしまいます。他人であれば当然の間合いなのですが,拒否感だけを受け取ります。相手はこちらに対してそれなりの気配りをしてくれているのに,それを逆に受け取るという誤解をします。

 その疎外感が恐いから,親しくない人と会話をしなくなります。馴れ馴れしい話し方が許されないつきあいもあり,そこには別の形で相手を思いやる話し方があることを教えておかなければなりません。子どもたちが敬語を使えないという背景には,敬語のよそよそしさという側面しか教えられていないという育ちの背景があります。

 子どもを育てる場面では,敬語という言葉の間合いが社会人としての大事な素養であるということ以上に,その間合いを取れることが人を信頼することにつながるという意味の方が重要です。敬語を使えないと人を怖がるようになり,疑うようになるということです。自分を拒否する人を信頼できませんものね。

 パパの出番です。パパがよその人とどういう話し方をしているか,子どもは見ています。当然丁寧な言葉遣いをしているでしょう。その後が問題です。パパが相手の人について陰口的な話をするのは禁物です。いわゆる形だけ取り繕っておくということで,信用していない人というイメージをあからさまにしないで欲しいのです。敬語は信用できないものというイメージを子どもに持たせてしまうからです。

・・・敬語とは相手を大切に思うための言葉の間合いなのです。

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 ○異世代?

 世の中が機械化・自動化・情報化と進展してきました。体力から知力へ,ハードからソフトへと,力のシフトが起こっています。この流れは業種でいえばサービス産業の比重が増加してきたということです。キーボードを叩かないと始まらないように,言葉が使えないと世間を渡れなくなってきました。

 親子や夫婦の間で意思疎通が滞るような体たらくでは,情報化も国際化も絵に描いた餅になります。そのいずれもが,異なった価値観,環境も世代も通り抜けるボーダーレスを意味しているからです。これからの子どもは,まず身の回りにいるどんな人ともきちんと話ができる力を備えておかなければならないでしょう。

 現実は逆行しています。同世代の間でしかコミュニケーションしていません。子どもは異世代といえば親と先生しか知りません。近所の大人は無関係な存在,無視すべき存在と思っています。このような閉じこもりは自分だけがという価値観を育て,他人の価値観を認めない偏狭な心の鎧をまとうようになります。

 価値観の多様化というキーワードは,価値観の閉じこもりという一面を持っています。自分は自分,他人のことなど関係ない,こうしたバラバラの価値観になる危険をはらんでいます。本来は多様な価値観とは,異なった価値観を認めることであるはずです。その上でどう折り合いを付けていくか,その手段としてのコミュニケーション能力が必須になります。

 現実的に言えば,子どもが大きくなったときに働く場所はほとんどサービス産業です。そこでは,どんな人が相手になってもきちんと対応できる会話力がなければ勤まりません。外国語を習得する前に,世代間コミュニケーションの訓練を十分にこなしておくことが必要です。そして,そこにパパが登場しなければなりません。子どもにとって最も身近な異世代はパパなんですから。パパであると同時に,大人であることです。

・・・人に出会ったら必ず挨拶のできる子を育てましょう。

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 《パパと会話とは,言葉の力に気付かせるチャンスです。》

※若者はテレビやマンガという映像を主とした表現に慣れています。感受性は育っています。しかし,それは感じること,受け取ることです。人に感じさせる,受け取らせる表現者にはなれません。言葉が映像のツマになっているので,言葉だけの表現が手薄になる分,言葉の力が失われています。気持ちを言葉で表すことができないと,気持ちの整理ができません。ましてや,伝えることもできません。

 自分を言葉で表現できない人は,周りからは何を考えているか分からない人になり,不気味な存在になります。自然と離れていきます。人はなぜ自分から離れていくのか分からずに被害者意識を持つようになり,孤独になっていきます。言葉が力を失ったら,お互いが信用できなくなり,落ち着かない社会になることでしょう。

 【質問7-04:あなたの家庭では,パパと会話をしていますか?】

   ●答は?・・・もちろん,「イエス」ですよね!?

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★編集後記★
 お届けした「子育て羅針盤」第81号は,いかがでしたか?

 庭先にどんぶり大の真っ赤なバラが咲いています。重たそうに枝がたわんでいます。子どもが育っていくと親がたわんでいくのと似ているなと眺めています。後に続くつぼみが葉陰から日差しを探しています。

 真っ赤なバラの花言葉は? 人は思いを言葉に表し,それを花に託し,伝えようとします。花を贈られても,花言葉を知らなければ,伝わりません。大切な人の言葉が聞こえなかったら,悲しいですね?

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     http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear/
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    「子育て心温計」などの受賞論文,養育アンケート調査結果,
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☆予告☆
 次号では,

 【質問7-05:あなたの家庭では,パパの茶碗を用意していますか?】

について考えます。どうぞお楽しみに!

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○タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban]
○発行期日:2000年09月25日より,毎週月曜日正午
〇発行責任:モリのクマさん(詳細はHP「徒然窓」〜プロフィールに)
○著者連絡: mori-bear@mvd.biglobe.ne.jp 
〇転載許可:必ず事前に,モリのクマさんまでメールのご一報を下さい。

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