【第4章】価値ある能力の発揮

〜あなたのお子さんは,力を正しく自覚していますか?〜

 《4.5》 何が育とうとしているのですか?

 親は子どもが善いことをしたらほめ,悪いことをしたら叱っているつもりです。しかし実際には少しピントが外れていることがあります。例えば,手伝いをしたら善いことをしたので当然ほめますが,手伝いをしないときはさも悪いことをしたかのように叱ります。手伝いをしないのは決して悪いことではなく普通のことです。悪いこととは嘘をつくようなことです。嘘をつかないから善いことをしているとは言えません。それは当たり前のことです。子どもは善いことも悪いこともしない普通の生活をしていて,ときどき善いことをしてほめられ,悪いことをしでかして叱られます。親からのほめる・叱るの二つのしつけで,子どもは普通からはみ出す善悪の境界をしつけられているのです。
 「強くなければ生きていられない。優しくなければ生きている資格がない」と映画の主人公が語ります。輪の中に入れない子どもに「もっと強くなれ」と背中を押すことがありますが,少し酷です。入れない子どもを見たら「おいで,一緒に遊ぼう」と言えるような子どもたちを育て忘れています。豊かな子ども社会を作るという目標を掲げて,弱い子を強くしようとする傾向がありますが,大事なことは強い子に優しさを育てることです。その方がずっと現実的です。子ども社会の現状から反省すべきことは,いじめという悪を平気でしてしまう強い子どもを育てたことです。

答 「善いことに力を向けようとする価値観が育ちます」