*****《ある町の社会教育委員の活動》*****

【第4章 社会教育計画書の作成について】

 我が町では,毎年「社会教育計画書」なるものを教育委員会が発行しています。その案文つくりを社会教育委員の会が請け負ってきました。その作業プロセスを以下に紹介させて頂きます。計画書の内容は,当該年度に何を目当てに何をなしてゆくかという計画の概要をまとめたものです。

《担当分野》
 組織的な体制について,はじめに説明しておかなければなりません。町の社会教育委員は定員10名ですが,それぞれに担当の専門分野を持っています。「成人教育分野」,「公民館分野」,「社会体育分野」,「芸術文化分野」の4分野に,それぞれ2〜3名が割り振られています。「青少年育成」については,重要な課題であるとの認識から全員が担当することにしています。

《協議の流れ》
(1)2月にそれぞれの分野ごとの部会を開きます。社会教育委員と社会教育課職員からなる会議で,分野ごとの活動計画と実績をつきあわせて,反省並びに評価を行い,次年度の課題を明らかにします。
(2)3月の社会教育委員の会で,各部会から提出された反省等について具体的な報告を受け,全体的な評価を話し合います。さらに青少年育成については,このときに全員で振り返ることにしています。
(3)4月の社会教育委員の会で,新年度に向けた計画書を練り上げていきます。はじめに,全体的な基本方針について協議がなされます。その上で,青少年育成についての実施計画,並びに部会から提案された分野ごとの実施計画が練り上げられます。内容の精選,わかりやすい文章表現,全体のバランスなど,字句の修正も含めて,活発な論議が展開されます。
(4)5月の社会教育委員の会では,新年度計画書の原案について最終確認と校正を行います。その承認が得られた上で,完成した計画書が会長により教育委員会に提出されます。その承認を受けた計画が教育委員会名で正式発行されます。
(5)6月の生涯学習研修会において,社会教育計画書が出席者に配布され,さらに社会教育委員から説明することが恒例になっています。ただし,生涯学習研修会の持ち方にマンネリ感が現れ始めているので,社会教育計画書の説明機会が短縮あるいは廃止に動きつつあり危うくなってきています。

《付帯する情報》
 社会教育計画書には,「基本方針と重点目標,具体的方策」といった主題のほかに,いくつかの情報を同時掲載することにしています。
 「町民憲章」,「町歌」,「人口構成グラフ」のほかに,「年間の社会教育行事の分野別月別予定表」,「社会教育委員名簿」,「体育指導委員名簿」,「社会教育関係団体代表者名簿」,「自治公民館名簿」がまとめられています。

《配布先》
 この社会計画書が誰の手に渡っているのかということも大事なことです。生涯学習研修会に参加する町民に配布されますが,その参加対象者は次の方々となっています。
 町職員,町議会議員,教育委員,社会教育委員,体育指導委員,分館長,分館主事,分館体育委員,青少年指導員,子ども会関係者,学校関係者,PTA,保護司,人権擁護委員,民生・児童委員,体育協会,文化協会,婦人会,青年団,空と海の会,老人クラブ,その他一般町民。
 社会教育分野に関わっている指導的立場にいる方々が中心です。もっと広く配布すべきであるという考え方もありますが,事業や体制に関する計画が主になっている内容なので,現状でよいと判断してもよいでしょう。

 
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社会教育計画書

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  1.基本方針
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 21世紀に入り我が国は,今まで謳歌してきた大量生産・大量消費時代の矛盾が浮き彫りとなる一方,急激な国際化と情報化の荒波にさらされる中,社会的にも文化的にもそして地球環境上でも,限りある社会での「共生」の時代を模索している。

 我々は,先人が築き上げてきた歴史に対する正しい認識と反省のもと,平和国家への希求と生活向上に努力を積み重ね,現在の繁栄した社会を築くことができた。しかし,この平和で豊かな社会の恩恵を甘受し,慣れ浸り,それ故の新たな課題に直面することとなった。所得水準の向上・余暇の増大などに伴う活動範囲の拡大と価値観の多様化,国際化・情報化に伴う社会生活の急激な変化,そして高齢化・少子化に伴う社会構造の変化などに対し,我々は共通の新たな価値観・倫理観を創造する必要に迫られている。このような時代を背景に,人々の生涯学習に対する関心が高まってきている。

