3月1日 丙申 天晴
寅の刻彗星室壁の間に見ゆ。長2尺と。連日客星・彗星出現の例無しと。申子の両時
地震、太だ悪動すと。
[百錬抄]
今暁彗星東方に見ゆ。司天の輩一同奏すと。
3月2日 丁酉 天晴 [平戸記]
昨暁彗星出現すと。然れども司天等一定を見るの後申すべきの由を存じ、昨日各々申
さずと。今暁これを伺い見る。寅の刻東方に出現す。光芒頗る南方を指す。去る夜方
違えの為八條に向かうの処、司天等馳参す。一番良光、二番家氏、清継一番かまたは
二番かの間か。
3月5日 庚子
将軍家御不例の事、日来聊か御温気有りと雖も、驚きの御沙汰に及ばず。今朝御増気
の間、御祈り等を始行せらると。
3月6日 辛丑 天晴
将軍家御祈りの事重ねてこれを修せらると。
[百錬抄]
今暁より彗星見えずと。
3月8日 癸卯 天霽
京都の使者参着す。今月一日二日の両日暁天彗星出現す。晴継朝臣最前にこれを申す
と。
3月11日 丙午 天晴
夜に入り彗星の御祈りを始行せらる。
3月14日 己酉 天霽
将軍家の御不例平減の間、今日未の刻御沐浴の儀有り。医師時長・頼幸・以長・廣長
・大學等禄を賜う。各々御劔一腰・御馬一疋なり。師員朝臣これを奉行す。
3月16日 辛亥 天霽
彗星御祈りの為、御所に於いて天地災変祭を行わる。宣賢朝臣これを奉仕すと。戌の
刻大納言家日光別当の犬懸谷坊に入御す。これ二所奉幣の御使を立てらるべきに依っ
て、御精進の為なり。
[平戸記]
伝聞、去る夜関東の早馬到来すと。然れどもその旨趣秘蔵風聞せず。
3月19日 甲寅 天霽
日光別当坊より鶴岡八幡宮並びに亀谷山王宝前等に御参り。その後幕府に還御すと。
戌の刻彗星御祈りの為、御所に於いて七座の泰山府君祭を行わる。泰貞・晴賢・資俊
・国継・晴秀・廣資・以平等これを奉仕す。大納言家(御衣冠)祭庭に出向せしめ給
う。御座を泰貞の座上二丈ばかりの外に敷き、御都状の御位署御自筆を加えらると。
美濃の前司親實これを奉行す。
3月24日 己未 陰晴不定 [平戸記]
或る人来たり語りて云く、昨日臨時祭の陪従経尚年来訴訟有り。而るに裁許無きの間、
逐電跡を暗ますの間、使に付け住宅を壊さる。然れどもその身関東方に向かいをはん
ぬと。太だその詮無し。仍って和琴役闕如す。
3月30日 乙丑
諸人問注の事、奉行人に差せらるの処、一方遁避の由の間その聞こえ有るに依って、
自今以後奉行人に相触れ交名を注すべし。彼の状に就いて、誡めの沙汰有るべきの由
仰せ出さる。加賀民部大夫これを奉行す。