*** 子育ち12章 ***
 

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「第 2-11 章」


『しくじりを 見ない振りする お母さん』


 ■はじめに

 子育ち12章の第2版も,早いものであと残すところ2章になりました。
 これまでのテーマは「何処で,何時,誰が,何が,何故育つか?」でした。
 残されたテーマは,「どのように育つか?」です。

 第1版で,「失敗・反省・学習・挑戦」を繰り返して育つと言いました。
 この育ちの4サイクルが順調に回転していれば,心配ありません。
 そのために親がしてやれることはどんなことでしょうか?

 子育ちとは,もう一人の子どもが自分という子どもを育てることです。
 失敗することで,「しまった」と思うもう一人の子どもが目覚めます。
 もしママが「ダメじゃないの」と叱れば,もう一人の子どもは眠ります。

 親による子育てで最も見落とされていることは,接触のタイミングです。
 タイミングがずれると何遍しても効果はなく,逆効果になりかねません。
 邪魔ですから,「ママに言われなくても分かっている」と反発されます。

 タイミングがずれてしまう原因は,もう一人の子どもを見ないからです。
 「しまった」と思っているもう一人の子どもに,何と言ってやりますか?
 この章で,ご一緒に考えてみることにしましょう。
 


【質問2-11:あなたは,お子さんを励ましていますか?】

 《「励まし」という内容について,説明が必要ですね!》


 〇失敗のない育ちなんて?

 普段はめったに行かないところへ出かけると,道の角を一つ曲がり間違えて迷うことがあります。車であれば路地道をUタ−ンもできず街を大きく一回りしますが,そのとき思いがけないところに出てきて,頭の中の断片的な地図がつながります。間違えたお陰で近道を発見することもあります。

 育っている子どもは何事もはじめてです。手順をとばしたり,こけたり,迷ったり,あらゆる失敗をします。間違えることで,次からはチャンとできるように,自分の地図を完成していきます。間違えずにまっすぐ一本道を行けたら,周りの広がりを知ることはできません。

 課題は最初から解決への道が見えていることはありません。やってみながら,そのときどきで判断材料を見つけ,対処し続けるしかありません。その泥臭くもある不器用なやり方が,安定した育ち方です。ママ好みのスマートな格好いい育ちがひ弱なのは,育ちに無駄な広がりをしていないからです。

 「ママが言うようにしていれば間違いないの!」。育ちの道で迷ってぐずぐずしている子どもにつきあっている暇はありませんから,つい手を引いて連れて行ってしまいます。でもいつまでもママがついているわけにはいきません。やがて放り出された子どもは路頭に迷い,修復する術を知りませんから,ママを恨むかもしれません。「ママの言うとおりにしてきたのに…」。

・・・迷子にならない程度の探検が子どもを育てます。・・・


 〇間違いの発見?

 ママが手紙を書いているとき,途中で書き間違えることがあります。そのとき,新しい便せんに換えて書き直しませんか? 先程間違えたところは無事通過ですが,また別のところで言葉を抜かしてしまい,「ああ,またあ。イヤになる!」と,書き損じの丸めた便せんが増えていきます。

 間違えたらその都度,線で消して書き直し,とにかく最後まで一枚の紙で書き上げることです。自分の失敗を洗いざらい出してやってから,二枚目に書き直せば終わります。はじめから清書しようと無理をするから,かえって手間が掛かり無駄をしてしまいます。

 子どもの育ちも同じです。ママははじめからチャンとできることを期待するから,最初の失敗でご破算にしてしまいます。幼児が着替えるとき,ボタンを留められないからと,ママが全部着替えさせていませんか? ズボンや靴下は子どもが自分ではけるので,取り上げないでください。でもよく見ると,靴下が裏返しであったりします。子どもが自分で靴下を裏返しにはいてしまうから,裏表を注意しなければということにもう一人の子どもが気付きます。

・・・間違えさせる余裕を持つことが,育ちへの励ましです。・・・


 〇失敗したらダメな人?

 「あなただめねえ」。ママから発せられるこの一言に,パパと子どもはどれほど傷ついていることでしょう! これほどやる気を叩きつぶす言葉はありません。図太いパパならいざ知らず,か弱い子どもはひとたまりもありません。絶対に使ってほしくないです。子どもをだめにします。

 子どもの失敗に対しては,パパが「次,できればいいんだ。もう一度やってごらん」,ママが「おしかったわね。もうちょっとだったのに。もういっぺんやってごらんなさい」と言ってやることが真性の励ましです。「ダメな人」という人物評価をする態度は,親による子育てではあり得ません。

 クマさんが子どもだった頃,友だちの間ではお互いの失敗に「ドンマイ」と受けていたものです。当時はドンマイの意味は知りませんでしたが,「Don't mind」=「気にするな」という慰めでした。その言葉にどれほど救われ,やる気を駆り立てられたことでしょう。

・・・失敗した「こども」をダメ評価するのは,鬼の口です?・・・


 〇大きな不始末?

