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【第23章 社会教育計画書の改訂】
毎年度,社会教育計画書を作成しています。21年度の計画書は,大きく改訂をしました。従来のものは年度計画とタイトルをつけていますが,中長期の計画項目も含まれた総花的な内容でした。そのために,計画といいながら進捗状況の判定をしにくいものでした。そこで,内容を精選し,短期・中期の具体的な課題を抽出して,整理の仕方を変えました。この1年で何を成し遂げるか,目標を明らかにするようにしました。
以下に,その全文を載録しておきます。
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『平成21年度 社会教育計画書』
《はじめに》
平成18年に教育基本法が改正され,平成20年には社会教育法も改正されました。大きく変わったのは教育基本法であり,従来社会教育が担ってきた教育活動を明文化するような改正でした。また,その第17条では,教育振興基本計画を国は定めて公表すること,地方公共団体では定めるように努めることとなっています。
平成20年7月に国は教育振興基本計画を定めて公表しました。その中で,「今後5年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策」をまとめています。
基本的考え方は,「教育に関する政策を横断的に捉え直し、その総合的な推進を図る。その際、各施策を通じてPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを重視し、より効率的で効果的な教育の実現を目指す」とし,取組全体を通じて重視する考え方を
@「横」の連携:教育に対する社会全体の連携の強化
A「縦」の接続:一貫した理念に基づく生涯学習社会の実現
B国・地方それぞれの役割の明確化
の3項目にまとめ,「施策の基本的方向」については
1.社会全体で教育の向上に取り組む。
2.個性を尊重しつつ能力を伸ばし、個人として、社会の一員として生きる基盤を育てる。
3.教養と専門性を備えた知性豊かな人間を養成し、社会の発展を支える。
4.子どもたちの安全・安心を確保するとともに、質の高い教育環境を整備する。
の4項目を挙げています。この基本計画の考え方及び方向は,社会教育こそが引き受けるべきものと考えられます。
粕屋町では未だ教育振興基本計画を定めていませんが,従来公表してきた社会教育計画書が当面その一翼を担うことになります。
粕屋町の第4次粕屋町総合計画では,町民と行政とが一体となって進める『太陽と緑の町』・『信頼と協働の町』づくりが基本理念として掲げられています。粕屋町では若年層の流入が特徴的であり,世代の構成は望ましい形で推移しています。さらには,社会教育の資源として,「青年団」や「空と海の会」という青年層の組織が健在であること,地域住民の融和をめざす「婦人会」が活発な活動を展開していること,また,スポーツ振興を支える「体育協会」並びに芸術活動の機会を提供する「文化協会」が確かな存在感を発揮していること,「老人クラブ」を中心とした高齢者層の意欲も衰えを見せずに旺盛な社会参加をしていること,「自治公民館」の活動が健在であることなどがあります。
このような貴重な活力を核として広く町民に「信頼と協働のまちづくり」に参画する意欲を育て,町民自らが具体的且つ多方面の活動を生み出す環境を整えることが,社会教育の担う役割です。
この社会教育計画書は,各団体や組織が協働し,町民が求める学習ニーズを満たし,さらには自発的な社会活動を支援するために,今年度取り組むべき事項をを提案するものです。それぞれの立場と機会を生かして有効な取組を進めていただければ幸いです。
《基本方針》
国民生活に関する世論調査によると,平成に入って「心の豊かさ」を求める割合が50%を越え,平成19年には60%に達しています。一方で,暮らしのあり方として,将来よりも毎日の充実を求める指向も平成になって増え続け60%となっています。あえて簡略化すれば日々心の充実を求めていることになります。教育活動は将来につながるものであることを思い起こすと,その意欲はかなり低下しているのではと危惧されます。
心の豊かさを求めているとはいいながら,世情の現実は心の貧しさを実感させられることの多い状況にあります。心の豊かさとは自己中心的な満足感であると思い違いをしているかのようです。個人は社会に対して責任を担っているといった基本的意識が希薄になっているといわざるを得ません。その認識があるからこそ,これまでの社会教育活動は地域づくりという根源的な課題に向けた地道な取組を進めてきました。心の豊かさはどういうものであるのか,その問に対する答えを見つける近道が地域づくりという活動の中にあると信じているからです。
粕屋町の第4次総合計画は,将来像を「みんなで創ろう ゆとり いきいき ふれあい かすや」と掲げて,まちづくりの基本理念を「信頼と協働の町」としています。粕屋町の願いもまた,心の豊かさの実現です。