 平成12年度に実施された「生涯学習住民意識調査」によると,町民の生涯学習活動率は 76.2%で,平成4年度の調査に比べて11.6ポイントも増加しており,また,総理府による調査の全国平均よりも3割強も高く,〇〇町における学習活動は着実な進展をみせている。

 こうした中で,我々〇〇町民一人ひとりが社会教育の必要性を認識し,町が提唱する第三次〇〇町総合計画と『太陽と緑の町』づくりをめざす『〇〇町民憲章』の実現に向け,個性ある,活力に満ちた人づくりを基盤とした地域社会を築き上げていくことが強く求められている。

 本年度は今まで進められてきた実績を基盤として,町民一人ひとりが郷土の自然や伝統文化を生かしつつ自己研鑽を図れる環境づくりに努める。また青少年の育成については,青少年問題協議会を核として家庭・地域・学校と一体となって取り組めるよう,組織化を進める。

 以上のことから,活力ある豊かなコミュニティづくりをめざし,生涯学習推進を担う社会教育の本年度重点目標及び実施方策を定め,「語らいとふれあいのある町に」を合言葉に,その活動を展開する。


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  2.重点目標
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 基本方針にのっとり,今まで継続してきた活動を反省・検討・評価し,生涯学習体制の充実とその広報に努め,さらに一段と活力に満ちた諸活動を推進・援助する。特に次の時代を担う青少年が健やかに,心豊かに成長できる環境を形成しなければならない。

  ○青少年教育

 青少年が健やかに,心豊かに成長できるには,町民一人ひとりの理解と協力が必要であり,それらを支える組織づくりに努める。

  ○成人教育

 次世代に誇れる自然と文化の伝承者としての自覚をうながし,自己研鑽を図る学習機会と活動の場を提供する。

  ○公民館活動

 町民,特に青少年の積極的な地域参加による,意欲ある活動を推進する。

  ○社会同和教育

 すべての町民が人権を尊ぶ社会の形成に向けて,啓発活動を活発に推進する。

  ○社会体育活動

 町民一人ひとりが心身共に健康で活動的な町づくりをめざし,生涯スポーツ・青少年の地域スポーツクラブ等の育成と普及に努める。

  ○芸術文化活動

 歴史的・国際的に多様な文化情報にふれることのできる環境の充実と,心を豊かにする学習活動の展開を図る。


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  3.具体的方策
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 1.青少年教育

 次の時代を担う青少年の健全育成は,明るく住みよい町づくりを推進していく上で特に重要な課題であり,家庭・地域・学校がそれぞれの機能を有機的に提携し,一体となっての理解と認識に立った積極的な対応がなされなければ,その実は望めない。家庭におけるしつけ,特に善悪の判断力・思いやりの心・自立心・忍耐力などはその基本となるものであり,家庭教育の振興と援助に努める必要がある。また地域や学校も家庭と連携し,青少年の活動の場をより多く提供することは,地域の活性化を進めるとともに,青少年の健全な育成にとって重要なことである。
 このことを町民一人ひとりが理解し協力することにより,青少年が健やかに成長できる環境づくりを進めていく。

  (1)乳幼児・児童・生徒・少年

1.母親・妊婦教室等による育児学習の場の提供
2.健康課等専門機関との連携による,両親の家庭教育・育児学習の場の拡大
3.保育所・幼稚園における両親への幼児保育についての助言
4.小・中学校の教育方針の共通理解に基づく町民活動の推進
5.学校週五日制に対応した地域・学校・PTAなどの幅広い協力体制の確立
6.地域リーダー及び指導者の掘り起こしと併せ,講座・研修会の開催による養成の推進
7.教育相談の窓口や,民生児童委員・更生保護婦人会等の協力・活用による対策の充実

  (2)家庭・地域社会

1.父親の家庭教育・地域社会活動への主体的・積極的参加の促進
2.高齢者による,人生の先達としての不変の「基本的社会道徳」の伝達,及び育児への積極的な指導助言と参加
3.地域子ども会並びに子ども会育成会組織の確立と,活動の促進
4.「青少年育成町民の会」組織,特に各区青少年指導員並びに民生児童委員の活発な活動による,全町あげての具体的実践対応の展開
5.一般少年を含めた,町・区・クラブの行事並びに「青少年の翼」「少年の船」等の諸行事への参加促進
6.ジュニアスポーツを通して心身共にすこやかな青少年の育成と,スポーツの振興と参加への対策の強化

