*****《ある町の社会教育委員の活動》*****

【第7章 新任者へのメッセージについて】

 ご縁という人的ネットワークのお陰で,県の社会教育委員新任者研修会の中で,30分間の「実践発表」をさせて頂くことになりました。就任時に抱いていた不安をあらためて思い出します。その初心が払拭できたわけではありませんが,これまでにやってきたつたない歩みを紹介することで,役目を果たさせてもらおうと勝手に決めております。

 一つには,社会教育委員が出席できるさまざまな研修会では,社会教育委員の姿が見えないという不満がありました。具体的なイベント行事が紹介されます。それはそれで一つの参考ではあるのですが,そのような行事活動は社会教育委員が関与しなくても可能です。団体組織を基盤にする委員は,自らの団体活動と社会教育委員活動を混在させてしまう傾向が見られます。社会教育委員には行事実行に関わる権限は与えられていません。

 社会教育委員に求められているのは,個々の具体的な社会教育活動ではなくて,それらを統合する大きな視野を持つことです。設置されている場を考えれば一目瞭然です。市町村を単位としているということは,市町村全体としての社会教育活動のバランスと進展が課せられているテーマなのです。

 新任者に対する先輩からのメッセージとして,何を考え,何を感じ,どうしてきたか,その経験を披瀝する機会を得たことを期に,社会教育委員の在り方を整理しておくことにしました。以下に,配付資料の内容と,それぞれに対するコメントを付記しておきます。

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平成14年度 県社会教育委員新任者研修会

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  【実践発表:社会教育委員とは,印籠を持たない黄門様である】

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1.社会教育委員になって,最初にしたこと:「求められている役割は何か?」
○「社会教育法」,および「町社会教育委員に関する条例」等の学習
 ・第13条:地方公共団体が社会教育関係団体に対し補助金を交付しようとする場合
       には,あらかじめ教育委員会が社会教育委員の会議の意見を聴いて行わ
       なければならない。
 ・第17条:社会教育に関して教育長を経て教育委員会に助言するため,次の職務を
       行う。
    1. 社会教育に関する諸計画を立案すること。
    2. 教育委員会の諮問に応じ,意見を述べること。
    3. 必要な研究調査を行うこと。
  2.教育委員会の会議に出席して社会教育に関し意見を述べることができる。
  3.委嘱を受けた青少年教育に関する特定の事項について社会教育関係団体,社会
    教育指導者その他関係者に対し,助言と指導を与えることができる。

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 社会教育法に基づいて委嘱されている役職である以上,その規定を熟知することが委員としての最初の仕事になります。まずは,「委員としては何をすればいいのか?」という疑問を解いておかなければ,仕事に入れないからです。
 町の条例は設置・運営に関する項目が主であり,役割については触れられていません。結局,上記の2条がすべてということになります。
 第13条は地方公共団体が社会教育関係団体への補助ができるように昭和34年に法律の改正が行われた際,国会での反対意見との調整として,一定の歯止めをかける趣旨で条文化されたものです。この条文があるために,第15条で社会教育委員を置くことができるという任意設置が抑え込まれ,委員の必置が実行されています。
 社会教育委員にとっては,この第13条こそが頼るべき条文なのです。確かに,意見を聴かせるだけで,強制力は伴いません。つまり,社会教育委員には,効き目のあるご印籠は持たされていないのです。印籠のない黄門様とは畏れおおいことですが,体のよいご意見番といった役割です。

 教育委員会には学校教育課と社会教育課が付随しており,学校教育課は青少年を,社会教育課は成人を対象としています。学社連携・学社融合というキーワードが出てきていますが,それは基本的には青少年のための育成活動です。いわゆる成人教育こそが社会教育の主たるテーマでなければなりません。社会教育関係団体と総称されている成人自らの学習活動を活発化することが本務のはずです。そこに,生涯学習という後発のキーワードが被さってきたのです。その意味で,社会教育委員にとっては,第13条は最重要課題として意識されるべきものなのです。この条項を生かすことで,社会教育委員を「置くことができる」という曖昧な存在から,「置かざるを得ない」という招かざる客分に格上げされた流れを,「置いた方がよかった」という喜ばれる存在に変えることができるはずです。

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2.社会教育委員になって,感じたこと:「どのように役割を果たすのか?」
  ○社会教育関係団体への「補助金」が,社会教育委員の会議に諮られていない疑問?
  ○「町社会教育計画書」(毎年度)を立案し,教育委員会から発行される。
   「生涯学習研修会」開催時に,各種団体指導者に委員が説明するも,利用は?
  ○教育委員会からの諮問は,待っていたら何もない?(5年間で1件)
  ○青少年教育に関する特定事項も,「町民会議」等の活動で間に合っている?

