*******  2 1 世 紀 に 語 る 夢  *******

〜 人 を 幸 せ に す る 衣 は 文 化 〜

【3】 文化のビッグバン
 文化とは人を幸せにする衣です。その衣が文明ブランドに席巻されて粗末になり,その無機質性に肌がかぶれています。着替えなければなりません。そのためには新しく文化の布を織ることから始める必要があります。人に優しいとは文化の中心テーマだからです。もちろん素材としての糸は先人がたくさん紡いで残してくれています。
 仮に文化にも発達という変化が可能であるとすれば,さしあたってそれは規模の拡大という形で現れてくるでしょう。文化には地域性という制約がありました。部族,民族,国民といったまとまりが醸し出す精神的な統一性です。20世紀の文明によって一つにねじ伏せられた地球は,21世紀には地球規模の文化を生みだしていることでしょう。情報化や国際化という流れは文明世界の現象ではありますが,そこに人が幸せになりたいという意志を働かせるなら,それは21世紀にふさわしい文化を創出するはずです。
 文明に浸食された文化が心の豊かさや平安を取り戻すためには,さしあたって言葉という道具を整えることが肝要です。地球規模で言えば,古の文明によるバベルの塔の傲慢さが招いた言葉の壁を取り除かなければなりませんが,21世紀の翻訳機械の普及がそれを可能にしてくれることでしょう。またこれから急増する人の往来も贖罪としての新しい文化の創造にはプラス要因として働きます。すでに人はトンネルを歩み始めています。
 文明のビッグバンに煽られて文化という衣を失った裸の王様は,優雅な暮らしのなかで満たされない不遇さにとまどっています。単純に個人的な小さな幸せを寄せ集めたら大きな幸せになるとは限りません。懐の深い大きな文化が必要です。対抗できる文化のビッグバンを起こさない限り事態は奈落の淵に吸い込まれていくでしょう。こうした先行きの不安を肥やしにしようと楽天的に構えたとき,それは夢に昇華します。
 21世紀には文化のビッグバンが起こるであろうことを夢見ています。その目的に向けて私たちにできる努力目標は本当の意味での「考える」という営みです。