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[2025/12/01]
【子 育 て 羅 針 盤】
(第1313号)
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★子育ち12試問
【第9試問:お子さんは,自分の弱さを自認していますか?】
《V101:WHY-01》
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《子育ちは ありのままの 姿から》
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《まえがき(毎号掲載)》
子育て羅針盤では,こどもの育ちを6つの方向と2つの領域から考察します。6つの方向とは,「誰が,どこで,いつ,何が,なぜ,どのように育つのか」という5W1Hの問題視座です。また,2つの領域とは,「自分の育ち(私の育ち)」と「他者と関わる自分の育ち(私たちの育ち)という育ち」の領域を表します。6つの方向にそれぞれ2つの領域を重ねた12の論点が「子育て羅針盤」の基本的な考察の構成となります。
この第101版では,子ども自身や親が育ちの確認をしていくときに,状況を分析するキーワードとなる12の試問を選んで育ちを検討していくことにします。その構成は,奇数号では「私の育ち」を,偶数号では「私たちの育ち」という配置をします。私の育ちだけに意識が向くと,私たちという社会性に基づく仕合わせな育ちが疎かになります。あちらこちらで人のつながりに欠陥が見られる現状は,私たちという育ちから得られる「私たち」という意識が未熟だからです。そのことに注目して,羅針盤を手元に設定していただくようにお願いいたします。
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《「弱さを自認」ということについて説明が必要ですね!》
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○明るく元気な子でなければいけませんか?
ネクラな姉がネアカな妹を刺した事件がありました。姉はネクラでは生きられないと周りから言われ続けていました。自分がネクラに見えるのはそばにネアカな妹がいるからと思いこみ,妹さえいなくなればと追いつめられていきました。自分の存在を脅かす妹を消すことで,圧迫を回避しようとしたのです。
ネクラなどとは相対的なもので,たとえネアカでももっとネアカな者のそばに行けば,ネクラに見えてしまいます。その上,ネクラであって何がいけないのでしょうか? 人に可愛がられないとか,人との関係が結びにくいといった心配があるのでしょうが,それほど気に病むほどのことではありません。
教室の前に「明るく元気な子」と大書してあります。ネクラで弱い子は毎日それをどんな思いで見ているのでしょうか? 明るく元気でない子は仲間ではないといった雰囲気がある中で,登校する気持ちに水を差されていきます。保健室なら登校できます。なぜなら,そこは弱い子だから温かく迎えてくれる場所だからです。
簡単になれそうもないことを無理強いすることは間違っています。ネクラであっても弱くてもいいんだと,徹底的に認めてやるのが家庭です。学校は元気な子とそうでない子達がどうすれば仲良くやっていけるかを学ぶ所です。決して弱い子を元気にする病院ではありませんし,ましてや仲間はずれにするようなあくどいことなどもってのほかです。
・・・明るく元気な子というイメージには,陰湿な暴力性が潜んでいます。
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○みんなが同じように育たなければいけませんか?
ヒロシ君が算数のテストで80点でした。答案を見てママが「お隣のカズミちゃんは?」と尋ねました。「90点」と答えると,すかさず「ダメじゃないの,もっとしっかりしなくちゃ」とにらまれてしまいます。「でも,タカシ君は60点だったよ」と小さな声でつぶやいたときです。ママは「人のことなどどうでもいいの」と追い打ちです。
班学習で担当分ができなかったとき,みんなが迷惑すると責められます。自分のことは責任を持ちなさいというわけです。みんなが決めたことが絶対的な束縛になって締め付けてきます。その息苦しさから,学校への道は遠のいていきます。班学習とは各自が単に公平に分担するということではなくて,班全体として何事かをやり遂げる協力が目的です。得手不得手のある仲間が集まってお互いをカバーし合うということです。
自分のことは自分ですべきという束縛が強すぎると,何でも自分でできなければならなくなります。みんな同じに育つということは,個性を殺すことです。一人ひとりが持ち味を出すことが個性なら,そこには得手不得手や,強さ弱さが必然として現れるはずです。弱い人がいるからこそ,個性を発揮できる場が用意されます。お互い様という関係です。
・・・同じであることは,弱さを負の価値に追いつめてしまいます。
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○人は弱かったら,生きていてはいけないのでしょうか?