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 当町での現実はどうかというと,必ずしも委員としての役割が生かされていないといった状況です。個々に見ておきましょう。
 まず,社会教育関係団体への「補助金」に関する意見聴取ですが,委員の関知しないところで進んでいます。勘ぐれば意見を聴かなくても,決定するのは教育委員会ですから,実質的には同じことでしょう。しかしながら,その決定に当たって,教育委員の中で社会教育委員の意見はどうであったかという確認をする委員がいないというのは,何とも不思議に感じられます。
 国レベルでは意見を述べる立場の人が官僚による事務的な作業を傍観するといった状況が見られると言われていますが,市町村レベルでも似た状況にあるのでしょう。もちろん,意図的に避けられているということではなく,単純に法制を失念していたということもあり得ます。いずれにしても,このような事態を招いた要因は,ひとえに委員の側にあると考えるべきです。責めても責任転嫁に陥るだけで,事態の好転は始まらないからです。

 次の「計画立案」については,当町では年度ごとの「社会教育計画書」を社会教育委員の会で立案し,教育委員会に助言するという形式で伝え,それに教育委員会が検討を加える過程を経て,教育委員会名で印刷配布されています。配布の方法は,社会教育関係団体を含めほとんどすべての指導者を集めて開かれる「生涯学習研修会」の場で,出席者全員に手渡されています。この研修会では,恒例として計画書の説明の機会を設け,社会教育委員が要点説明を実施してきました。
 形式としては良いものではあるのですが,その効果については疑問も出されていました。説明を受けなくても読めば分かるとか,内容が総花的で広範すぎて当事者意識が持てないとか,利用の仕方がよく分からないとか,教育委員会の計画であり自分たちには関係ないものではないかとか,課題は山積みの状況です。立案の主旨が曖昧になっていることを感じさせられています。

 教育委員会からの諮問を受けて助言するのが本来の役割ですが,諮問がなされないので開店休業状態に追い込まれています。諮問をもっとくださいと言っても,おいそれと出てきません。諮問をするためには,当面する課題の核心的テーマをあらかじめ抽出しなければなりませんが,諮問する側にその考察をする暇がないのでしょう。

 青少年教育に関する特定の事項についても,「青少年問題協議会」や全般的組織である町民会議の傘下組織の活動に埋没し,特別に社会教育委員の会に委嘱するものは見つからないといった状況が見られます。指導者への助言や指導という期待は,各分野で指導者の研修が活発に実施されている現状では過剰な期待になっているという面も考えられます。
 この第3項の設立時の背景には,社会教育主事や青少年指導員制度が未整備であったために避難的な措置が必要という事情があったようです。今となっては,制度の整備が進む中でその実効性は地盤沈下していると思われます。ただ,青少年の現状を見ると結果は必ずしも満足できるものとは言えず,上手の手から水が漏れるという事態が起こっています。網羅的かつヘッドだけの制度が実体に沿っていないのではという心配があります。比較的動きやすい市町レベルでの青少年育成機能の改善を図るために,社会教育委員が関与する縁として再生することも可能です。

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3.社会教育委員になって,やってきたこと:「できることから力を出そう」
  ●反省:助言するだけの力があることを認められていないのでは!
  ○「補助金」:予算請求前に,会議の議題に取り上げるようにした(意見表明)。
  ○「計画書」:各項目ごとに3段階評価と反省のための「書式」を試作した。
  ○「教育委員との合同会議」において,「書面」で提案を行った。
    ・「社会教育関係団体連絡会議」の開催(活動報告と連携調整のため)
    ・「生涯学習住民意識調査」の実施(調査項目の設定,報告書の検討)
    ・「生涯学習年報」の発行(町,団体のすべての活動の結果報告:記録):未決

