【第4章】価値ある能力の発揮

〜あなたのお子さんは,力を正しく自覚していますか?〜

 《4.1》 子どもの言動が,社会的な面で間違っているようですが?

 日常の暮らしでは「済みません」という挨拶が多用されています。お互いに迷惑を掛けず,邪魔をしないように暮らそうとする社会的な知恵です。ところがその反動として,弱者のようにやむを得ず迷惑をかけてしまう人を非難するようになります。自分は迷惑をかけていないのだからと,迷惑の引き受けを冷たく拒否します。
 売春で補導された中学生が,「自分はお金を貰えるし相手も喜んでいた。誰にも迷惑を掛けてない」と警察官に開き直るそうです。迷惑を掛けなければ何をしても良いという風潮が蔓延しています。自分勝手で閉鎖的な言動に心の貧しさが見えてきます。
 若者の行動を決める尺度が,社会的価値である善悪や正邪ではなくて「個人の安全」優先になっているのも気がかりです。個人が身綺麗さを求めるあまりに,人とのつながりがサラサラしたものになり,人間社会が砂山のような脆さを露呈しはじめています。

答 「社会的な価値観のメルトが起こって,子どもがさまよっています」