*** 子育ち12章 ***
 

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「第 3-13 章」


『どうしろと 言うのかママは 叱るだけ』


 ■はじめに

 皆さんは,自分がよい人だと思いますか?
 それとも,自分はわるい人だと思っていますか?
 おそらく,格別よい人でもないし,かといってわるい人でもないでしょう。

 その皆さんが,子どもにはよい子であってほしいと願っています。
 ママとしては,わが子をよい子にするために,しつけをしています。
 その手段として,ほめたりしかったりしているはずです。

 ほめる・しかるは日常のことなので,それほど迷うことはないでしょう。
 でも一度しっかりと,このことについて考えてみませんか?
 ほめ方・しかり方を間違えると,逆効果になることもあります。

 ママはお子さんをしっかり見守っているはずです。
 お子さんのすることがいちいち気になってはいませんか?
 それが気に障るということであれば,要注意です。

 この特別号では,子どものすることの気にし方を整理しましょう。
 その上で,ほめ方・しかり方の5W1Hを考えておきます。
 さあ,12章の総復習の始まりです。



【質問3-13:あなたは,お子さんのすることが気になりませんか?】

 《「気になる」という内容について,説明が必要ですね!》


 〇どこで,ほめる・しかる?

 ママがパパを呼ぶと,「ウン」という返事が返ってきます。ママが子どもを呼ぶと,「ウン」と返事をします。「ウン」じゃないでしょ! 返事は「ハイ」よ。「だって,パパだってウンと言ってるもん」。「パパはいいの!」。「どうしてパパはいいの?」。「うるさいわね,この子は」。

 子どもは大人に対しては「ハイ」と返事をするものだという社会性のしつけですね。たとえ親であっても,大人として対応する訓練です。普段をいい加減にして,改まったときにだけ急に改まろうとしてもうまくいきません。正式の返事に慣れておいて,くだけるときにくだけるのは楽です。成人式で醜態を見せる若者は,自分の社会的な立場をきちんとしつけられていなかった例です。

 子どもに子どもとしての社会的立場に相応しい生活習慣を身につけさせることは,子どもに社会的な「居場所」を確保させる意味があります。子どもと大人の対等な関係を,子どもが大人ぶることであると錯覚させないようにしましょう。幼いときは妙に大人びていると可愛いと許されることもありますが,児童になると礼儀を知らない生意気な子と思われ,社会的な居場所を失うことが現実です。子どもも社会という場で生きていくことを気にかけましょう。

 大人を相手とする社会性を育てるのは,近所や地域の大人とのつきあいです。親とは違って少し改まったつきあい方が必要な場です。よその大人に「ちゃんと返事ができて,えらいね」とほめてもらえば,子どもはきちんとすることの意味を実感的に納得できます。でも,お隣さんとのお付き合いがないと,よその大人の役を親自身が果たさなければなりません。親がよほど上手に立場を使い分けないと,子どもは混乱してしまいます。

・・・家庭間でほめたり,しかったりすることが自然です。・・・


 〇いつ,ほめる・しかる?

 「あなたはいつもそうなんだから」と,ママがパパを問いつめています。子どもは「ボクと同じことを言われている」と思いながら,パパの様子を見ています。いつもと言われたら,どうせ私はそうですよと,開き直ってふてくされるしかしようがありません。叱るときは,そのときの一つだけを叱ることが基本です。前のことを持ち出されても,どうしようもないからです。

 叱ったり,ほめたりするタイミングですが,一通りのことが終わってからにしましょう。もちろん,途中で中止させなければ危ない場合は,即座に止めさせます。そして,どこが拙かったのか,よかったのか,具体的に示さなければ意味がありません。「どうしてちゃんとしないの!」では,何が叱られているのか分かりません。叱るときにはその意味が子どもに分かったのか,気にしましょう。

 コップのジュースをこぼしてしまいました。「どうして余計なことをするの」と叱りつけながら,ママが一人であたふたと駆け回ってお終いになっていませんか? まず子どもにさせることは,「早くティッシュを持ってきなさい」,「たくさん取ってジュースの上にかぶせて」と,一緒に後始末をします。その後で,「どうしてこぼしたの?」と一緒に考えます。コップを持ったまま立ち上がろうとしたので,思わずコップを倒してしまったようです。これからは,まず立ってからコップを持つようにしようねと,諭します。

・・・理由が分かったとき,叱られがいがあります。・・・


 〇だれを,ほめる・しかる?

 まだわけも分からない乳児がティッシュを箱から引っ張り出しておもしろがっています。ママは気がついて,「ダメ」と大声で叱ります。子どもはその声にびっくりして止めますが,意味が分からないのでまたティッシュに手を伸ばします。ママは手の甲を軽くつねります。小さな体罰ですね。物心つくまではもう一人の子どもはまだ誕生していませんから,動物的な軽い痛みによるしつけも仕方ないでしょう。くれぐれも冷静に軽くしてくださいね。

 もう一人の子どもが誕生する幼児期には,わけを分からせるようにしなければなりません。叱る相手は身体ではなくて,もう一人の子どもです。妹を叩いてしまった男の子を,「あなたはお兄ちゃんなんだから,幼い妹に手を挙げてはいけません」と自覚を促すようなしかり方がいいでしょう。ボクはお兄ちゃんなんだともう一人の子どもに気付かせるのです。

 子どもは自分のことを名前で呼ぶ時期がありますね。名前で呼んでいるのがもう一人の子どもであり,そのときが誕生の時期です。「しんちゃん,一人でお留守番できて,えらいね」と名前を言ってやれば,もう一人のしんちゃんが「しんちゃんはえらい」と自分を信じるようになります。それが自信なのです。ママがほめたり,しかったりすることで,もう一人の子どもを育てて応援していることになります。

・・・もう一人の子どもを気にしてくださいね。・・・


 〇なにを,ほめる・しかる?

