《手遅れに だからあれほど 言ったのに》

 連れ合いが新聞を読みながら,「おかしなことばっかり。私にはとても理解できない。これからどうなるんでしょうね」とぼやいています。のぞくと青少年による痛ましい事件の記事が載っています。親の思いが言わせているのでしょう。
 子どもたちを取り巻く環境はますます悪化しています。最近頻発している青少年の手になる凶悪犯罪は,幼い子どもや高齢者という弱者が標的になっています。弱い者に手をかけることは男の恥でした。その男気といったものが根付いていません。その原因は男の男による男のための子育てがなされていなかったからです。弱いものはかばうという勇気が,父親がなすべき最も大切なしつけだと思います。
 このような事態が訪れることを誰も予見できなかったのでしょうか。犯罪が顕在化する前に問題になったいじめも弱者をいたぶる所業です。それを止められる男の子が育っていないのも父親のイクジ(育児)なしのせいだったのです。さらにそれ以前から,父親の出番が家庭教育の現場では切実な声でした。それなのに父親たちが本気で受け止めてくれなかったことが,今とても残念です。
 子ども世代を育てることは未来社会の土台を作ることですが,手抜き工事のつけが人間社会の根底を揺さぶっています。保護者として子どもを養ってさえいれば役目は果たせると思って育てる手間を惜しんでいたら,いつの間にか加害者を育ててしまうかもしれないようです。子育ての結果はすぐには現れないので,忙しさに紛れて高を括ってしまいやすいのでしょう。
 情報化と言われながら,子どもに関わる情報が秘かに告げている予兆を読み通す眼力は弱っているようです。今なら間に合います。

(No.50:リビング北九州:98年7月4日:1262号掲載)