粕屋町の平成20年度住民意識調査によると,まちづくりの主体となるのは行政であるという割合が64%であり,また,まちづくりに協力的な参加意向を示す割合は47%と半数弱となっています。
まちづくりの推進には,総合的な分析と考察をすることが求められます。そのために必要な情報を住民が十分に持ち合わせていないという判断が,行政主体でという意向に現れているようです。住民と行政の協働という段階に進めるためには,実情に関する情報を町民に届けることから始めなければなりません。その上で,まちづくりに向けてどのような活動が求められているのか,社会教育による明日に向けた活動の提案が必要になります。
社会教育は,まちづくりを目指します。自らの資質向上を願う町民一人ひとりの生涯学習活動を推進しつつ,その活力を結集することにより望ましい社会を実現することが社会教育の担っている役割です。例えば,各種団体による様々な活動はそれ自体生涯学習としての目標を持って実践されていますが,同時にその活動の中にまちづくりに向けた新しい活動目標を見いだしておくことが,社会教育団体のリーダーには期待されます。
以上の背景分析を踏まえて,粕屋町の社会教育活動が今後一丸となって進むべき方向を以下のように定めることにします。
各組織・団体の個別事業がまちづくりにつながる活動となるためには,その活動内容に3つの社会的な機能が織り込まれていなければなりません。
@社会を構成している人の結びつきを広げるために「知り合うこと」。
A社会をお互いに必要なものとして維持するために「助け合うこと」。
B社会を人々が安んじて生きていく場とするために「学び合うこと」。
この3つの機能の1つ以上を個々の事業活動の目標に意図的に位置づけることが基本方針となります。この方針については,既に過去数年にわたって社会教育計画書の中で,提示をしてきました。基本方針として,再確認をしておきます。
ここで,過去の反省をしておかなければなりません。知り合う,助け合う,学び合うという機能は仲間内では既に普通に行われている行動です。そのため,今更という思いに流されてしまった感があります。この計画書で改めてこの機能を取り上げた意図を明確にしておかなかった不備が反省点となります。仲間内で当たり前のことを,仲間の外にいる町民に向けることが真の意図です。町という社会の中で,昨日まで無縁であった人と今日は知り合い,助け合い,学び合う仲になれるように活動を進めて欲しいのです。
例えば,組織・団体の活動は,当然のこととして,会員として知り合い、仲間として助け合い,実践活動を通した学び合いが行われています。この活動がまちづくりに向かうには,団体相互の間に知り合い、助け合い,学びあいの活動がつながっていく必要があるということです。個人に閉じこもると孤立して動けなくなるように,組織や団体も閉じこもるとマンネリという停滞を招きます。開かれた関係を持つことによって,活性化が進み,ひいてはまちづくりに寄与することができます。
また,先に述べたように,町民が社会活動に参加できる条件を整えるために,町民が参加できる活動情報を積極的に発信することは,「知り合う」活動のより一層の充実として継続していく必要があります。
以上の3つの基本方針を確認した上で,今年度から粕屋町の社会教育活動が目指すべき「まちづくりテーマ」を次のように掲げることとします。
=「どうぞ」が似合うかすやまち=
これまで,粕屋町では「あいさつ運動」を推進してきました。あいさつは人が知り合うきっかけとなる大切な言葉です。その運動を次の助け合うステップに進める時期が来ています。助け合う気持ちを引き出す言葉が「どうぞ」です。
家族や親しい仲間内では自然にどうぞという言葉が行き交っていることでしょう。そのどうぞを地域や社会に広げていけば、まちは一つにつながっていくことができます。
粕屋町が目指している「信頼と協働のまちづくり」を実現するためには,どうぞという言葉の広がりが最もふさわしいテーマであると考えることができます。
《どうぞと言ってみませんか?》
物の豊かさから心の豊かさに変わりたいなら,
子どもに優しさを教えたいなら,
地域の和やかさを望むなら,
笑顔が欲しいなら,
「どうぞ」という言葉を思い出してください。
ありがとうは美しい言葉です。
ありがとうは自分が幸せになる言葉です。
物の豊かさはありがとうの豊かさです。
ありがとうは待っている言葉です。
どうぞの後からありがとうがついてきます。
心の豊かさはどうぞの豊かさです。
どうぞと言えば,人はつながります。
どうぞ言えば,人は優しくなれます。
どうぞと言えば,お互いに笑顔になれます。
ありがとうしか知らないから,人を利用します。
ありがとうしか知らないから,かすめ取ろうとします。
ありがとうしか知らないから,閉じこもっていきます。
どうぞと言えば,心が開きます。
どうぞと言えば,貪欲さが収まります。
どうぞと言えば,人を喜ばせます。
どうぞと言うには,恥ずかしさがあります。
どうぞと言うには,少し勇気がいります。
どうぞと言うには,拒まれる不安もあります。