 子どもたちが缶けり遊びをしています。蹴った缶が子どもに当たって,怪我をさせてしまいました。子どもたちは「ボクじゃないよ」と叫びながらいっせいに逃げて帰りました。ある講演会で,こんな子どもたちが育っていると問題提起をされましたが,どう育てればいいのかという指針は一言もありません。聴く方は問題ではなくて,一つの解決策を示してほしいと思っているのですが,「チャンと育てなければなりません」という結論です。

 ママが子どもにいつも「チャンとしなさい」と叱っているので,逆に親として「チャンとしなさい」と叱られています。缶けり遊びの子どもに欠けていたものは,「怪我をして痛いだろうな」という思いやりと,しでかした過ちをまず「ごめんなさい」と謝り,次に怪我の手当をすることです。この責任を取る方法を教えておかなければなりません。

 過ちを自分で認めないような卑怯な振る舞いをしてしまうわけは,「ごめんなさい」という言葉を持たせていないからです。さらには,普段からごめんなさいと言えば許し合うという生活をしていないからです。過ちは誰にでもいつでもあります。ましてや子どもには日常茶飯事でしょう。正直にごめんなさいと言える子どもに育てるには,その一言で許してあげる親の寛容さを与え続けることが必要なのです。

 友だちに怪我をさせてしまったことをうち明けられたら,どうしますか? 「どうして前をチャンと見なかったの!」と叱りますか? その言葉はタイミングを外しています。もう一人の子どもはもうすでにそのことは十分に反省しています。ママに教えてほしいことは,「どう後始末したらいいのか」ということです。子どもと一緒に相手の家に謝りに行くことをしっかりと引き受けてやるタイミングなのです。

・・・子どもの手に余る後始末を引き受けるのも,親の励ましです。・・・


 〇勉強させる?

 「どんな子どもに育ってほしいですか」という調査では,優しい子,人に好かれる子,思いやりのある子などが上位を占め,勉強のできる子は下位です。でも,普段はやはり「勉強しなさい」と口やかましくなります。闇雲に勉強漬けにしてもふやけるだけなのですが。

 子どもに勉強させるためには,「知りたい」とか,「勉強しておいてよかった」と子どもに思わせることです。試験のための勉強ほどつまらないものはありません。お使いに行って釣り銭のチェックをしたり消費税の計算ができたら,算数の勉強をした甲斐があります。

 また,何でもいいですから子どもが答えられそうな質問をして,「何でもよく知ってるね」と持ち上げる手もあります。たとえ学校で習ったことと関係なくても,「知っている」ことをグッドタイミングで認められたら,子どもは自分からもっと知ろうと勉強するものです。

 「どうして一週間は日,月,火,水,木,金,土の順序なんだろう? 不思議ね!」とママが疑問を語ります。子どもには答えられませんが,「ほんとだ,どうしてだろう?」と疑問を共有できます。明日図書館でこっそり調べてママに教えてビックリさせようと,やる気が出てくるかもしれません。

・・・何故?をたくさん見つけてやるのが,勉強への励ましです。・・・


 〇悔しさ?

 クラブ活動の地区競技大会に出場して,負けてしまいます。どうして負けたのかを考え,相手の恵まれた施設と自分たちの貧弱な施設,独占使用できる環境と共同使用せざるを得ない環境に思い至ります。負けるのが当たり前と納得します。もしそうなら,体育館の大きさで競技すればいいことになります。そういう屁理屈を持ち込もうとする気持ちは分かります。

 心配なことは負けた悔しさを正面から受け止めていないことです。施設環境などのせいにして,自分から逃げています。大人も社会や他人のせいにすることがありますが,それでは何の進展もありません。人のせいにすれば気持ちは楽ですが,悔しさがバネをギュッと締め付けてくれるから,反発力を引き出してくれることを利用していません。

 子どもはたくさんの悔し涙を流します。親としては辛いことです。だからといって,ママが転嫁するような屁理屈を持ち出して子どもを慰めようとしないで下さい。もちろん理不尽ことはママが何らかの形で引き受けるにしても,子どもの悔しさは子どものものなのです。

・・・子どもの悔し涙を見守るのも,辛い励ましです。・・・



《励ましとは,子どもの心にタイミングよく点火してやることです。》

 ○よその家でごちそうになって美味しいと感じることはありませんか? 自分流では出せない味に出会ったとき,未熟さを思い知らされ(失敗),「どうしたらこの味は出るのかな?」と疑問を持ち(反省),調理法を尋ねたくなります(学習)。自分の手で作ってパパや子どもに食べさせたいと思うでしょう(挑戦)。こうしてママの腕が上達していきます。育ちの基本通りですね。

 【質問2-11:あなたは,お子さんを励ましていますか?】

   ●答は?・・・もちろん「イエス」ですよね!?

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