『子育ちは 伝わる言葉 身につけて』
■子育てショートメモ■
『子育ちの第5方位』
子育ちの第5方位は,自我がいつ育っているかという指標です。
子どもが母乳で育つように,もう一人の子どもは母の言葉で育ちます。
言葉を手に入れて,人類という種は人間になることができました。
赤ちゃんが何か意味のある言葉を発したら,第二の誕生です。
もう一人の子どもが生まれ,母の言葉を急激に吸収していきます。
ママ,パパ,まんま,イヤ,取って,・・・意思表示ができます。
犬という言葉を知っていると,犬が意識できて犬が見えるようになります。
そこここの雑草という草が見えていないのは,名前を知らないからです。
街ですれ違う人が見えていないのも,名前を知らない人だからです。
私という言葉を使いはじめると,もう一人の自分は自分と対話ができます。
私はママの子,私は女,僕は一年生,私は歌が好き,自分が分かります。
ママは優しい,パパは大きい,先生はこわい,人が見えてきます。
人が生きていく知恵とは,言葉に付随した意味として蓄えられています。
勉強するという営みは,言葉を覚え,思考の仕組みを覚えることです。
どのような言葉を知っているか,使えるか,それは品格を左右します。
家族間の日常生活で交わされる言葉を豊かにしようと心がけてください。
暮らしの中での行動を正確な言葉で表現して覚えさせてください。
テレビの言葉ではなく母の言葉を覚えた子どもが伸びていきます。
【指針27-05:子どもは母の言葉で育っていると思ってください!】
○独話から対話へ
最近,食育という言葉が耳に聞こえてくるようになりました。これまではなじみのなかった言葉ですが,この言葉によって新しい概念を獲得することができます。言葉によって知識が生まれてきました。ところで,健康への配慮は大切なことですが,もう一方の心の健康も忘れるわけにはいかないでしょう。言葉という心の糧に気配りをすることが忘れられています。毎日の何気ない食事,毎日の屈託のない言葉,その普段の心身の糧だからこそ,語育がとても大切だと再認識してください。
「片付けなさい」。子どもはしつこく言われているはずです。一度で済まないのも珍しくありません。意味が通じていないのです。言っている方は片付けるとはどうすることか分かっていますが,言われた子どもはどうすればいいのかが分かりません。具体的に何をどこに納めるのかという手順をいちいち教えてやらなければなりません。一度覚えてしまえば,次からは「片付ける」という言葉の意味が思い出されます。子どもの中に言葉の辞書を作らなければ,言葉は通じないのです。
静かな場所ということを弁えずに,大きな声を出す子どもがいます。「おとなしくしなさい」。子どもは首をかしげてきょとんとしています。「口を閉じて」という直接的な行動を指導した方が有効です。ちゃんと,きちんと,しっかりといった形容的な語句は具体的な内容を先に教えておく必要があります。どのような行動をすればいいのか,動詞で指示することから始めます。その上で,黙っている子どもに「おとなしいわね」と声をかけてやると,言葉を覚えていきます。
子どもが言葉を覚え始めてしばらくすると,口にしてはいけない汚い言葉をしきりに話す時期があります。それが人に悪感情を引き起こすことまでは思いが及んでいません。注意してもあっさりとは止めようとしません。たとえ嫌な顔をされても,相手の反応が面白いからです。自分の言葉が相手に何かしらの影響を及ぼすという言葉の力を目の当たりにして感動をしているのです。でもその感動は母親からの嫌な反応という形で,修正されなければなりません。禁句として封印されます。
子どもの目線に。子どもと向き合う姿勢について語られます。大きな親から見下ろされて言われる言葉は,子どもには重く響きます。何か言われても,何か分からないことがあります。言った方は分かっていますが,言われた方は分かりません。「分かったわね」と念を押されても,分からないと答えるとさらに何か言われそうなので,「うん」と生返事をします。親の独話であり,対話になっていないのです。子どもに分かるように話す,そのために子どもの目線に下がることが大事なのです。
何度言ったら分かるの? 言葉を伝えても,伝わらなければ意味がありません。ムカツク! それで何を伝えたいのでしょうか? 勝手にむかついていれば! 自分に向かって言っているのですから,端の者は聞き流しておけばいいのです。売り言葉に買い言葉。乱暴な言葉は乱暴な物言いを引き出してしまいます。落ち着いた話し方をすれば,落ち着いてコミュニケーションを進めることができます。次号では,言葉遣いについて考えます。
子育てを間違えないようにしようと,力んでいませんか? 育児放棄のネグレクトや,過剰しつけの虐待などは論外ですが,普通に育てていればいいのです。どのような育ちをすればいいか漠然と分かっていても,例えば時期を誤って逆効果になる場合があります。そんなときは出直せばいいのです。ちょっとしくじった。でもやりなおしをすればいい。子どもはそんなに柔ではありませんし,すぐに固まってしまうわけでもありません。行きつ戻りつするのがかえって良いと思っておいてください。
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