*****《ある町の社会教育委員の活動》*****

【第6章 まちづくりの指針について】

 地区社会教育委員連絡協議会の会長として,始めての研修会主催です。特に力んでいるわけではありませんが,研修をする上はなにがしかの意図をしっかりと意識しておくことが大事でしょう。何を学べばいいのかという目的意識を持たない学習は効果的ではありません。

 主催者として,その意図を説明する責任があるはずです。それでは,どのような形で参会者に伝えたらいいかという問題が出てきます。会長に与えられた機会を利用する他はありません。挨拶としては多少型破りになるかもしれませんが,意図説明をすることにしました。

 まちづくりを進めるには,その設計指針が必要です。そのことを明確にした始めての公式表明です。

《挨拶の流れ》
(1)開会式での会長挨拶
(2)分科会開会の会場責任者挨拶
(3)分科会閉会の会場責任者挨拶


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地区研修会での会長挨拶

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  【趣旨】
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1.趣  旨

 今日,社会の急激な変化に対応して人々が生きがいのある充実した人生を送るため,生涯学習社会の実現が求められています。この気運は成人に限られるものではなく,青少年においてもさまざまな問題行動を通して生涯学習社会における養育を訴えていると思われます。
 これらの切実な希求に応えるためには,行政はもとより家庭・学校・地域社会の機能を見直し,成人と青少年を総合的に視野に入れた生涯学習推進体制の整備充実が急務です。
 そこで○○地区の社会教育委員及び関係者が一堂に会し,各市町におけるまちづくりの現状や生涯学習推進上の社会教育委員の役割等について研究協議することにより,生涯学習のまちづくり構想の策定と社会教育の活性化に資することを目的としてこの研修会を開催します。

2.研究テーマ  「青少年教育活動と社会教育委員の役割」


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  【会長挨拶:その1】
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 平成13年度の○○地区社会教育委員研修会を開催いたしました所,皆様方にはご多忙の中にもかかわらず,ご参集下さいましたことを,主催者として,とても有り難いことと感謝申し上げます。
 また,ご来賓の各位には,私どもの研修会にご臨席を賜り,心よりお礼を申し上げます。

 さて,開会に当たり,今回の研修会のねらいについて,簡単に述べさせていただきます。趣旨に述べてありますように,私たち社会教育委員が取り組むべき目的は,生涯学習社会の構築によるまちづくりにいささかの寄与をすることだと考えております。

 そこで,まず,町政のトップとして実際にまちづくりを推進して来られた○○町の○○町長様に,その喜びやご苦労の一端をお聞かせいただきたく,講演をお願いしております。まちづくりに関わる者に得難いヒントを示唆していただけることと思います。

 次に,午後からの分科会では,「青少年教育活動と社会教育委員の役割」というテーマで,研究協議を進めていただくことにしております。
 まちづくりという目的を達成するためには,具体的な目標を掲げなければなりません。当面する課題に取り組むことが最も相応しいことは言うまでもありません。まちづくりを考えるとき,「弱者にとってよいことがまちにとってもよいことだ」という原則に従うべきでしょう。では,まちの中で弱者は誰か? それは高齢者と青少年です。

 まちの人々全体を「老若男女」と呼びます。社会生活分野には「男女共同参画」という用語ができました。教育分野に学社融合という言葉がありますが,それに因んで,まちづくりは「老若融合」というキーワードで考えたらと思っております。○○地区からこの言葉を発信できたらと大きな夢を見ています。

 さて,高齢者については,介護による福祉活動が注目され,対応が進められています。この領域は社会教育分野から離れています。では,社会教育は何もできないかというとそうではありません。高齢者にとって大事なことは生きようとする気持ちであり,生涯学習による生きがいづくりという活動が意味を持ちます。

 では,青少年,子どもたちについてはどうでしょうか? 家庭や地域の教育力が眠り込んでいる所に,学校週五日制が刺激剤として注入されようとしています。子どもたちの周りで起こっている多様な問題行動を阻止するために,育成環境のリストラが始まったと考えるべきでしょう。この課題は個々の親や大人が担うべきものです。とはいえ,安眠状態にある大人たちを目覚めさせなければ,子どもたちの健全育成は望めません。そこに社会教育関係団体である育成組織のより一層の活動が期待されています。

 子どもたちの育成環境が整えばそれでいいのでしょうか? 育てられる子どもであれば,従来と何も変わりません。子どもにとって大事なことは育とうという意欲です。育ちたいという気持ちが持てれば,それを可能にしているまちを「この町で育ってよかった」と思うことでしょう。そんなまちにすることが,私たち社会教育委員の目的です。
 高齢者にとっての生きがいと同じように,子どもたちには育ちがいが大事です。そのために社会教育活動は展開されなければならないという大きな視点を,社会教育委員は求められています。

