《団らんが あって明日も 生きられる》

 仲良し姉妹がいます。お姉ちゃんが遊びに行っていた友だちのお家から,手に小さな箱を持って帰ってきました。出迎えた妹はその箱が気になります。お姉ちゃんがお母さんにケーキを貰ってきたことを話して,妹と分けて食べるようにと言われているのを聞いて,妹はニコッとしています。
 姉妹でケーキを食べていると,お父さんが「なぜお母さんはケーキを分けるように言ったのかな?」と二人に尋ねました。お姉ちゃんはすぐに「妹がかわいそうだから」と答えました。相手の身になって考えられる優しい子です。でも,もし妹が「ありがとう」と言わなかったら,あげて損したなと思うかもしれませんね。
 妹はしばらく考えて「私が貰ってきたらお返しするから」と答えました。頂いたらお返しをすることで,持ちつ持たれつです。お返しをしないと後で何を言われるか分かりません。生活の知恵です。
 二人の答えをニコニコと聞いていたお父さんは,「一つのケーキを二人で分けて食べた方が美味しいと思える子になってほしいからだよ」と言いました。姉妹は互いに顔を見合わせて笑っています。
 学校の道徳教育では優しさを学び,地域の生活学習ではおつきあいを学びますが,それは生きていくためのテクニックです。それも必要ですが,それだけでは生きようとする力は出てきません。生きる喜びを持たなければ十分ではないのです。ケーキを分けた方がいい,分けるべきだというしつけは,分けた方が楽しく美味しいという喜びを身につけるためにすることです。それが家庭教育の担っている目標なのです。子どもの喜ぶ顔が見たいという親心を発揮すれば,子どももお母さんを喜ばせたいと思うようになるでしょう。
 講演の最後にしているお話でした。ご精読を感謝し退場します。

(No.93:リビング北九州:00年3月18日:1346号掲載)