人の一生は弱い赤ちゃんにはじまり,年老いて弱くなって終わります。社会生活は強くなければ務まらないというのが一般的なイメージです。ですから,子どもは学校に,お年寄りは施設にとちょっと脇にどけておくようになります。手が掛かるから子どもは要らないという気分に流され子どもは激減し孤独を押しつけられ,長寿になって年寄りが増えて大変だという声をお年寄りは肩身の狭い思いで聞いています。
弱い者が気兼ねをしない社会が心豊かな社会ですが,実際には心貧しい社会ができようとしています。それが子育てに反映しかかって,子どもを育てなくしています。弱くてはいけない,弱さをマイナス価値と断罪する非情さの前では,子どもはひとたまりもありません。自衛手段として,子どもは自分の弱さを否定して自惚れてしまい幼児のままで育ちを停止したり,弱さを拒否して自暴自棄になり社会に反逆しています。
自分の弱さから目を背けたら,人の弱さが見えなくなり,暴君になります。優しさは自分の弱さを知っているからこそ発揮できます。弱いからこそ弱い者同士で社会を営んで生きてきたのがヒト社会です。自分が弱いと自覚してはじめて,育ちへの意欲が生まれます。自分は強い大人だと思ったときに,成長は止まります。未熟さを容認することが自己実現のスタートラインです。ソクラテスの語った自分の無知を知れという言葉も同じ意味です。
生きる喜びや意欲は,「自分は今弱いんだ」ということを容認した上で,助け助けられる温かさを感じ取り,弱くてもできることがあるという存在感を実感し,明日になったらもっといいことがあるという期待を持つことです。
・・・弱いという自覚があるからこそ,生きる喜びが持てるのです。
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《弱さを自認しているから,自分を肯定することができます》
○親は「そんなことでどうするの」と子どもを追いつめることがあります。もう一人の子どもはやがてそんな弱い自分を見捨てるようになります。ママにも認めてもらえない自分に嫌気がさしてきます。もう止めたと育ちをあきらめます。「弱くてもママは好きだよ」と言われたら,子どもは育とうとします。
【質問9:あなたのお子さんは,自分の弱さを自認していますか?】
●答は?・・・もちろん「イエス」ですね!?
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☆次号予告☆
【子育ち第10試問:お子さんは,明日を楽しみに生きていますか?】
どうぞお楽しみに!
明日はお出かけというとき,わくわくして明日を迎えることが楽しくなります。逆に,明日は嫌なことがと思うと憂鬱になります。もしも,明日もいじめで嫌なことがと続くと思ってしまうと、生きることを諦めようとします。明日の朝起きるのが楽しみ,何でもいいから楽しみを一つ見つけるようにしましょう。
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★落書き★
世界で最も多くの人命を奪っている生物は,一体なんでしょう。WHOなどの統計をもとに,ある生物が年間で何人の命を奪っているか調査があります。第4位は「犬(狂犬病)」で,2万5千人から5万9千人,第3位は「ヘビ」で5万人から13万8千人,第2位は「ヒト」が戦争や殺人で40万から47万5千人です。第1位は「蚊」です。マラリアから日本脳炎,デング熱,ジカ熱などの感染症の原因となって,72万5千人の命を奪っています。
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●タイトル:『子育て羅針盤』 [Kosodaterasinban]
●発行期日:毎週月曜日正午(2000年09月25日より)
●発行責任:モリのクマさん(HP「徒然窓」〜プロフィール参照)
「徒然窓」= http://www5a.biglobe.ne.jp/~mbear
「連絡先」= mori-bear※mvd.biglobe.ne.jp (※を@に変更)
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