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 教育委員会への助言を求められていながら,その助言の機会が与えられていないのは,なんとも歯がゆい思いをさせられます。間に合っているということであれば致し方ないのですが,そうではないのは明らかです。反省するとすれば,社会教育委員の側が助言を期待できる体制を整えているとは思われていないということでしょう。すなわち,諮問を待っていては何も変わらないということです。
 そういう考えができるのか,というアドバルーンを上げて,魅力ある提言を準備することからはじめる必要があります。意見を聴いてみようかというムードを作り上げるためには,お客様の目を引くアイデアを提示しなければなりません。自作自演の提言を取りそろえることにしました。

 まず,「補助金」については,社会教育委員の会の正式な議題として取り上げ,行政側が予定している案の説明を受け,内容を協議します。補助額の算定基準の確認,団体ごとの補助金の予算総額に占める割合の評定,活動の参加状況による評価など,さまざまな角度から検討を加えます。一律にすることは多様な組織ですので馴染みませんが,何らかの納得できる根拠を提示することが大事です。

 財政上の余裕がなくなってくると,削減の矛先は社会教育分野に及びます。補助金のカットという事態も想定しておかなければなりません。どのように削減をすれば痛みを最小限に抑えられるか,辛い道筋を用意しておく時期を迎えています。また,ボランティア団体の台頭につれて,補助すべき団体も増加が見込まれます。パイが増えない中での分配を再検討する局面も迫っています。そこではさらに,福祉関係のボランティア団体との補助ベースの調整も必要になるはずです。

 情報公開という透明性に耐えられる補助の仕方が,これからより重要になってくるでしょう。その点について,社会教育委員の会の意見表明は,今までとは違って社会教育法第13条に基づいて責任が問われるはずです。考えるのは社会教育委員の会議であると法制上決められているので,道義的な責任は免れません。

 「社会教育計画書」については,当町では一つの課題を抱え込んでいます。社会教育は生涯学習と密接な関連があるにもかかわらず,町としての「生涯学習推進計画」の策定が未だに実現しておりません。すなわち,中長期的な学習計画がないために,年度ごとの社会教育計画書に中長期的な目標と計画を織り込まざるを得ません。そのために,年度ごとの短期的,具体的目標があらゆる分野にまたがり,十分に絞り込めていません。町全体の計画ですから仕方のないことでもあるのですが,計画として最も大切なステップバイステップの積み上げが曖昧になってしまいます。それが,指針になりきれていない理由です。
 今年度,計画書の組み替えや,整理などの作業に入るつもりでいます。その準備として,計画書に取り上げられているすべての活動項目について,3段階評価と反省をする表組みを試作して,実情を検証する作業を終えました。こうすることで,緊急度,充実度などの尺度で項目の整理が委員の中にイメージできると期待したからです。その後,活動の流れを整理し,各段階ごとの具体的な実践例を付記した形で,計画書を再構成したいと願っています。

 提案については,幸い当町では「教育委員と社会教育委員の合同会議」が全員参加で開催されています。その席上で,3つの提言を行いました。単なる口頭ではなくて,具体的な内容を書面にして,必要な資料を添え,全員に配布して,教育委員会での検討をお願いしました。事前に社会教育委員の会で趣旨説明と提案の了解を得ていたのは当然のことです。
 「社会教育関係団体連絡会議」はすぐに実現しました。この会議は各団体の代表者に団体の活動報告をもとめ,そこから出席者には他団体の目標と活動内容の共通理解,協力関係,日程の調整などを図ってもらう目的を持っています。この会議は社会教育委員の会長が議長を務め,委員全員が参加をします。関係団体の活動を理解すると同時に,補助金の有効利用及び適正さを視察する機会という二次的な効果も含まれています。
 「意識調査」については,前回調査からの経年周期,他市町での状況などの資料により,時期が来ているという気運を訴えましたが,次年度に予算化され実現しました。調査項目を社会教育委員の会で協議し,実施は調査業者に,分析・まとめは大学教官に委嘱しましたが,その間常に小委員会が関わりを持って進めることができました。
 「生涯学習年報」の提案については,未だに実現しておりません。これは,一年間に実施された町の各課主催,社会教育関係団体主催,福祉団体主催,公民館主催,PTA主催など,あらゆる文化,体育,学習行事を網羅し,入賞者名簿などを含むものです。その提案理由は,一つには記録です。各種団体は事務局を行政課に持っているものが多く,そこでは5年間の記録しか残されないので,歴史が散逸するのが普通です。年報としてまとめておけば,保存資料に掛かります。もう一つは,生涯学習年報として,各活動を掲載することで,生涯学習とは何かを具現化する一助になることです。自分たちの活動が生涯学習として認可されたといえば大げさですが,少なくとも認められるという形での支援が実現できます。同時に,社会教育委員の会で掲載するかどうかの協議を引き受けるようにすれば,一つの役割を創出することができます。しかしながら,情報整理のためのマンパワーが現状では不足しているという理由で,棚上げ状態です。社会教育委員がその作業を引き受けるという段階に至るまでは待たざるを得ないようです。