 2.成人教育

 生涯学習社会における「成人教育」の役割は,成人各層の望ましい学習の在り方を求めるとともに,時代の変化や住民のニーズに応えられる学習機会と,活動の場の提供や情報提供などの条件整備に努めることである。そしてその学習が本人だけのものに止まらず,健全な社会を支えリードする社会構成員としての成人の資質づくりにつながることが必要である。

  (1)青年

1.地域と連携した活動による,青年団組織の拡充と運営
2.青年の特性を活かした意欲的・躍動的な活動を通し,先輩同僚としての指導性の発揮
3.21世紀を担う青少年のリーダー養成

  (2)壮年

1.社会教育諸団体の学習活動への参加による,家庭・地域・社会環境の現状認識と,環境整備への理解と協力
2.家庭・地域・社会での,責任の認識と義務の遂行
3.〇〇町生涯学習についての理解と協力体制の確立
4.PTA活動の活性化,及び地域との連携

  (3)女性

1.婦人会における生涯学習活動を通して近隣同士との交流を深め,自己啓発と社会参加の推進
2.家庭の主婦としての立場に立脚した,明るい家庭環境づくり
3.若年家族の子育てへの積極的な支援など,女性の特性を活かしたボランティア活動の推進

  (4)高齢者

1.老人クラブの”語らいと楽しみ”の魅力ある活動によるお互いの交流と,地域に密着した取組みの中での『生きがい』の醸成
2.伝承文化の貴重な指導者として,ボランティア人材派遣活動への積極的な参加と活動の促進
3.「健康」「友愛」「奉仕」の基本精神に基づく社会参加活動の推進

  (5)成人教育推進の方策

1.成人各層におけるリーダー養成講座の開設
2.リーダーの学習成果を評価する場と社会に還元できる場の提供
3.リーダーの実践活動への指導と援助
4.学習講座実践活動の情報提供と相談事業の推進
5.地域住民の世代間交流と魅力ある取組みによる「生きがい」の醸成

 3.公民館活動

 中央公民館及び各行政区の自治公民館は,あらゆる機能を発揮し,生涯学習推進本部や行政など各機関との提携を密にし,町民の学習ニーズに対応できる施設設備の充実活用を図り,具体的な計画と指導の展開を図る。
 町民,特に青少年の積極的な地域参加を促進する方策の明確化,さらには自治公民館の常時開放など,間近に迫った学校週五日制の完全実施を視野に入れた家庭・地域を基盤とした効果的実践活動の在り方について研究する。

  (1)中央公民館

 中央公民館の老朽化に伴い新たな文化施設の建設が検討されているが,21世紀を見通した本町における生涯学習の課題に十分に応えることができるように,多角的な検討が必要である。

1.生涯学習推進本部及び町民の活動の要となる指導者の確保,並びに組織の機能的運営の強化
2.全町的生涯学習の具体的計画・実践への推進指導,及び分館主事への支援
3.自治公民館及び各種団体・サークル等,自主的な活動の一層の推進と,相互の連携の強化
4.子ども会指導者育成のための講座・研修の充実
5.青少年に国際性を涵養するための諸事業の企画及び運営の改善充実
6.生涯学習の一層の充実を図るため,近隣市町の諸施設をネットワーク化するなど,効果的相互活用の積極的検討

  (2)自治公民館

1.各区とも明るく住みよい町づくりの推進をめざし,特色ある「活動方針」の設定に努める。
2.中央公民館及び生涯学習推進本部,並びに他区自治公民館との相互連携・交流による自治公民館活動の活性化
3.「自治公民館学級」における学習内容の定期的相互交流による一層の充実
4.「青少年育成町民の会」支部活動の核としての青少年指導員の定期的活動の徹底と,区民・各組織との連携による,地域の実情に合わせた環境浄化と非行防止活動の展開
5.学校週五日制の円滑かつ効果的な実施のため,児童生徒の活動の場としての自治公民館の一層の開放,及びこれに伴う指導者の確保のため,子ども会育成会の充実とボランティア人材の積極的発掘・導入