どうぞと言えたら、ほっとします。
どうぞと言えたら,うれしくなります。
どうぞと言えたら,信じることができます。
どうぞと言えるから,二人に幸せが訪れます。
どうぞと言えるから,まちが和やかになります。
どうぞと言えるから,あなたは美しく輝きます。
《重点目標》
今年度特に重点的に目指すことを以下に分野ごとに示します。
第1項は行政や各種団体が主として取り組むべきことを,第2項は町民の皆様に是非とも取り組んでいただきたいことを挙げています。
●青少年教育
・かすやの子ども12指針を啓発する。
・親は地域の子育て活動に参加して,子どもを発見しよう。
●成人教育
・「ディスカバーほっとイン粕屋」事業を成功させる。
・地域の行事や組織の活動に参加して,経験を増やそう。
●自治公民館活動
・自治公民館活動を記録し,町民に季刊広報する。
・公民館活動に参加して,知り合いを広げよう。
●社会人権教育
・粕屋町独自の人権啓発ポスターを毎年発行する。
・自治公民館で開催される人権学習会で,自分を見つけよう。
●社会体育活動
・軽スポーツを各分館で巡回実施する。
・町内を散策して,健康を拾ってみよう。
●芸術文化活動
・粕屋をテーマにした文化活動を立ち上げる。
・歴史と文化に触れて,感動を呼び覚まそう。
※情報発信活動
・社会教育活動の情報拠点として,ホームページを開設する。
(計画書,団体紹介,各区伝統行事の写真など)
年度の終わりに,このことは実現できたと評価できるように,少しだけ「どうぞ」という気持ちを発揮して下さい。
《具体的実践方策》
1.青少年教育
青少年の育成には大人全体が責任を負っています。中心はあくまでも家庭教育であるという点を再確認しつつ,学校と地域とも共同して,それぞれの役割を果たすことが求められています。
社会教育の領域における青少年教育は,保護者に対する養育支援と子どもたちに対する地域の大人としての関わりからなります。
(1)養育支援
【実施活動】
・妊婦・母親を対象とする育児学習の場が設けられています。
・保育所・幼稚園では乳幼児保育について相談を受けています。
・民生児童委員が,それぞれの区内で養育の悩み相談を受けています。
・サンレイクにある教育相談室で,保護者の相談を受けています。
【努力事項】
・小・中学校の教育方針と実状を地域住民に広く開示していくこと。
・PTAでは,地域の青少年育成活動との連携を密にすること。
【準備事項】
・老人クラブや婦人会では,育児支援の活動を取り入れること。
・自治公民館では,育児サークルを開設すること。
・メールによる養育相談受付を検討すること。
(2)児童・生徒・少年少女への関わり
【実施活動】
・青少年の翼・沖縄体験の行事により国際交流・集団活動を体験しています。
・子ども会育成会連絡協議会ではJリーダーの研修を開催しています。
・スポーツ団体・クラブ等でジュニアスポーツ活動を行っています。
・社会教育関係団体等では異世代交流の機会を設けています。
【努力事項】
・青少年指導員は定期的な会合を持ち情報の交換を行うこと。
・各区子ども会では伝統行事・文化活動等の体験活動を取り入れること。
【準備事項】
・青少年育成町民の会は養育環境の整備目標を具体化すること。
2.成人教育
成人の年齢幅は広く興味関心も多様であり,各層に期待される教育も多岐にわたります。社会教育分野では学習が効果的に進むように,年齢別・性別の組織化が行われています。成人各層が資質をみがき,生活文化を向上し社会福祉を増進することによって,まちづくりにつながる方策をまとめておきます。
(1)青 年
【実施活動】
・青年団では町行事との連携活動によりまちづくりに参画しています。
・空と海の会では青年と少年の交流,国際交流の活動を進めています。
【努力事項】
・町内の異世代団体との協働により組織運営のノウハウを学ぶこと。
【準備事項】
・自治公民館において青少年リーダーが活動の場を得ること。
(2)壮 年
【実施活動】
・各行政課による出前講座を利用し,暮らしの情報を学ぶことができます。
・サンレイクかすや・粕屋フォーラムには生涯学習情報が集められています。
【努力事項】
・各社会教育関係団体及び行政組織では,学習機会の連携を実現すること。
【準備事項】
・防犯ボランティア組織の連絡会を実現すること。
(3)女 性
【実施活動】
・婦人会では生活に密着したテーマについて学習を行っています。
・関係機関による子育て・福祉の活動を支えています。
【努力事項】
・若い母親を支える環境づくりについて考える場を設けること。
【準備事項】
・男女共同参画社会についての学習会や啓発資料を整備すること。
(4)高齢者
【実施活動】
・老人クラブでは相互交流を促進し,社会参加を楽しんでいます。
【努力事項】
・青少年への文化伝承の機会を拡大すること。
【準備事項】
・高齢者の経験知を生かす機会と場を設けること。
3.公民館活動
サンレイクかすや及び各区自治公民館は,町民がお互いに知り合い,助け合い,学び合うことを目指す生涯学習の拠点です。町民の自主的な学習活動を支援するためには,バランスの取れた学習機会を提供する必要があります。