 実のところ,する気になれば,提言することはたくさんあります。しかし,提言する際に気配りをすることが,提言の実現性を大きく左右します。一つには,旬の提言であることです。今しなくてはならないという切迫した背景について,提言する側とされる側の間で共通理解できることが必要な条件です。そのためには周辺市町村を含めた状況判断の資料を提示することが不可欠です。もう一つは,提言を受ける側の事情に対する配慮です。実際上,提言される事柄は新規になるはずです。つまり下世話風にいえば,余計な仕事を持ち込むことになります。ただでさえ忙しいのに,という状況に未経験な事業を持ち込まれるとすれば,できれば聞かない振りをしたくなるものです。大して手間暇を取られないような工夫を織り込むことが十分条件です。従来の事業に替えてこれをすれば,より効果が上がるし,楽になる,差引とんとんという提案が望ましいでしょう。余裕があれば提言されたことはするに越したことはないのですが,現状では見送らねばならないという苦渋の選択をしているはずです。うれしい提言であるかどうか,その色づけを忘れないことです。

 失敗したこともあります。社会教育委員に与えられている審議機能には,委員個人が意見を表明できる独任制と会議による合議制とがあります。今年の春に委員個人による提言を綴り合わせて提出しました。まさに十人十色の提言であり,それぞれに委員が研修を深めた中での力作でした。独任制に沿った活動を試みたわけです。これに対して,教育委員会ではその対応に戸惑いを覚えたようで,返事が遅れています。
 どういうことかというと,責任のある回答を求めているかどうかが判断できないということです。独任制とは言いながら,提言がいわゆる個人的な見解に基づくものであれば,それは私的な文書と区別ができません。建議や答申という公式性を保持するには,委員会という合議機関名が必要になります。ある機関が正式に提言したという形式がなければ,正式に回答するという対応にならないのです。独任制は社会教育委員の世界だけに通用するものとなっています。教育委員会側でその受け入れ体勢が整ってくれたら生かされるはずですが,現状では難しいようです。提言を繰り返しながら,独任性に対する共通理解を進める地ならしが当面する課題になっています。

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4.社会教育委員になって,見極めたこと:「焦らず,慌てず,当てにせず」
  ※具体的な活動は,それぞれの専門団体等に任せておけばいい。
   社会教育委員は,活動の動きを見据えてデザインルールを提示することである。
   そのためには,活動内容,人的資源等に関する情報の収集に努めるべきである。

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 社会教育活動としての具体的な行事やイベントは,それぞれの専門的な団体に任せるべきです。社会教育委員が余計な口出しをすることはないでしょう。もちろん,求められれば助言するにやぶさかではありませんが,押し売りは控えるべきです。
 社会教育委員が研修をする機会は多々ありますが,そこで提示される内容は,公民館の活動,婦人会等や市民団体の活動,あるいは行政の活動などであり,活動それ自体に社会教育委員としての直接の関わりはありません。素晴らしい活動を知り,それを持ち帰って該当する団体に伝えるメッセンジャーとしての役割が期待されているようです。広い目を養うことで指導と助言をする資質の向上が目されているのです。必要な研究調査を行うという役割に該当するでしょう。
 確かにそれも必要ではあるのですが,冒頭に述べておいたように,期待される役割はやはりプロデューサーであり,プランナーなのです。教育委員会の社会教育担当の政策秘書?と言えるのかもしれません。

 生涯学習によるまちづくりというスローガンがありますが,生涯学習と社会教育の関係についてはひとまず置いておくことにして,社会教育委員は社会教育活動がまちづくりにつながるような針路を見つける役割があると思われます。助言する役割を果たすためには,助言する目的をはっきりさせることです。何を助言すればいいか,何のために助言するのか,それはまちづくりに向けた助言になるべきです。
 個々の活動がいくら活発でも,それだけではまちづくりにはつながりません。どこかに共通の具体的目標を設定することで,まちは変わります。どのようなまちにすればいいのかを熟慮し,皆が揃って今だから動ける目標を探し出さなければなりません。それを提示することが,求められている助言なのです。