 私たちの暮らしはいろんな約束事によって成り立っています。数え上げればきりがありませんが,大きく二つに分けることができます。してはいけないことと,した方がよいことです。子どもにその二つのことをはっきりと分けて教える方法が,叱ることとほめることです。

 私たちの暮らしはギブアンドテイクのネットワークになっています。ところが,豊かさの中で個人の欲が解放された現在,テイクアンドギブに逆転してしまいました。ものを手に入れたいというテイク優先になったことです。万引き,自転車盗,オヤジ狩りなどの非行をはじめ,わがままな言い分はどれもテイクすることです。このテイク優先がものの豊かさが生み出した社会の影響の実体なのです。

 心の豊かさは優しさや思いやりといった形になりますが,その基本はギブを優先することです。子どもたちが人付き合いを苦手とする理由はお互いがテイクしようとするからです。ギブしようとすれば,誰とでも仲良くなれるはずです。ただ,ものを与えることで人とのつきあいを得るという意味ではないことはもちろんのことです。ママが子どものすることを気にするわけは,ギブかテイクかを見極めたいからではないですか?

・・・ギブ行為をほめて,テイク行為をしかりましょう。・・・


 〇なぜ,ほめる・しかる?

 うちの子にはほめる所が無いというママの声が聞こえてきます。でも,それは少し違います。子どもを育てる場合のほめるとは,先行投資なのです。ほめることによって,ほめる所を育てあげるのです。「ママ,きれいだね」と言われたら,「何を考えてるの?」と言いながらも,ちょっとはうれしいですよね。そしてやがて,本当にきれいになります(失礼!:一般論です)。子どもだってほめられたら,いい気分になります。気持ちが前向きに向かい,伸ばそうという意欲が湧いてくるでしょう。

 公園で子どもがふざけて石を投げたら,「危ないでしょ」と厳しく叱りますね。冗談でもしてはいけないことがあります。叱られるといい気はしません。ついふてくされてしまいますが,「その態度はなに」と追い打ちをかけられます。この気分を害することが大事なのです。いけないことをすれば気分が良くないという条件反射が,叱るしつけの目標です。おもしろがってしていたことが,一転して嫌な気分に落ち込ませることになったという体験が,いけないことへの歯止めになるからです。

 よいことは気持ちよく,いけないことは気分が悪く,その結びつきが大事です。この気持ちのしつけができていないと,屁理屈がまかり通るようになります。悪いと分かっているのに他人の自転車を無断借用しても平気な子どもは,気分が悪くなるという本物のしつけをしてもらっていない子どもです。

・・・しつけとは説得ではなくて,気持ちの刷り込みです。・・・


 〇どのように,ほめる・しかる?

 どんなことをほめたり叱ったりしますかと尋ねられたら,いけないことをしたらしかり,よいことをしたらほめますとママは答えるでしょうね。その通りなのですが,そうでないときもありませんか?

 覚えがありませんか? 何もしてないのに叱ることはありませんか。ママが片づけるように言っていたのに,放置していたら叱りますね。子どもはしぶしぶ片づけます。そのときママは何も言いません。本当は,片づけたらほめるべきなのです。叱ってさせるから,ほめることができなくなってしまうのです。叱ってしつけることは,子どもに何をしたらいいのかを見えなくする恐れがあります。

 叱られないために片づけをするということでは,しつけではありません。○○したら叱ったりほめたりするのですが,○○したらとはした後という意味です。する前に叱るのはルール違反です。子どものした行動を悪いこととよいことに区分けして評価してやるのが,叱る,ほめるのしつけです。

 ママは言うことを素直に聞く子をよい子,聞かない子をわるい子と思いがちです。そこでどうしても言うことを聞かせようと叱る方に傾いていきます。それが叱ってさせようというしつけになるようです。よく言われるほめて育てようというアドバイスは,このことを心配して出てきたのです。

・・・子どもがしたことをした後で気にかけてください!・・・



《気になるとは,ほめる・しかるのスタートの段階です。》

 ○叱るとは悪い芽を摘み取ること,ほめるとはよい芽を育てることです。叱って育てることは不可能です。子どもたちは叱ることの好きなママを口うるさいと受け流そうとしています。そうしなければ育てないことを本能的に感じ取っているからです。そのことがママを余計にいらだたせてしまいます。叱る方も叱られる方も気分のよいものでありません。ほめればどちらも気分よくなれます。明るい家庭とはお互いが気持ちよくなれるものではないでしょうか?

 【質問3-13:あなたは,お子さんのすることが気になりませんか?】

   ●答は?・・・どちらかと言えば,「ノー」ですよね!?

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