【第5章】可能性の開拓

〜あなたのお子さんは,生きようとしていますか?〜

 《5.5》 なぜ育とうとしているのですか?

 カール・ビューラーによれば人は潜在する機能を使えば楽しいという機能快を持つそうです。歩けるようになると快感がある,言葉を覚えれば話す機能が満たされます。自分の機能が発揮されると,もう一人の自分の自己実現欲求が満たされるということです。
 親は子どもに潜在する機能を可能性と見て,期待をかけます。ところが親の期待に満ちた見守りを子どもは「見張られている」と感じています。子どもは親が喜ぶからと親の期待を背負っています。自己実現ではなくて,親の期待実現に追い込まれています。親の愛とはあるべき姿を期待することではなくて,ありのままの子どもを受け入れあるがままの子どもを愛することです。そうしないと,期待に沿わない子どもを憎むようになります。
 期待像を「あるべき姿」と考えるから,現実の弱さをマイナス評価しあせりが生まれ,挙げ句の果てにはダメな子と見てしまいます。「ありたい姿」と考えれば,将来の可能性をプラスに評価できるゆとりが得られます。
 レビンによると,達成の動機付けは実現可能性と目的の魅力に分けられます。子育ちにおける実現可能性とは自分が育っているという実感の先に見つけるものであり,目的の魅力とは自分の将来である親の魅力を見つけることです。

答 「魅力ある将来が見えると,自己実現欲求が育ちの原動力になります」