６月１０日　戊辰
　　左府の使い下着す。去年十二月の彗星の事に依って、公家御祈りを行わる。所謂去る
　　月二十四日、延暦寺根本中堂に於いて千僧御読経（薬師経）有り。東塔五百口・西塔
　　三百口・横川二百口なり。関東の司天伺い見ざるの由申せしむの條、不審無きに非ず。
　　何ぞ若宮の御祈り無からんやの由これを申すと。
 

６月１２日　庚午
　　去年の彗星に依って、祈祷有るべきや否やの事、関東に於いて出見せざる上は、沙汰
　　に及ぶべからざるかの由、司天の輩これを申すと雖も、左府の命に就いて、入道前の
　　大膳大夫の如きその定め有り。今日、鶴岡に於いて一日中三部大般若経を転読す。啓
　　白導師は別当法印定豪。伊賀左衛門の尉光宗今日の奉行たりと。