『子育ちは 一つ一つを やり遂げて』
■子育ち12情動■
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『子育ち第11情動』
【動機情動!】
《まえがき(毎号掲載)》
子育て羅針盤では,子どもの育ちを6つの方向と2つの領域から考察します。6つの方向とは,「誰が,どこで,いつ,何が,なぜ,どのように育つのか」という問題視座です。また,2つの領域とは,「自分の育ち(私の育ち)」と「他者と関わる自分の育ち(私たちの育ち)という育ち」の領域を表します。6つの方向にそれぞれ2つの領域を重ねた12の論点が「子育て羅針盤」の基本的な考察の構成となります。
この第89版では,情動知能について触れてみるつもりです。内省的知能と対人的知能,つまり自分自身を見つめる知能と,人と人との間の関わりに関する知能に分けられています。この羅針盤で考えている「私の育ち」と「私たちの育ち」に対応しています。人としての育ちの全体的なイメージを構成できる助けになればと願っています。
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《やる気》
やる気がないと,人は何もしなくなります。やる気を出してほしいと願うのですが,簡単ではありません。檄を飛ばす、尻をたたくというやり方が,体罰という一線を越えていくことになりかねません。内なるやる気を引き出すつもりで、外なる痛みでたたき出そうとしてしまいます。北風と太陽の話を知っていても,それを生かさなくては知恵を無駄にしていると反省しなければなりません。深いところに芽生えたやる気を膨らませる仕掛けが機を動かすという動機になります。
○お子さんは,自分でやろうと思ってやり始めたことは、続けていこうとしていますか?
根気という言葉があります。根っこの気概というのでしょうか。思うことは頭ですることです。思うだけでは何も起こりません。思ったことを実行に移すためには,根っこという自分のもっとも奥深いところからわーっと湧きあがってくる気概を静かに持続的に注ぎ込まなければなりません。熱しやすく冷めやすいという一時的なものではなく,穏やかなひたむきさを育ててやりましょう。遊びの中でひたむきになっているとき,そのひたむきさに水を差さないようにしましょう。やっていることがつまらないことであったとしても。
○お子さんは,一度やり始めたことは,最後までやり通したいと思っていますか?
親がしつけることの中に,きちんとするということがあります。具体的にはどういうことでしょう。一つは,けりが付けられるということです。中途半端に終わるということはだらしがないということになり,きちんとしていないのです。どんなことをしていても,仕上がりということがあります。それが最終に至らないときにも,一応のけりがあります。今日はここまでにしておくといった区切りです。そこまで仕遂げると気分が良いという経験を持たせてやってください。遮ることで中断する癖をしつけないようにしましょう。
○お子さんは,すぐにできなくても、大切なことはやり続けるようにしていますか?
すぐにできてしまうということは、すぐに飽きてしまうものです。すぐにできないことは,必ず休みが入ります。疲労の回復のためとか,一日が終わるといった条件によるもので,中断はやむを得ません。大切なことは,一気にやり続けるということではなく,具体的にいえば,再開する、続きをつなぐことです。今日はここまでと区切りを付けることが大切ですが,そこでもう一歩,明日の分に入り込んでおくつもりにしておくことです。例えば,寝る前に明日の準備をしておくといったことです。続きをつなぐことが頑張ることです。
継続は力なり。そういう言葉が色紙に書かれます。昨日を今日につないでいくと,知らないうちに力が付きます。今日やっておくことを,明日しようと先送りしていくと,続きが途切れて力は空回りするだけです。ところで,社会では,個人の力が他者の力とつながることで,より大きな力を発揮できるようになります。逆に,自分本位な力や気まぐれな力は信頼されないので,つながりが拒否されることになります。孤立している力は邪な向きに暴走するか,彷徨うことになります。力はつながることで価値が備わります。
★落書き★
奈良の大仏様の顔は1691年に、山田遺安によって作られました。顔の制作を依頼されたものの,どんな顔にすればいいのか思案にくれた彼は,家の前に大きなカゴで作った大仏の顔の模型を置いて、隠れてアンケート調査をすることを思い立ちました。自分は模型の中に隠れて,道行く人がどんな感想を言うか、それをヒントにしようというわけです。こうして、江戸時代の市井の人の意見を取り入れて生まれたのが,それまでの大仏の顔とは違った顔なのです。
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