 4.社会同和教育

 一人ひとりを大切にし,同和問題の早期解決をめざすため,「同和対策審議会答申」をはじめ「同和問題の早期解決に向けた今後の方策について」の閣議決定などの趣旨をふまえ,「だれもが,幸福で生きがいのある生活の実現を願う基本的な権利」としての人権をすべての人が等しく認めあい,尊重しあう社会の実現をめざす。
 21世紀は「人権の世紀」といわれているように,世界の動向に即して「人権教育のための国連10年」(国連決議)に関する国内行動計画のもと,地域の実態に応じた人権教育と啓発の充実に努める。

1.社会同和教育推進体制の充実強化
2.同和・人権問題啓発事業の充実
  ○同和問題啓発強調月間町民大会
  ○人権を尊重する町民のつどい
  ○街頭啓発
3.指導者育成のための諸研修会の実施
 (詳細は「〇〇町社会同和教育計画書」による)

 5.社会体育活動

 町民一人ひとりが心身共に健康であることこそ,明るい家庭・町づくりの基本である。我が国は恵まれた経済社会と保健・医療の充実に伴い長寿大国を誇りつつ,一方で高齢化社会への対応,青少年の体位の向上に比べ体力・抵抗力の低下や早期成人病の誘発等,多くの課題を克服しなければならない。
 また,青少年犯罪の低年齢化,非行・いじめの多発,そして学齢児童・生徒の不登校問題等への対処として,「心身の健康」の確保・「生きる喜び」の創出が重視であると考えられている。さらに今我々が不足がちである忍耐力・持久力,そして社会生活でのルール遵守の精神等の育成への取組みも考慮されなければならない。
 このような状況を勘案するとき,スポーツの重要性は明らかであり,生涯スポーツとして継続的に健常者・障害者を問わず,「町民すべてが一人一つ以上のスポーツ」を楽しめることを目標に,施設の整備・運営と機会の拡充に努める。

1.〇〇〇ドーム・町民プール活用のより一層の推進
2.全町民に対する軽スポーツの普及紹介とレクリエーションクラブの振興
3.各地域スポーツクラブ・レクリエーションクラブの活動援助と町民参加の機会拡大
4.町内における体育指導者の一層の育成と把握,及び区体育委員長の連絡協議・研修による指導体制の充実
5.学校週五日制の完全実施を考慮し,地域における受け皿づくりの確保・推進を図り,体育指導員・自治公民館等,関連諸機関連携への具体的方策と取組み

 6.芸術文化活動

 〇〇町民憲章の実現には,健康の確保とあいまって情操の涵養が不可欠の要件である。
 町民の学習ニーズに即した情報提供サービスを展開し,誰もが気軽に図書や視聴覚教材に親しく接する機会の充実を図る。
 祖先が残してくれた貴重な芸術・文化遺産を再認識し,これを伝承し,広く文化財の愛護思想の啓発をおこなう。あわせて,豊かな家庭・社会生活の実現に向けた町民による取組みを支援し,さらに世界的視野に立って国際社会人としての教養と生活習慣を身に付けられるように努める。

1.現中央公民館の後継文化施設の早期建設の実現
2.〇〇フォーラムの整備充実と,町民による利用の推進
3.歴史資料の収集強化及び適切な整理・展示と,埋蔵文化財・伝承文化財・無形文化財による文化財の愛護思想の啓発
4.文化祭・音楽会・映画会・講演会などの文化行事の開催を通して,国際化と情報化への理解の促進
5.町民の活発な学習参加推進のため,学習機会情報の収集と提供の充実
6.町民による自立的文化活動の支援と多様化への誘導


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《コメント》
 年間の計画としては内容が多岐かつ非常に豊かであり,とても一年で達成できるものではないと感じられることでしょう。それぞれの活動は集中しても数年がかりになるものばかりです。〇カ年計画のような中期及び長期計画と言ってもいいようなものです。ただそれぞれが一年ごとに少しでも進捗すればいいと考えていますし,年度末の反省でもそのような視点から評価をしています。
 実践者が全体のバランスを見極めておくことも大事と考えますので,設計図といった性格も持たせています。例えば,いくつかの目標の中から今年はこれを取り上げようという判断をするとき,比較すべき項目があれば選びやすいということもあります。うちの組織ではこの項が弱いといった判断です。それにその選択は組織毎に違ってくるはずです。多様な組織が絡んでくる計画であるため,網羅的にならざるを得ないという面もあります。
 いずれにしても,すべてにこだわる必要はないと楽に受け止めてもらえればいいと思います。