 本日の研修会では,青少年教育活動を一つの目標にして,単に育成環境を整えるに留まらず,子どもに育ちがいを持たせるために,地域の大人たちはどんな子どもに育って欲しいと思っているのか? 大人の願いを素直に子どもに伝えられるような大人自らの活動に向けた舵取りとはどのようなものか? を具体的実践例を通して研究することによって,まちづくりプランナーでありコーディネーターとしての社会教育委員の役割をいくらかなりと実感していただければと願っております。

 最後になりましたが,この研修会を開催するに当たり,ご後援をいただきました○○地区社会教育振興会,ご指導をいただきます○○教育事務所,会場のご提供をいただきました○○町,事務局業務を担っていただきました○○町教育委員会,その他関係各位に対しまして,厚くお礼を申し上げます。

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  【分科会責任者挨拶:その2】
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《開会》

 こんにちは。時間になりました。ただいまから,午後の分科会を開催いたします。
私は,分科会の責任者を務めさせていただく,○○です。どうぞ,よろしくお願いいたします。

 この分科会は第3分科会です。
「地域の中の学校をめざして」というテーマに沿って研修を行います。

 3時までの研修の日程について,先にご案内をしておきます。
前半は,まず事例発表を30分程度していただいた後,質疑応答を予定しております。10分の休憩をはさんで,後半はご参会の皆様方からのテーマに関する意見交換や討議を深めていただいた後,助言の先生に,研修の講評とまとめをしていただく予定にしております。
 よろしくご協力を,お願いいたします。

 ここで,ご登壇いただいている皆様の,ご紹介をいたします。
 発表をしていただきます,○○町の○○○○社会教育委員さんです。
 司会を務めていただきます,○○町の○○○○社会教育委員さんです。
 記録を務めていただきます,○○市の○○○○社会教育委員さんです。
 助言をお願いしております,○○教育事務所の○○○○社会教育主事さんです。

 それでは,○○さん,よろしくお願いいたします。


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  【分科会責任者挨拶:その3】
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《閉会》

 皆さん,どうもお疲れさまでした。

 ここで,もう一度,今日の研修をさせていただいた登壇者の方々に,拍手を持ってお礼申し上げたいと思います。ありがとうございました。

 分科会のお世話をする者として,日頃の真摯な活動からにじみ出る,深い協議がなされているのを拝聴して,○○地区の社会教育活動が盛んだと言われている評判を,再確認させていただきました。

 私が地区の会長になって驚いたことがありました。それは,社会教育活動のありようについてです。よその県とでは違っているかもしれませんが,地区は隣り合った市町ですので,社会教育活動は似たり寄ったりだと,何となく思いこんでおりました。ところが地区の会議を通してそれぞれの活動の中味を知るにつれて,その違いの大きさにびっくりさせられました。この研修会が開催されてきた意義を実感させられています。

 分科会は研究討議をする機会ですが,短い時間ではお互いの取り組みの違いを感じる程度であったことでしょう。違いが分かれば,そこにお互いを研究する関心も余地も産まれるはずです。幸い地区はお隣同志のすぐ連絡できる間柄ですので,分科会終了後の研究討議が可能です。この分科会を契機として,さらなる討議の深まりを進めていただければ幸いです。

 来年また皆様とお会いできることが楽しみになりました。一歩一歩,それぞれのまちづくりに向けた活動を進められることを祈念して,お別れしたいと思います。どうぞ,ご機嫌よろしゅう。またお会いしましょう。

これを持ちまして,分科会を終了させていただきます。ありがとうございました。


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《挨拶の意図》
 社会教育は住民の幸せを願うものです。その役割とは,幸せを見つけて,その筋道を提示することです。しかしながら,社会をよりよい方向に動かそうとするとき,委員の力は微力です。唯一可能なことは,それぞれの方向に動いている人々を,ちょっとだけ幸せ方向に動かしてあげることです。

 社会はさまざまな動きの総体です。全体を見ればどの方向にも動いていないように見えるはずです。しかしながら,みんなの日々の暮らしが幸せになることをめざして営まれていれば,少しずつ幸せに動いていくはずです。委員の役割はその小さな動きを揃えることです。こっちの水は甘いぞという誘いを根気よく語り続けることです。

 誘いの言葉,「高齢者の生きがい,子どもたちの育ちがい,そして大人の暮らしがい」を・・・。