 その点で当町は今ひとつの課題を抱えています。時代の流れの中で,ボランティア活動が台頭しています。福祉関係と学習関係のボランティアがありますが,行政上の縦割りによって,横の連携が取れていません。その対策を関連する部局に求めても,管轄外のことにどちらも口を出せず,また余計な仕事を産み出しかねない恐れから,立ち往生しているところです。教育関係の委員では他部局に口出しが憚られる雰囲気があり,苦渋しています。余計なお世話であることはもとより承知しているのですが,何かできることはないかともがいています。
 組織上の隘路や抜け道,手続きの表と裏,いろんな情報を必要とします。その上で,正々堂々と助言をしたいものです。

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《発表の意図》
 社会教育委員は考える人かもしれません。それを実現するのはそれぞれに事情を抱えている別の人です。教育委員会の諮問機関に過ぎないという限界を感じさせられることが多々あります。話としては参考になるが,予算がない,人材がいない,余力がない,設備がない,権限がない,山のようなナイナイづくしです。
 それでも,何かをしなければ,したいという善意の人が委員に推されて委嘱を受けます。やるからにはいい仕事をしたい,それができる委員さん方が,生かされていないのは悲しいことです。できることを少しずつでもやっていくしかありません。それが先輩委員さん方の歩んできた道です。

 社会教育委員の取り組む仕事を,小さなものから大きなものに順に羅列してみると,

 ・定例の会議を開催する。(せめて月に一回は)
 ・社会教育課との細かな打ち合わせ・連絡を図る。
 ・研修の報告を「報告書」として文書化し,提出しておく。(情報を与える)
 ・社会教育活動の評価・反省・検討の手続きを定式化する。(現状評価)
 ・提案に足る案件は,口頭ではなく,文書で提出する。(行政上の手続き)
 ・近隣市町,県単位での社会教育関連情報を収集する。(比較資料の入手)
 ・各種団体間の連絡調整の機会を創出する。(団体は近くて遠いもの)
 ・活動計画書の策定をするための議論に時間をかける。(共通理解の創出)
 ・市町全体の動向を見据え,方向,指針,背景の整備に関心を持ち,働きかけをする。
 ・必要な制度・組織の改革を視野に入れ実現策を練っておく。(予算,人的資源など)

という流れが浮き上がってきます。どの段階まで進めるかは,そこそこが抱えている事情やテーマによって違うでしょう。また,進めば進むほど解決すべき課題も強大・強固になるはずです。ステップを積み上げていかないと,挑戦する意欲と力が備わらず,無力感だけを味わうことになります。

 焦らず,慌てず,当てにせず。ある企業家の言葉ですが,自らの役割を黙々と果たし続ける姿を通して,一つの真摯なメッセージを発信することも,大事な助言になるはずです。世のため人のため,それを自ら言えば傲慢になるか滑稽になりますが,社会教育委員はそれを地で行く立場です。それに喜びを感じる人たちですから,きっと真っ直ぐに道案内をして頂けるはずです。そういう仲間を持てることは幸せだと感じています。
 新任者の方に,このメッセージによって何かの参考になることが一つでもお伝えできれば幸いです。

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《発表の後で・・・》
 実践発表は30分という短い時間でしたので,かなり切りつめたお話しかできませんでした。それでも要点はお伝えできたのではと勝手に自己満足をしていました。数週間の後,余韻も全く冷めていたころ,県社会教育委員連絡協議会(主催者)の事務局から電話が入りました。実践発表の配布資料を年度末に毎年発行している「社会教育委員の手引き」に掲載したいという申し入れでした。この手引きは,県内の全市町村の社会教育委員全員に配布されています。容量は2ページですので説明部分はかなり絞り込まなければなりませんが,それでも発表のチャンスをいただいたことは光栄でした。

 いずれの社会教育委員の研修会でも社会教育の研修ばかりさせられて,委員としての研修が受けられないもどかしさから,視点を委員活動に限定したお話をしてみたかったのです。それが新鮮な印象を持っていただいた要因であったのかなと考えれば,自分の中で一つの役割を果たし終えたとうれしく思っています。ただし,内容はこのページのものよりもかなりマイルドなイメージに脚色しておきました。理由はご推察頂けると思います。