サンレイクかすやは生涯学習センターであることから,社会教育課をはじめとして行政各課による学習支援の要であるということを明確にすることが大切です。
また,自治公民館は町民の身近な学習活動の場であり,あらゆる団体が率先して活用することが求められています。
(1)サンレイクかすや
【実施活動】
・情報化社会に必須の学習能力であるIT技能の研修を開いています。
・近隣諸機関並びに団体による学習機会情報を提供しています。
・サンレイクかすやの町民利用を促進する効率的な運用に努めています。
【努力事項】
・各種団体・分館等と連携し,学習情報を集約すること。
・分館主事,各種団体指導者の資質向上に向けた研修を実施すること。
・町民の学習による成果等の発表機会を提供すること。
【準備事項】
・生涯学習推進本部の実効的な活動を推進すること。
・現在の人材登録制度の見直しと再構築に向けた検討を行うこと。
・自主サークルの育成を目指した講座の開設を企画すること。
(2)地域(自治)公民館
【実施活動】
・各区の特徴的活動を生かして区民の融和と協調を図る活動を行っています。
【努力事項】
・PTA,育成会,青少年指導員,防犯ボランティア間で情報を交換すること
・通学合宿事業の実施を目指して,その体制を整えること。
【準備事項】
・年数回の継続した学習のできる講座を新設すること。
・公民館相互の連携を進め,校区規模の活動や学習を取り入れること。
・ゆうゆうサロンの例にならい,子どもサロンの導入を検討すること。
・公民館の開放を進めるため,ボランティアの育成を図ること。
4.社会人権教育
歴史の学びの中で培われた人権という理念が,未だに新世紀を人権の世紀と呼ばざるをえないほど,十分には浸透していない現実があります。幸せに生きる権利が誰にもあることを知ってはいても,自分の幸せを求めようとする際に,他者への配慮を欠いてしまうことから,さまざまな人権侵害が発生しています。
隣人への温かな眼差しこそが心豊かなまちづくりの核になります。人権尊重を視野に入れた生涯学習活動を意図的に組み込まなければなりません。
【実施活動】
・人権教育審議会を中心に,人権意識の定着を図っています。
・自治公民館で人権学習会を開設し,人権意識の高揚に努めています。
【努力事項】
・大人向けの人権啓発資料を作成し,全所帯に配布すること。
【準備事項】
・人権擁護委員との緊密な連携が可能となる体制を整えること。
5.社会体育活動
スポーツ活動は直接的には身体の健康増進につながるものです。競技スポーツは協調や意欲等の精神的な訓練となり,健全な心身を培う活動です。また,軽スポーツは高齢者の健康維持,障がい者の身体訓練,青少年の育成にも十分に取り入れることのできる活動です。誰もが気軽に楽しめる多様なスポーツ活動の場と機会が待たれています。
【実施活動】
・体育指導委員は地域において軽スポーツを普及しています。
・体育協会指導員は青少年スポーツの普及に努めています。
・体育指導委員会が中心となり,町民の体力測定を行っています。
【努力事項】
・町主催の体育事業について,検討する審議会等を立ち上げること。
【準備事項】
・校区・地域コミュニティに根付いた地域スポーツクラブを育成すること。
・負かさない競技が可能か,試行錯誤をしてみること。
・町内外スポーツ施設の利用状況を調査すること。
6.芸術文化活動
情操面の活動は心の潤いを促し,人々が和やかに集うまちの風格を醸し出します。伝統を受け継ぐ芸術や文化に親しむことは,生き方の核を育んでくれます。
【実施活動】
・文化協会等によるサンレイクかすやを拠点とした活動が進んでいます。
・粕屋フォーラムを中心とした読書推進活動は順調に展開しています。
・かすやの歴史や風土に関する講座が整いつつあります。
・乳幼児検診時にブックスタート事業を行っています。
【努力事項】
・こどもから大人まで気軽に応募できるコンクール等を企画実施すること。
【準備事項】
・高齢者向けの出張図書館活動の可能性を検討すること。
・常設の作品展示場所を確保すること。
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以上の本文に続き,以後は施設の使用の案内,社会教育委員,体育指導委員,自治公民館役員,団体代表,図書館協議会委員の名簿,自治公民館別平成20年度活動実績一覧,社会教育行事の年間一覧表,軽スポーツ用具の説明を資料として掲載しています。
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この計画書は,各種団体の幹部を集合した「生涯学習研修会」という行事の中で,出席者全員に配布され,社会教育委員による概要の説明がなされます。年度末には,委員による評価と反省を行い,次年度の計画書立案にいかされていきます。
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