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5日目、7月9日、本日も快晴。今日は朝からパルミジャーノ・レッシャーノの工場に見学に行きます。
日本からパルミジャーノ・レッシャーノ協会へメールで工場見学の申し込みをして(姐さんが)、
姐さんと私だけのために英語のガイドさんをつけてくれることになりました。パルミジャーノ・レッシャーノ協会は太っ腹です!
8時15分に、工場の前で待ち合わせなのでタクシーで8時少し過ぎたくらいに到着。
イタリア人だから来てないだろうなぁ・・・と思ってたら、もう待っててくれていました。
ガイドはレッジョ・エミーリア在住のフランス人のアンさんです♪

パルマもレッジョ・エミーリアも、よくこの丸っこいのを見かけます。
これは牧草を刈って数日間天日で乾燥させて、牧草ロール機でグルグル巻いたもので、アンさんは英語で「グラスロール」と言ってました。
日本語では「牧草ロール」ですね。このグラスロールから黒いビニールをかけてサイレージを作るのかと思いましたが、
パルミジャーノ・レッシャーノはサイレージの使用は禁止されているそうです。スイスのエメンタールなどと一緒ですね。
長期熟成のチーズですから、酪酸菌、怖いですものね。

 

1日に二度(朝・夕)に搾乳された牛乳は、搾乳後2時間以内にチーズ工場に届けられます。
夕方に届いた
牛乳は、写真上のような底の浅いバットに入れ、静置しておき上に浮いたクリームをすくって脱脂し、
翌朝の脱脂しない
牛乳と混ぜてチーズを作るのが、このパルミジャーノ・レッジャーノの特徴のひとつなのです。
なので必然的にパルミジャーノ・レッジャーノは1日に1回しか作ることが出来ません。(グラナ・パダーノは1日2回作れる)
バットでひとつ疑問が沸いたので、アンさんに尋ねてみました。
「バットの横にフェラーリと書いてあるのは何ですか?」
これは農場の名前で、別の農場の牛乳とは絶対に一緒にしないようにする為だそうです。
そうすれば万一、牛乳に汚染があった場合でも対処がし易くなりますものね。

 

チーズを作るのは、この銅の大きな釜。ダブルジャケットになっているので温度調節が容易くできます。
円錐形を逆さにしたような形をしていて、底までの深さが2mあります。
写真ではチーズ職人さんの腰くらいの高さになっているのは、地下にめりこんでいるような状態になっているからです。
実際に空の鍋を見るとかなり深い感じです。落ちたら溺れますね。
この釜ひとつに上まで
牛乳が入ると、パルミジャーノ・レッシャーノが2つ出来ます。双子のチーズが出来るというわけ。

 

夕と朝の牛乳はホースを通して銅の釜に入れられ、ホースの先には布がしてあって、不純物が入らないようにしてあります。
釜の上まで牛乳でいっぱいになったら、牛乳を30℃くらいに加温し、写真右上の前日のホエーをスターターとして加えます。
スターターを入れると酸度が上がり雑菌の繁殖が抑えられるのと同時に、この後に投入するレンネットの働きを助けます。

 

これがレンネット(凝乳酵素)。アンさんは「ベリー・エクスペンシィブ」と連呼していましたけれど、一個いくらなんだろう・・・。
これは牛の第4胃から取った酵素だと思うけど、日本で通販などで手に入るレンネットは微生物由来のもので、だいだい1g500円。
ん〜計算しないけど、そりゃベリー・エクスペンシィブです。

 

レンネットを入れて15分〜20分で牛乳が杏仁豆腐のようになってきます。
チーズ職人さんは、まず指をそっと横に差し入れるようにして、固まり具合をみていました。
それでこれでよし、と判断したのでしょう。
そっーとスピーノ(鳥かごに棒がついたようなカードナイフ)を釜の中に入れていきます。(写真上左)
スピーノ(Spino)で、杏仁豆腐のようなカードをカットしはじめました。

 

スピーノでカードをカットする作業は、とても重たくて重労働。
職人さんの腕に、ぐいっと力が入ります。
かき混ぜるうちに見る見るうちに、カードとホエーとが分かれていきます。
こんな感じ↓

 

ある程度スピーノでカードをカットしたら、今度はさらに機械でカットです。
写真左上の羽を機械にセットし、攪拌しながら温度を55℃くらいに上げるクッキングと呼ばれる作業に入っていきます。
ここはとてもデリケートな作業なんだそうです。
このクッキングと呼ばれる作業があるのが、加熱圧搾タイプの特徴ですね!
これによって、カード内の水分が抜けて硬いカードが出来るというわけ。
(パルミジャーノ・レッジャーノは55℃くらいですが、チーズの種類によってクッキングの温度はまちまちで、基準では40℃以上となっています)

 

ステンレスの皿に細かくなったカードをすくって大きさを確認しています。
何箇所もすくって、何度も確認。
この写真でだいたい米粒より少し小さいくらいでしょうか。
このカードをギュッと手で握り締めたのを私達に手渡してくれました。

 

手渡してくれたギュッと握り締めたカード。
味見してみます。
キュッキュッと音がするくらい、歯ごたえがあり、
加熱圧搾タイプの硬いカードに出来上がってます。
塩が入っていませんので、そんな美味しい物ではありませんが、
乳糖の甘さなのでしょう、ほんのり甘いです。

 

工場の片隅で、小さな鍋で何かを作ってまして、
「もしかして、あれは・・・リコッタ?」
大正解!
チーズ作りで出たホエーに再び熱を加えると、
レンネットで固まらなかったホエー(非カゼイン)たんぱく質が
ほわほわっ〜と「かき玉汁」のように浮いてきます。
それをすくって、このように型に入れて水分を抜くと
フレッシュなリコッタの出来上がり〜♪
イタリア語で「リコッタ」とは「再び煮る」の意味。
そのまんまですね♪

工場見学パート2に続きます。


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